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第11章 パーソナリティ ・ レッスン11-2特性論とビッグファイブ。性格を5つの特性で捉える
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 特性論とはどのような考え方か説明できる
- ビッグファイブが「語彙アプローチ」という方法で見つけ出された経緯を説明できる
- ビッグファイブが、文化を超えてどの程度再現されているかを、具体的な研究データで説明できる
要点
- ビッグファイブ(五因子モデル)とは、神経症傾向・外向性・開放性・協調性・勤勉性という5つの特性で、人の性格の個人差を捉える、特性論の代表的な枠組みのことです。
- ビッグファイブは、日常の言語に含まれる、人を表す形容詞を分析する「語彙アプローチ」という方法によって見つけ出されました。
- ビッグファイブをもとにした性格検査は、少なくとも37の言語に翻訳され、60以上の国や文化で使われていますが、分析方法によっては5つの特性すべてが明確に見つからないこともあります。
01特性論とは何か
特性論とは、人の性格を、連続的に変化する少数の特性(次元)の強さの違いとして捉える、パーソナリティ心理学の考え方のことです。
心理学における特性論とは、人の性格を、いくつかの特性(次元)のそれぞれにおける強さの違いとして捉える考え方です。2014年に学術誌Personality and Individual Differencesに発表された、心理学者ローリン(Loehlin)とゴールドバーグ(Goldberg)の論文によると、性格検査を作る研究者の多くは、個々の単語や質問項目、それらをまとめた項目群から出発し、そこから性格の次元を見つけ出そうとしてきました。
この考え方の代表例が、ビッグファイブ(五因子モデル)です。ビッグファイブは、神経症傾向・外向性・開放性(知性)・協調性・勤勉性という5つの特性で、人の性格の個人差を捉えようとする枠組みです。
次の節では、ビッグファイブという5つの特性が、どのような方法で見つけ出されたのかを見ていきます。
02ビッグファイブはどう見つかったか。言葉からさがす「語彙アプローチ」
ビッグファイブは、日常の言葉(形容詞)に表れる性格の違いを手がかりにする「語彙アプローチ」という方法から見つけ出されました。
ゴールドバーグは、1990年に学術誌Journal of Personality and Social Psychologyに発表した論文で、日常の言語に含まれる、人を表す形容詞(たとえば「社交的」「几帳面」など)を分析することで、性格を表す主要な特性を見つけ出す「語彙アプローチ」を用いました。
2014年のローリンとゴールドバーグの論文では、320人の大学生が、自分自身について435個の性格を表す形容詞に回答したデータを、「bass-ackwards」という方法で分析し、1個から12個までの因子を段階的に取り出しています。
分析の結果、外向性は「社交的 対 内気」、勤勉性は「几帳面・組織的・責任感がある」、協調性は「同情的・情に厚い・温かい」(プラスの極)と「けんか好き・いらだちやすい・気分が変わりやすい」(マイナスの極)、開放性(知性)は「知的・頭が良い・賢い」という形容詞で、それぞれ特徴づけられました。
035つ目の特性、神経症傾向は言葉から見つけにくい
ローリンとゴールドバーグの2014年の分析では、神経症傾向にあたる明確な因子は見つからず、ビッグファイブも分析方法によって見え方が変わることが示されました。
一方、同じ論文は、「ビッグファイブの残り1つの特性である神経症傾向の、明確な例は見当たらない」と述べています。神経症傾向に近い要素は、5番目と10番目の因子のマイナスの極に、わずかに見られる程度だったとされています。
2013年に学術誌Integrative Psychological and Behavioral Scienceに発表された、心理学者ウーアー(Uher)の論文は、語彙アプローチについて、対象とする言語や文化によって、見つかる特性の数や内容が変わりうると指摘しています。
つまり、ビッグファイブは、非常に多くの研究で繰り返し確認されてきた、現在もっとも有力な性格の枠組みですが、「科学的に確定し、絶対に5つしかない特性」というわけではなく、今も検証が続いている考え方だと理解しておくことが大切です。
04ビッグファイブは文化を超えて見られるのか
ビッグファイブをもとにした性格検査(NEO-PI-R)は、少なくとも37の言語に翻訳され、60以上の国や文化で使われています。
2018年に学術誌Frontiers in Psychologyに発表された、心理学者アリック(Allik)らの論文によると、ビッグファイブを測定する代表的な質問紙であるNEO-PI-R(とその最新版NEO-PI-3)は、少なくとも37の言語に翻訳され、60以上の国や文化で使われてきました。
