HOME / 日常の心理学 / 講座 / 第14章 ストレスと健康 / コーピングの種類と効果

第14章 ストレスと健康 ・ レッスン14-5

ストレスにどう対処すればよいのか。コーピングの種類と効果

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02

このレッスンの学習目標

要点

  1. コーピングとは、ストレッサーに対処するためにとる行動のことです。その効果は、コーピングの種類によって異なります。
  2. 乳がん患者を対象にした大規模なメタ分析によると、「受け入れ」や「前向きな再評価」は、心身の状態の良さと関連していました。
  3. 反対に、「絶望感」のような回避型コーピングは、より強く心身への悪影響と関連していました。

01コーピングの効果に差がある。大規模なメタ分析から

コーピングの効果は一様ではなく、種類によって心身への影響に違いがあります。

前のレッスンでは、コーピングには問題焦点型と感情焦点型があることを見てきました。しかし、コーピングの「種類」によって、その効果にも違いがあります。2014年にPLOS ONE誌に、クビレモ(Kvillemo)とブランストローム(Bränström)の論文が発表されました。この論文は、この違いを大規模に検証しました。

この論文は、乳がん患者のコーピングを調べた78件の研究、合計1万1,948人のデータを統合したメタ分析です。コーピングの種類ごとに、ネガティブな感情・ポジティブな感情・身体の健康との関連を調べています。

分析の結果、「受け入れ(Acceptance)」や「前向きな再評価(Positive Reappraisal)」といったコーピングが見つかりました。これらは、ポジティブな感情の強さと関連していました(それぞれ相関係数0.22、0.27)。これらは、ストレスへの適応を助けるコーピングだと考えられます。

02「絶望感」などの回避型コーピングは、より強く悪影響と関連する

「絶望感」のような回避型コーピングは、適応的なコーピングよりも強く、心身への悪影響と関連していました。

同じ論文は、問題から距離を置こうとする「回避型」のコーピングについても調べています。その1つが、「絶望感(Hopelessness)」です。これは、ネガティブな感情の強さと、相関係数0.41という強い関連を示しました。

この関連の強さは、前向きな再評価(相関係数0.27)の、ほぼ1.5倍にあたります。同様に、「反復思考」も、ネガティブな感情と強い関連を示しました(相関係数0.39)。反復思考とは、同じ心配を繰り返し考え続けることです。

この結果から、ストレスを感じる出来事から目をそらそうとするコーピングには、注意が必要だとわかります。一時的には楽に感じられても、長期的には心身の状態を悪化させやすい可能性があるのです。

03マインドフルネスに基づくストレス低減法(MBSR)の効果

8週間のMBSRプログラムは、知覚されるストレスと、コルチゾールの日中の変化を改善することが、実験で示されています。

具体的なコーピングの方法として、研究で効果が確かめられているものがあります。その1つが、マインドフルネスに基づくストレス低減法(Mindfulness-Based Stress Reduction, MBSR)です。2022年にJournal of General Internal Medicine誌に、サバン(Saban)らの研究が発表されました。この研究は、この方法の効果を検証しました。

この研究は、女性の退役軍人164人を、2つのグループに分けました。1つは、8週間のMBSRプログラムを受けるグループ(75人)です。もう1つは、同じ時間数の健康教育プログラムを受ける対照グループ(61人)です。どちらも、週1回2.5時間のクラスという、同じ条件です。

結果、MBSRグループは、対照グループに比べて、知覚されるストレスがより大きく減少しました(p=.002)。さらに、唾液から測定したコルチゾールの1日の変化も、MBSRグループでより大きく改善していました(p=.02)。一方、炎症に関わる物質の値には、両グループで差が見られませんでした。

