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第7章 思考と知能 ・ レッスン7-4知能とは何か。g因子とフリン効果からわかること
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 知能とg因子とは何かを、CHCモデルの考え方とともに説明できる
- フリン効果とは何かを、具体的な数値とともに説明できる
- 知能の遺伝率が、年齢とともにどう変わるかを説明できる
要点
- 知能とは、様々な認知能力テストの成績に共通する、g因子を中心とした心のはたらき全体のことです。
- フリン効果とは、世代が新しくなるほど、IQテストの平均点が上昇してきた現象のことです。
- 知能(g因子)の個人差のうち遺伝で説明される割合(遺伝率)は、幼児期から成人期にかけて高くなっていきます。
01知能とは何か。g因子という考え方
知能とは、様々な認知能力テストの成績に共通する、最も上位の因子(g因子)を中心に説明される、心のはたらきのことです。
2022年に学術誌Intelligenceに発表された論文によると、知能に関する代表的な理論(CHCモデル)では、様々な認知能力テストの成績に共通する、最も上位の因子を「一般知能(g因子)」と呼びます。
この理論では、g因子の下に、言葉の理解力や、空間を把握する力など、より具体的な認知能力が、階層的に位置づけられています。知能とは、こうした様々な認知能力がまとまった、心のはたらき全体を指す言葉です。
02フリン効果。世代とともにIQが上昇してきた現象
フリン効果とは、世代が新しくなるほど、IQテストの平均点が上昇してきた現象のことです。
心理学者フリンは1984年、アメリカのIQテストの標準化データを調べ、1932年から1978年までの46年間で、平均IQが13.8ポイント上昇していたことを報告しました。
2021年に学術誌Child Developmentに発表された、遺伝と環境の両方を考慮した研究でも、全検査IQ(FSIQ)が10年あたり約3.2ポイント上昇しており、フリンの元々の報告とほぼ一致する結果でした。
この上昇は、知能そのものが生物学的に大きく変化したというより、栄養状態や教育機会など、環境の変化によって説明されると考えられています。
03フリン効果は、年齢や能力によって異なる
フリン効果の大きさは、年齢やもともとの知能の高さによって異なり、必ずしも全員に同じように起こるわけではありません。
2019年に学術誌Intelligenceに発表された、アメリカの1万人の青年を対象にした研究によると、フリン効果の大きさは、年齢によって異なっていました。13歳では10年あたり2.3ポイントの上昇が見られましたが、18歳では10年あたり1.6ポイントの低下が見られました。
また、もともとのIQが70以下の層では10年あたり4.9ポイントの低下が見られた一方、IQが130以上の層では10年あたり3.5ポイントの上昇が見られました。
このように、フリン効果は年齢層や能力層によって方向も大きさも異なるため、「IQは一律に上がり続けている」と単純には言えないことがわかります。
04知能の遺伝率は、年齢とともに変わる
知能(g因子)の遺伝率は、幼児期には約20%ですが、成人期には約60%まで高くなります。
2022年に学術誌Intelligenceに発表された論文によると、一般知能(g因子)の個人差のうち、遺伝によって説明される割合(遺伝率)は、幼児期には約20%、児童期には約40%、成人期には約60%へと、発達とともに高くなっていくことが報告されています。
遺伝率が高くなるということは、環境の影響が消えるということではありません。年齢が上がるほど、人それぞれが自分に合った環境を選ぶようになり、もともとの遺伝的な傾向が、結果に強く表れやすくなるためだと考えられています。
知能は、g因子のような共通の要素と、年齢とともに変わる遺伝と環境の影響が組み合わさった、複雑な現象だということが、この章からわかります。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
知能とは、様々な認知能力テストの成績に共通する、g因子を中心とした、心のはたらき全体のことです。
g因子とは、様々な認知能力テストの成績に共通する、最も上位の因子のことです。
フリン効果とは、世代が新しくなるほど、IQテストの平均点が上昇してきた現象のことです。
遺伝率とは、ある特徴についての人々の違い(個人差)のうち、遺伝によって説明される割合のことです。
出典
- Procopio, F., Zhou, Q., Wang, Z., Gidziela, A., Rimfeld, K., Malanchini, M., & Plomin, R. (2022). The genetics of specific cognitive abilities. Intelligence, 95, 101689.
- Giangrande, E. J., Beam, C. R., Finkel, D., Davis, D. W., & Turkheimer, E. (2022). Genetically informed, multilevel analysis of the Flynn Effect across four decades and three WISC versions. Child Development, 93(1), e47-e58.
- Platt, J. M., Keyes, K. M., McLaughlin, K. A., & Kaufman, A. S. (2019). The Flynn effect for fluid IQ may not generalize to all ages or ability levels: a population-based study of 10,000 US adolescents. Intelligence, 77, 101385.
LESSON 7-4 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. g因子とは何ですか。
- 様々な認知能力テストの成績に共通する、最も上位の因子
- 世代が新しくなるほどIQが上昇する現象
- ある特徴の個人差のうち遺伝で説明される割合
答えを見る
正解: 1. 様々な認知能力テストの成績に共通する、最も上位の因子
g因子は、様々な認知能力テストの成績に共通する、最も上位の因子のことです。
Q2. フリンが1984年に報告した、1932年から1978年の間の平均IQの変化はどれですか。
- 13.8ポイント上昇した
- 13.8ポイント低下した
- 変化しなかった
答えを見る
正解: 1. 13.8ポイント上昇した
フリンは、1932年から1978年までの46年間で、平均IQが13.8ポイント上昇していたと報告しました。
Q3. 知能(g因子)の遺伝率について、正しいものはどれですか。
- 幼児期に最も高く、成人期にかけて下がる
- 幼児期に低く、成人期にかけて上がる
- 年齢に関係なく一定である
答えを見る
正解: 2. 幼児期に低く、成人期にかけて上がる
g因子の遺伝率は、幼児期には約20%ですが、成人期には約60%まで高くなります。
レッスン7-4はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。