HOME / ゼロから学ぶ心理学 / 心理学用語辞典 / キャノン=バード説とは
感情とパーソナリティキャノン=バード説とは
英語: Cannon-Bard Theory ・ 更新日 2026-10-04
キャノン=バード説とは、感情の体験と、心拍数の上昇のような身体の反応は、同時に、しかしそれぞれ別の仕組みによって引き起こされるという、感情についての理論のことです。1920年代に生理学者キャノンが、ジェームズ=ランゲ説を批判する形で提唱し、のちに共同研究者のバードが実験を通して発展させました。
01キャノン=バード説をくわしく
ジェームズ=ランゲ説は、「怖いから心臓がどきどきする」のではなく、「心臓がどきどきするのを感じるからこそ怖いと感じる」というように、身体の変化が先に起こり、それを脳が解釈することで感情が生まれると考えました。これに対しキャノンは1920年代、身体の感覚を失った人でも感情を感じられることなどを理由に、この順序に異論を唱えました。
キャノンとバードが示した説では、外から入ってきた感情を引き起こす情報は、脳の視床という部位でいったん中継され、そこから一方は大脳皮質に伝わって「怖い」という主観的な感じが生まれ、もう一方は同時に身体の方へ伝わって心拍数の上昇などの反応を引き起こすとされました。つまり、感情の体験と身体の反応は、同じ出発点から枝分かれした、別々だが同時に起こる過程だと考えたのです。
ただし、2021年のシミッチらによるレビューによると、この「視床が感情の分かれ道になっている」という考え方そのものは、その後の実験でおおむね否定されています。バード自身による後の実験では、大脳皮質を取り除いた猫に見られる激しい怒りの反応(偽の怒り)が、視床の有無ではなく、視床下部が残っているかどうかに関係していることが示されました。さらにヘスによる研究では、視床下部を刺激すると感情に伴う自律神経の反応が直接引き起こされることが示され、視床が感情の中心だという説の前提が崩れていきました。
2010年のドントらによる研究では、感情を引き起こす場面を見せたときの脳の活動と、汗の分泌量(皮膚電気反応)との関係を調べ、刺激を見てから180ミリ秒という早い段階での脳の活動が、その後の身体の反応と関連していたことを示しました。これは、身体の反応が感情を生むとするジェームズ=ランゲ説とも、両者が完全に独立に同時進行するとするキャノン=バード説とも異なり、脳と身体が双方向に影響し合っている可能性を示す結果です。
02身近な例
大きな物音に驚いて心臓がどきどきするのと、「驚いた」という気持ちを感じるのが同時に起こるように感じられることがあります。キャノン=バード説は、こうした身体の反応と感情の体験が、同時に、しかし別々の仕組みで起こると説明します。
03講座で学ぶ
キャノン=バード説は、無料講座「ゼロから学ぶ心理学入門」の次のレッスンで詳しく学べます。
FAQよくある質問
キャノン=バード説とは何ですか?
キャノン=バード説とは、感情の体験と身体の反応(心拍数の上昇など)は、同時に、しかしそれぞれ別の仕組みによって引き起こされるという、感情についての理論のことです。
キャノン=バード説とジェームズ=ランゲ説の違いは何ですか?
ジェームズ=ランゲ説は身体の反応が先に起こり、それを脳が解釈することで感情が生まれると考えるのに対し、キャノン=バード説は、感情の体験と身体の反応が同時に、別々の仕組みで起こると考える点が異なります。
キャノン=バード説は今でも正しいとされていますか?
いいえ。視床が感情の体験と身体の反応を分ける中心だとする部分は、その後の実験でおおむね否定されています。感情と身体の反応には視床下部など、別の仕組みも深く関わっていることが示されています。
RELATED同じ分野の用語
出典
- Šimić, G., Tkalčić, M., Vukić, V., Mulc, D., Španić, E., Šagud, M., Olucha-Bordonau, F. E., Vukšić, M., & Hof, P. R. (2021). Understanding Emotions: Origins and Roles of the Amygdala. Biomolecules, 11(6), 823.
- D'Hondt, F., Lassonde, M., Collignon, O., Dubarry, A. S., Robert, M., Rigoulot, S., Honoré, J., Lepore, F., & Sequeira, H. (2010). Early Brain-Body Impact of Emotional Arousal. Frontiers in Human Neuroscience, 4, 33.