04運動の効果は、やり方次第で変わる

運動はコルチゾールを減らす効果が期待されますが、その効果は運動の種類によって異なります。

運動も、よく勧められるストレス対処法の1つです。2025年にSports誌に、リー(Li)らのネットワークメタ分析が発表されました。この分析は、44件の実験、合計3,284人のデータから、どの種類の運動がコルチゾールを減らすのに効果的かを調べました。

その結果、もっとも効果が大きかったのはヨガでした(標準化平均差−0.59、95%信頼区間−0.90〜−0.28)。一方、継続的なエアロビック運動や、短時間で強度の高い運動では、コルチゾールを減らす一貫した効果は見られませんでした。

この結果は、「運動すればストレスが減る」と単純に言い切れないことを示しています。どの対処法が合うかは、方法の種類や、個人の状況によって変わります。この章では、ストレスとは何か、体にどう影響するか、どう対処できるかを見てきました。次の章では、心の不調そのものについて、くわしく学んでいきます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

回避型コーピングAvoidant coping

回避型コーピングとは、ストレスの原因となる問題や感情から距離を置こうとする対処法のことです。絶望感や反復思考などが含まれます。

前向きな再評価Positive reappraisal

前向きな再評価とは、ストレスを感じる出来事の意味を、より前向きな視点からとらえ直す対処法のことです。

マインドフルネスMindfulness

マインドフルネスとは、今の瞬間の経験に、評価を加えずに注意を向ける心のありかたのことです。

EXAMPLES身近な例で深める

このレッスンの内容を、日常の疑問にあてはめた研究解説記事です。

出典

  1. Kvillemo, P., & Bränström, R. (2014). Coping with breast cancer: A meta-analysis. PLoS ONE, 9(11), e112733.
  2. Saban, K. L., Collins, E. G., Mathews, H. L., et al. (2022). Impact of a Mindfulness-Based Stress Reduction Program on Psychological Well-Being, Cortisol, and Inflammation in Women Veterans. Journal of General Internal Medicine, 37(Suppl 3), 751-761.
  3. Li, X., Huang, J., & Zhu, F. (2025). The optimal exercise modality and dose for cortisol reduction in psychological distress: A systematic review and network meta-analysis. Sports (Basel), 13(12), 415.

LESSON 14-5 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. クビレモとブランストロームの2014年のメタ分析によると、ポジティブな感情と最も強く関連していたコーピングはどれですか。
  1. 前向きな再評価
  2. 絶望感
  3. 反復思考
答えを見る

正解: 1. 前向きな再評価
前向きな再評価は、ポジティブな感情との相関係数が0.27と、調べられたコーピングの中で強い関連を示しました。

Q2. 同じメタ分析で、ネガティブな感情と最も強く関連していたコーピングはどれですか。
  1. 絶望感(相関係数0.41)
  2. 受け入れ(相関係数−0.24)
  3. 前向きな再評価(相関係数−0.16)
答えを見る

正解: 1. 絶望感(相関係数0.41)
絶望感は、ネガティブな感情との相関係数が0.41と、分析の中でもっとも強い関連を示しました。

Q3. サバンらの2022年の研究によると、8週間のMBSRプログラムを受けたグループは、対照グループに比べてどうでしたか。
  1. 知覚されるストレスとコルチゾールの変化が、より大きく改善した
  2. 炎症に関わる物質の値が、大きく改善した
  3. 効果の差は見られなかった
答えを見る

正解: 1. 知覚されるストレスとコルチゾールの変化が、より大きく改善した
MBSRグループは、知覚されるストレス(p=.002)とコルチゾールの日中の変化(p=.02)の両方で、対照グループより大きな改善を示しました。炎症物質には差が見られませんでした。

レッスン14-5はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第14章 ストレスと健康 のレッスン一覧
  1. 14-1ストレスとは何か
  2. 14-2セリエの汎適応症候群とは
  3. 14-3認知的評価とコーピングとは
  4. 14-4ストレスと心臓血管系・免疫
  5. 14-5コーピングの種類と効果

講座の目次(全16章)へ