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第7章 思考と知能 ・ レッスン7-2

ヒューリスティックとは何か。カーネマンとトヴェルスキーの発見

読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02

このレッスンの学習目標

要点

  1. ヒューリスティックとは、素早く判断を下すための、簡単な手がかりを使う考え方のことです。
  2. 便利な一方、利用可能性・アンカリング・代表性という3つの代表的なヒューリスティックは、判断を誤らせることもあります。
  3. 心理学者カーネマンとトヴェルスキーは、1974年の論文で、こうしたヒューリスティックとその誤りのパターンを報告しました。

01ヒューリスティックとは何か

ヒューリスティックとは、素早く自動的に働く、簡単な手がかりを使った判断の近道のことです。

2023年に学術誌Journal of Intelligenceに発表された論文によると、考え方には、素早く自動的で直感に基づくシステム1と、ゆっくり分析的なシステム2という、2つの道筋があります。

ヒューリスティックとは、このシステム1の働きによる、簡単な手がかりを使った判断の近道のことです。多くの場合は役立ちますが、統計的な正しさから外れた判断につながることもあります。

心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーは、1974年の論文で、こうしたヒューリスティックとその誤りのパターンを報告しました。この章では、代表的な3つのヒューリスティックを見ていきます。

02利用可能性ヒューリスティック

利用可能性ヒューリスティックとは、ある出来事の例がどれだけ簡単に思い浮かぶかによって、その頻度や確率を判断することです。

2021年に学術誌Risk Analysisに発表された論文によると、利用可能性ヒューリスティックとは、ある出来事の例がどれだけ簡単に思い浮かぶかによって、その出来事の頻度や確率を判断する考え方のことです。

同じ論文の実験では、143人の参加者に、心筋梗塞や自動車事故など特定の原因で亡くなった人を、自分の家族・友人・知人の中から2人または8人思い出して書いてもらい、その原因による年間の死亡者数を推定してもらいました。

8人思い出した参加者の推定死亡者数の中央値は30,000人で、2人思い出した参加者の25,000人より高くなりました。思い出した事例が多いほど、その出来事がより頻繁に起こると感じやすくなることがわかります。

03アンカリング効果

アンカリング効果とは、最初に示された数字に、その後の推定が引き寄せられる現象のことです。

2021年に学術誌Frontiers in Psychologyに発表された論文によると、心理学者トヴェルスキーとカーネマンは1974年、参加者にルーレットを回させ、65か10のどちらかの数字で止まるのを見せました。

その後、参加者に「国連加盟国のうちアフリカの国の割合は、その数字より高いか低いか」を答えさせ、続けて具体的な割合を推定させました。

ルーレットが65で止まった参加者の推定値の中央値は45%で、10で止まった参加者の25%より高くなりました。ルーレットの数字は答えと無関係なのに、その後の推定に影響したのです。これがアンカリング効果です。

04代表性ヒューリスティックと基準率無視

代表性ヒューリスティックとは、典型的な特徴に似ているかどうかで判断し、統計的な基準率を無視してしまうことです。

2023年に学術誌Journal of Intelligenceに発表された論文では、次のような課題が紹介されています。1000人の集団から、ランダムに1人選ばれました。その人はとても背が高く、集団には10人のバスケットボール選手と990人の数学者がいます。

この人はバスケットボール選手でしょうか、数学者でしょうか。多くの人は「バスケットボール選手」と答えますが、集団の中では数学者が990人で、バスケットボール選手の10人よりはるかに多いため、統計的にはむしろ数学者である可能性が高いのです。

同じ論文によると、「背が高い人はバスケットボール選手に多い」という経験から作られた結びつきの強さが、集団内の人数の割合(基準率)という統計的な情報を圧倒してしまうために、こうした判断が起こると説明されています。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

ヒューリスティックHeuristic

ヒューリスティックとは、素早く自動的に働く、簡単な手がかりを使った判断の近道のことです。

利用可能性ヒューリスティックAvailability heuristic

利用可能性ヒューリスティックとは、ある出来事の例がどれだけ簡単に思い浮かぶかによって、その頻度や確率を判断することです。

アンカリング効果Anchoring effect

アンカリング効果とは、最初に示された数字に、その後の推定が引き寄せられる現象のことです。

代表性ヒューリスティックRepresentativeness heuristic

代表性ヒューリスティックとは、典型的な特徴に似ているかどうかで判断し、統計的な基準率を無視してしまうことです。

基準率Base rate

基準率とは、ある集団の中で、特定の種類がどれくらいの割合を占めているかを示す統計的な情報のことです。

EXAMPLES身近な例で深める

このレッスンの内容を、日常の疑問にあてはめた研究解説記事です。

出典

  1. Valerjev, P., & Dujmović, M. (2023). Single-Heuristic Reasoning: Is It Still Dual-Process? Journal of Intelligence, 11(2), 33.
  2. Efendić, E. (2021). How do People Judge Risk? Availability may Upstage Affect in the Construction of Risk Judgments. Risk Analysis, 41(11), 2003-2015.
  3. Onuki, Y., Honda, H., & Ueda, K. (2021). What Stimuli Are Necessary for Anchoring Effects to Occur? Frontiers in Psychology, 12, 602372.

LESSON 7-2 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. 利用可能性ヒューリスティックとは何ですか。
  1. 出来事の例がどれだけ簡単に思い浮かぶかで頻度を判断すること
  2. 最初に示された数字に推定が引き寄せられること
  3. 典型的な特徴に似ているかで判断すること
答えを見る

正解: 1. 出来事の例がどれだけ簡単に思い浮かぶかで頻度を判断すること
利用可能性ヒューリスティックは、思い浮かびやすさによって頻度や確率を判断する考え方です。

Q2. トヴェルスキーとカーネマンのルーレット実験で、65で止まった参加者の推定値の中央値はどれでしたか。
  1. 25%
  2. 45%
  3. 65%
答えを見る

正解: 2. 45%
ルーレットが65で止まった参加者の推定値の中央値は45%でした。

Q3. 1000人中10人がバスケットボール選手、990人が数学者の集団で、背が高い1人を見たとき、統計的にはどちらである可能性が高いですか。
  1. バスケットボール選手
  2. 数学者
  3. どちらも同じ可能性
答えを見る

正解: 2. 数学者
集団内の人数は数学者のほうがはるかに多いため、統計的には数学者である可能性が高くなります。

レッスン7-2はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第7章 思考と知能 のレッスン一覧
  1. 7-1思考と問題解決
  2. 7-2ヒューリスティック
  3. 7-3認知バイアス
  4. 7-4知能とg因子

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