HOME / ゼロから学ぶ心理学 / 心理学用語辞典 / 人と状況の論争(パーソン・シチュエーション論争)とは

パーソナリティ

人と状況の論争(パーソン・シチュエーション論争)とは

英語: Person-Situation Debate ・ 更新日 2026-10-04

人と状況の論争とは、人の行動を決めるのは、その人が持つ性格(パーソナリティ)なのか、それともその場の状況なのか、という心理学における長年の論争のことです。1968年に心理学者ミシェルが発表した著書での批判をきっかけに本格化しました。

01人と状況の論争(パーソン・シチュエーション論争)をくわしく

1968年、心理学者ウォルター・ミシェルは著書『パーソナリティと評価』の中で、性格特性を重視する従来の考え方に対し、4つの批判を示しました。性格特性による行動の予測力は低く相関係数はおよそ0.3を超えにくいこと、性格の一貫性に見えるものの多くは観察者が似た言葉で評価し続けることによる見かけ上のものであること、一貫性があるとしてもそれは人よりも状況によるものであること、そして行動は場面が変わると一貫しないことの4点です。

この批判は性格心理学という分野の存在そのものを揺るがすほどの影響を持ち、1970年代から1980年代にかけて、性格特性は本当に存在するのかをめぐる激しい論争に発展しました。2009年のロバーツによる論文では、ミシェルの4つの批判のうち3つはその後の研究でおおむね反証されたものの、「行動は場面によって変わる」という4つ目の指摘は今も心理学に影響を与え続けていると評価しています。

この論争を経て、性格心理学は、質問紙への回答だけでなく、実際の行動を体系的に観察して確かめる研究手法を重視するようになりました。2021年のアサートンらの論文では、この論争が、再現性を重んじる今日の心理学の改革を、性格心理学の分野がいち早く受け入れられた土台になったと指摘しています。

現在では、性格と状況はどちらか一方だけが正しいのではなく、人によって行動が変わりやすい状況と変わりにくい状況があるなど、両者が影響し合うという立場(相互作用論)が広く受け入れられています。性格特性は「どんな場面でも同じ行動を取ること」を意味するものではなく、特定の場面で典型的に現れる反応のパターンとして理解されるようになっています。

02身近な例

「本来は物静かな人でも、仕事の場面では積極的に発言する」というように、同じ人でも状況によって行動が変わることがあります。人と状況の論争は、こうした行動の変わりやすさをどう理解するかをめぐる議論です。

FAQよくある質問

人と状況の論争とは何ですか?

人と状況の論争とは、人の行動を決めるのは性格なのか、それともその場の状況なのか、という心理学における長年の論争のことです。

結局、性格と状況のどちらが行動を決めるのですか?

現在では、どちらか一方だけが正しいのではなく、人によって行動が変わりやすい状況と変わりにくい状況があるなど、性格と状況が影響し合うという考え方が広く受け入れられています。

ミシェルの批判はすべて正しかったのですか?

いいえ。ミシェルが示した4つの批判のうち3つは、その後の研究でおおむね反証されています。ただし、行動が場面によって変わりやすいという指摘は、今も性格心理学に影響を与え続けています。

RELATED同じ分野の用語

パーソナリティ(特性)ランクオーダーの一貫性語彙アプローチビッグファイブ(五因子モデル)MBTI(マイヤーズ・ブリッグス・タイプ指標)血液型性格判断

出典

  1. Roberts, B. W. (2009). Back to the Future: Personality and Assessment and Personality Development. Journal of Research in Personality, 43(2), 137-145.
  2. Atherton, O. E., Chung, J. M., Harris, K., et al. (2021). Why Has Personality Psychology Played an Outsized Role in the Credibility Revolution? Personality Science, 2, e6001.

心理学用語辞典の一覧へ(202語)