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第7章 思考と知能 ・ レッスン7-1

思考とは何か。概念と問題解決の仕組み

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02

このレッスンの学習目標

要点

  1. 思考とは、概念を使って情報を整理し、目標に向けて筋道を立てたり判断したりする心の働きのことです。
  2. 考え方には、素早く直感的なシステム1と、じっくり分析的なシステム2という、2つの道筋があります。
  3. ひらめきによる解決と、思い込み(機能的固定性)による失敗は、どちらも同じ思考の仕組みの一部です。

01概念とは何か

概念とは、見た目が違う様々な事例に共通する特徴をまとめた、抽象的な心の表現のことです。

2023年に学術誌Psychological Researchに発表された論文によると、「犬」という言葉の意味は、見た目の違う様々な犬に共通する特徴を含んでいる必要があるため、抽象的な表現だと考えられています。

このように、個々の具体的な経験から、共通する特徴を抜き出してまとめた心の表現を、概念と呼びます。概念を使うことで、はじめて見る犬でも「犬」だと判断し、これまでの知識を当てはめて考えられます。

思考とは、こうした概念を使って情報を整理し、目標に向けて筋道を立てたり、判断したりする、心の働きのことです。

02考え方の2つの道筋。システム1とシステム2

考え方には、素早く直感的なシステム1と、ゆっくり分析的なシステム2という、2つの道筋があります。

2023年に学術誌Journal of Intelligenceに発表された論文によると、心理学では、考え方の過程を2つに分けて説明することがあります。一つは、素早く、自動的で、直感に基づくシステム1(タイプ1過程)です。

もう一つは、ゆっくりで、意図的で、分析的な思考に基づくシステム2(タイプ2過程)です。たとえば、とても背の高い人を見て、とっさに「バスケットボール選手では」と考えるのは、目立つ特徴に頼った、素早い判断の表れです。

同じ論文によると、近年の研究では、システム1だけでも、以前はシステム2でなければ出せないと考えられていた判断ができることがわかってきており、2つの道筋をはっきり分けられるかどうかは、今も議論が続いています。

03ひらめきによる解決。ケーラーのチンパンジー実験

ケーラーは1925年に出版した著書で、チンパンジーが道具を組み合わせて問題を解決する様子から、ひらめきによる解決を報告しました。

2023年に学術誌Journal of Intelligenceに発表された論文によると、ゲシュタルト心理学者ケーラーは、1925年に出版した著書で、チンパンジーの実験を報告しました。手の届かない場所にあるバナナを前に、チンパンジーはケージの中の木箱を積み重ねて階段のようにし、登ってバナナを取ることに成功しました。

ケーラーは、この解決が、問題の要素(箱とバナナの位置関係など)の見え方が突然組み替わることで、「わかった」という感覚とともに訪れると考えました。

同じ論文で紹介されている研究によると、人がひらめきで問題を解いたとき、瞳の大きさが大きくなる確率は60.5%で、瞳が最も大きくなる瞬間は、「わかった」と答える約200ミリ秒前だったことが報告されています。

04機能的固定性。思い込みが解決を妨げる

機能的固定性とは、物のいつもの使い方の経験が、同じ物を新しい方法で使うことを妨げる現象のことです。

2016年に学術誌Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Artsに発表された論文によると、機能的固定性とは、ある物の特定の使い方を経験したことが、創造的な問題解決の場面で、同じ物を新しい方法で使うことを妨げる現象のことです。

同じ論文の実験では、63人の参加者を、物の名前だけを見せる条件(22人)、写真だけを見せる条件(23人)、名前と写真の両方を見せる条件(18人)に分け、日用品の「珍しい使い方」を考えてもらいました。名前条件と写真条件を比べたところ、写真条件のほうが、物のいつもの機能にとらわれた答えを多く出しました(χ²(1, N=45)=10.29、p=.001)。

物の見た目(写真)を見ると、いつもの使い方が思い浮かびやすくなり、新しい使い方を考えにくくなると考えられます。概念、システム1とシステム2、ひらめき、機能的固定性は、どれも思考という同じ仕組みの一部です。次のレッスンでは、判断を誤らせるヒューリスティックとバイアスについて、くわしく学びます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

概念Concept

概念とは、見た目が違う様々な事例に共通する特徴をまとめた、抽象的な心の表現のことです。

システム1System 1

システム1とは、素早く、自動的に働く、直感に基づいた考え方の過程のことです。

システム2System 2

システム2とは、ゆっくりと、意図的に働く、分析的な考え方の過程のことです。

ひらめき(インサイト)Insight

ひらめきとは、問題の要素の見え方が突然組み替わり、解決が「わかった」という感覚とともに訪れることです。

機能的固定性Functional fixedness

機能的固定性とは、物のいつもの使い方の経験が、同じ物を新しい方法で使うことを妨げる現象のことです。

出典

  1. Kaup, B., Ulrich, R., Bausenhart, K. M., et al. (2023). Modal and amodal cognition: an overarching principle in various domains of psychology. Psychological Research, 88(2), 307-337.
  2. Valerjev, P., & Dujmović, M. (2023). Single-Heuristic Reasoning: Is It Still Dual-Process? Journal of Intelligence, 11(2), 33.
  3. Vitello, M., & Salvi, C. (2023). Gestalt's Perspective on Insight: A Recap Based on Recent Behavioral and Neuroscientific Evidence. Journal of Intelligence, 11(12), 224.
  4. Chrysikou, E. G., Motyka, K., Nigro, C., Yang, S. I., & Thompson-Schill, S. L. (2016). Functional Fixedness in Creative Thinking Tasks Depends on Stimulus Modality. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 10(4), 425-435.

LESSON 7-1 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. 心理学で、素早く直感的な考え方の過程を何と呼びますか。
  1. システム1
  2. システム2
  3. 機能的固定性
答えを見る

正解: 1. システム1
素早く、自動的で、直感に基づく過程はシステム1と呼ばれます。

Q2. ケーラーのチンパンジー実験で、チンパンジーはどのようにバナナを手に入れましたか。
  1. 木箱を積み重ねて階段のようにした
  2. 棒を使ってたたき落とした
  3. 飼育員に頼んだ
答えを見る

正解: 1. 木箱を積み重ねて階段のようにした
チンパンジーはケージの中の木箱を積み重ねて登り、バナナを取りました。

Q3. 機能的固定性とは何ですか。
  1. 物のいつもの使い方の経験が、新しい使い方を妨げる現象
  2. 最初に示された数字に判断が引きずられる現象
  3. 自分の行動では結果を変えられないと学習する現象
答えを見る

正解: 1. 物のいつもの使い方の経験が、新しい使い方を妨げる現象
機能的固定性は、物の特定の使い方の経験が、新しい使い方を思いつきにくくさせる現象です。

レッスン7-1はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第7章 思考と知能 のレッスン一覧
  1. 7-1思考と問題解決
  2. 7-2ヒューリスティック
  3. 7-3認知バイアス
  4. 7-4知能とg因子

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