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第16章 心理療法と支援 ・ レッスン16-2認知行動療法(CBT)とは何か
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 認知行動療法(CBT)の基本となる考え方を説明できる
- エリスの論理情動行動療法(REBT)で重視される「非合理な信念」を説明できる
- ベックの認知療法で重視される「認知のゆがみ」を説明できる
要点
- 認知行動療法(CBT)とは、出来事そのものではなく、出来事の捉え方(考え方)が感情や行動に影響するという考え方に基づく心理療法のことです。
- CBTには2つの源流があります。エリスの論理情動行動療法(REBT)は非合理な信念に注目し、ベックの認知療法は自動的に浮かぶゆがんだ考え方(認知のゆがみ)に注目します。
- ベックの認知療法は1977年の臨床試験でうつ病への効果を示し、以降2000件を超える臨床試験で効果が確かめられてきました。
01認知行動療法とは何か
認知行動療法(CBT)とは、出来事そのものではなく、出来事の捉え方(考え方)が感情や行動に影響するという考え方に基づく心理療法のことです。
認知行動療法(CBT)とは、前のレッスンで見た行動療法と、「ものの考え方」に注目する認知療法を組み合わせた心理療法のことです。2018年に専門誌Journal of Rational-Emotive & Cognitive-Behavior Therapyに発表された、ルッジェーロらの総説論文によると、認知行動療法は、心の状態が出来事と感情反応の間を取り持つという考え方の上に成り立っています。
つまり、同じ出来事が起きても、それをどう受け止めるか(認知)によって、生まれる感情や行動は変わる、という考え方です。前のレッスンで見た精神分析や行動療法とは異なり、認知行動療法は、本人の考え方そのものに直接働きかけることを特徴とします。
02エリスの論理情動行動療法(REBT)
論理情動行動療法(REBT)とは、エリスが1957年に発表した、非合理な信念が感情的な苦痛の中心的な要因であるとする立場のことです。
認知行動療法の源流の1つが、アメリカの心理学者アルバート・エリスによる論理情動行動療法(REBT)です。2018年に専門誌Journal of Clinical Psychologyに発表された、デイビッドらの総説論文によると、エリスは1957年に、最初は「論理療法」という名前でこの立場を発表しました。
デイビッドらの論文は、REBTの中心的な考え方を、非合理な信念(irrational beliefs)が感情的な苦痛の中心的な要因であり、だからこそ治療の焦点は非合理な信念を合理的な信念へと変えることに置かれる、とまとめています。出来事そのものではなく、出来事をどう意味づけるかという信念が、感情や行動を左右するという考え方です。
03ベックの認知療法
認知療法とは、精神科医ベックが1960年代に確立した、自動的に浮かぶゆがんだ考え方(認知のゆがみ)を修正しようとする立場のことです。
認知行動療法のもう1つの源流が、アメリカの精神科医アーロン・ベックによる認知療法です。2021年に専門誌Clinical Psychology in Europeに発表された、娘で心理学者のジュディス・ベックとフレミングの論文によると、ベックは1950年代には精神分析の訓練を受けていましたが、その後の研究が精神分析理論の前提と食い違う結果を示したことから、認知療法を確立していきました。
ルッジェーロらの総説論文は、ベックが1963年頃から認知療法の理論化を始め、自己に関する否定的な見方に偏った「認知のゆがみ」が、うつ病などの感情の問題を生み出すと説明したと述べています。ベックは、患者が自分の自動的な考え方に気づき、それを検証し直す作業を治療の中心に据えました。
ベック・フレミングの論文によると、1977年には、認知療法がうつ病の治療で抗うつ薬よりも優れた結果を示した、最初の大規模な臨床試験が発表されました。この結果は、認知療法が単なる理論にとどまらず、効果が実証された治療法として広がる転機になりました。
04認知行動療法のその後の広がり
認知行動療法は、1994年設立のベック研究所などを通じて世界に広がり、現在までに2000件を超える臨床試験でその効果が確かめられています。
ベック・フレミングの論文によると、アーロン・ベックは、退職後の1994年に、娘のジュディス・ベックとともに非営利団体ベック研究所を設立しました。ベック研究所は、これまでに130か国、2万8000人以上の医療・保健専門職を研修してきたと報告されています。
同じ論文は、認知行動療法が、さまざまな心の不調や心理的な問題、心理的要因を伴う身体疾患に対して、2000件を超える臨床試験で効果が確かめられてきたと述べています。次のレッスンでは、心の不調に対するもう1つの代表的な対応である、薬物療法について見ていきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
認知行動療法とは、出来事の捉え方(考え方)が感情や行動に影響するという考え方に基づき、行動療法と認知療法を組み合わせた心理療法のことです。
論理情動行動療法とは、エリスが提唱した、非合理な信念が感情的な苦痛の中心的な要因であるとする立場のことです。
認知療法とは、ベックが確立した、自動的に浮かぶゆがんだ考え方を修正することで、心の不調を和らげようとする立場のことです。
認知のゆがみとは、自己に関する否定的な見方などに偏った、現実を正確に捉えられていない自動的な考え方のことです。
出典
- Beck, J. S., & Fleming, S. (2021) "A Brief History of Aaron T. Beck, MD, and Cognitive Behavior Therapy," Clinical Psychology in Europe, 3(2), e6701.
- David, D., Cotet, C., Matu, S., Mogoase, C., & Stefan, S. (2018) "50 years of rational-emotive and cognitive-behavioral therapy: A systematic review and meta-analysis," Journal of Clinical Psychology, 74(3), 304–318.
- Ruggiero, G. M., Spada, M. M., Caselli, G., & Sassaroli, S. (2018) "A Historical and Theoretical Review of Cognitive Behavioral Therapies: From Structural Self-Knowledge to Functional Processes," Journal of Rational-Emotive & Cognitive-Behavior Therapy, 36(4), 378–403.
LESSON 16-2 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 認知行動療法(CBT)の考え方として正しいのはどれか。
- 出来事の捉え方(認知)が感情や行動に影響する
- 無意識の葛藤が感情や行動を決定する
- 行動は学習の原理とは無関係に生じる
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正解: 1. 出来事の捉え方(認知)が感情や行動に影響する
CBTは、心の状態(考え方)が出来事と感情反応の間を取り持つという考え方に基づいています。
Q2. エリスが1957年に発表した論理情動行動療法(REBT)で、感情的な苦痛の中心的な要因とされるものは何か。
- 非合理な信念
- 無意識の抑圧
- 系統的脱感作の失敗
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正解: 1. 非合理な信念
デイビッドらの総説論文によると、REBTは非合理な信念を感情的な苦痛の中心的な要因とし、それを合理的な信念に変えることを目指します。
Q3. 1977年に発表された臨床試験で、ベックの認知療法はうつ病の治療において何と比較されたか。
- 抗うつ薬
- 精神分析
- 系統的脱感作
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正解: 1. 抗うつ薬
ベック・フレミングの論文によると、1977年の臨床試験で、認知療法は抗うつ薬よりも優れた結果を示しました。
レッスン16-2はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。