同じ論文は、1997年に発表されたマクレー(McCrae)とコスタ(Costa)の研究などをもとに、「この5つの性格の特性は、人類に共通するものだと考える十分な理由がある」と述べています。
ただし、ウーアーの指摘にもあるように、語彙アプローチは言語や文化によって結果が変わりうる方法でもあります。ビッグファイブが多くの文化で繰り返し見つかっていることは、性格の特性を考えるうえで有力な手がかりですが、研究者たちは今も、さまざまな言語や文化でこの枠組みを検証し続けています。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
特性論とは、人の性格を、連続的に変化する少数の特性(次元)の強さの違いとして捉える、パーソナリティ心理学の考え方のことです。
語彙アプローチとは、日常の言語に含まれる、人を表す言葉(形容詞など)を分析することで、性格を表す主要な特性を見つけ出す方法のことです。
ビッグファイブ(五因子モデル)とは、神経症傾向・外向性・開放性・協調性・勤勉性という5つの特性で、人のパーソナリティを捉える考え方のことです。
開放性(知性)とは、ビッグファイブの特性の1つで、「知的」「頭が良い」「賢い」といった形容詞で特徴づけられる特性のことです。
出典
- Loehlin, J. C., & Goldberg, L. R. (2014). Do personality traits conform to lists or hierarchies? Personality and Individual Differences, 70, 51-56.
- Uher, J. (2013). Personality Psychology: Lexical Approaches, Assessment Methods, and Trait Concepts Reveal Only Half of the Story. Integrative Psychological and Behavioral Science, 47(1), 1-55.
- Allik, J., Hrebickova, M., & Realo, A. (2018). Unusual Configurations of Personality Traits Indicate Multiple Patterns of Their Coalescence. Frontiers in Psychology, 9, 187.
LESSON 11-2 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 語彙アプローチとは、どのような方法ですか。
- 日常の言語に含まれる、人を表す言葉(形容詞など)を分析して、性格の主要な特性を見つけ出す方法
- 本人に性格診断テストの点数を自己申告させるだけの方法
- 脳の画像だけから性格の特性を判定する方法
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正解: 1. 日常の言語に含まれる、人を表す言葉(形容詞など)を分析して、性格の主要な特性を見つけ出す方法
語彙アプローチとは、日常の言語に含まれる、人を表す言葉(形容詞など)を分析することで、性格を表す主要な特性を見つけ出す方法です。
Q2. ローリンとゴールドバーグの2014年の分析結果について、正しいものはどれですか。
- 神経症傾向にあたる明確な因子は見つからなかった
- 5つの特性がすべて、他のどの特性よりも明確に見つかった
- 分析された因子は神経症傾向1つだけだった
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正解: 1. 神経症傾向にあたる明確な因子は見つからなかった
この分析では、ビッグファイブの残り1つの特性である神経症傾向の、明確な例は見当たらなかったとされています。
Q3. アリックらの2018年の論文によると、ビッグファイブを測るNEO-PI-R/NEO-PI-3は、どの程度の規模で使われていますか。
- 少なくとも37の言語に翻訳され、60以上の国や文化で使われている
- 英語版のみが、アメリカ国内でだけ使われている
- 5か国語に翻訳されているが、使用されているのは1つの国だけである
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正解: 1. 少なくとも37の言語に翻訳され、60以上の国や文化で使われている
NEO-PI-RとNEO-PI-3は、少なくとも37の言語に翻訳され、60以上の国や文化で使われてきたとされています。
レッスン11-2はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。