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第14章 ストレスと健康 ・ レッスン14-1ストレスとは何か。ストレッサーとストレス反応
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- ストレスとストレッサーの違いを、恒常性という言葉を使って説明できる
- ストレッサーには身体的なものと心理的なものがあることを、具体例とともに説明できる
- ストレスが必ず悪いものではないことを、ユーストレスとディストレスの違いから説明できる
要点
- ストレスとは、体の恒常性(ホメオスタシス)が脅かされた状態のことです。
- ストレスを引き起こす要因はストレッサーと呼ばれ、寒さや騒音といった身体的なものと、不安や競争といった心理的なものに分けられます。
- 1915年にキャノンが報告したように、体はストレッサーに対して、闘争・逃走反応と呼ばれる緊急的な反応を起こします。
01ストレスとは何か
ストレスとは、体の恒常性(ホメオスタシス)が脅かされた状態のことです。
ストレスという言葉は、日常会話では「嫌な気持ち」とほぼ同じ意味で使われます。しかし心理学や生理学では、もう少し広い意味を持つ言葉です。この分野を扱う学術誌Cell Stressが2021年に発表した、ルー(Lu)らの総説論文があります。この論文によると、ストレスとは「恒常性(ホメオスタシス)が脅かされた状態」のことです。
恒常性とは、体温や血糖値などを一定の範囲に保とうとする、体のしくみのことです。この恒常性を脅かす可能性を持つ要因は、ストレッサーと呼ばれます。同じ論文は、ストレッサーを「恒常性を直接脅かす可能性を持つ要因」と定義しています。
つまり、ストレスとストレッサーは別の言葉です。ストレッサーは「原因」であり、ストレスは、その原因によって体に起きる「状態」を指します。
02ストレッサーには身体的なものと心理的なものがある
ストレッサーには、寒さや騒音などの身体的なものと、不安や競争などの心理的なものがあります。
ルーらの論文は、ストレッサーをいくつかの種類に分けて説明しています。身体的なストレッサーとして挙げられているのは、寒さ・暑さ・放射線・騒音・振動・乾燥といった、物理的な環境の変化です。
一方、心理的なストレッサーもあります。不安や恐怖といった感情的なもの、情報が多すぎることで生じる認知的なものが含まれます。さらに、競争や老いに関わる知覚的なもの、人間関係の対立や外傷といった心理社会的なものも含まれます。
このように、ストレッサーは体の外側の環境だけでなく、人間関係や考え方からも生まれます。次のレッスン以降では、この中でも心理的なストレッサーへの反応について、くわしく見ていきます。
03ストレスは必ず悪いものか。ユーストレスとディストレス
ストレスには、適度であれば力になるユーストレスと、過剰で害になるディストレスがあります。
ストレスは、常に悪いものとは限りません。ルーらの論文は、ストレッサーの強さによって、ストレスを3つの種類に分けています。ストレッサーのレベルが適度なときに起こるのが、ユーストレス(eustress)と呼ばれる状態です。
反対に、ストレッサーのレベルが高すぎるときに起こるのが、ディストレス(distress)と呼ばれる、害のある状態です。さらに同論文は、ストレッサーが少なすぎる状態を「サストレス(sustress)」と呼んでいます。適度な刺激が不足することも、正常な働きを保つうえでは望ましくないと述べています。
同論文は、適度なストレスが、体の防御力を育てるうえで欠かせないとも述べています。ストレスを、害のあるものとだけ結びつけるのではなく、強さによって働きが変わるものとして捉えることが大切です。
04体はストレッサーにどう反応するのか。キャノンの発見
1915年にキャノンは、体がストレッサーに対して、闘争・逃走反応と呼ばれる緊急反応を起こすことを報告しました。
体がストレッサーにどう反応するかを、最初に体系的に研究した人物の一人が、生理学者のキャノン(Walter Cannon)です。キャノンは1915年に著書「Bodily Changes in Pain, Hunger, Fear and Rage」を出版しました。この本で、強い感情が起きたときの体の変化を報告しています。
この研究を紹介する、2002年のAmerican Journal of Public Health誌の記事があります。この記事によると、動物が強く興奮したとき、自律神経系の交感神経とアドレナリンというホルモンが組み合わさります。そして、「闘争・逃走(flight or fight)」と呼ばれる緊急的な反応のために、体を準備させます。この「交感神経・副腎系」は、血液の配分や血糖、血液の凝固能力を変化させ、激しい活動に備えます。
この闘争・逃走反応は、目の前の危険に対する、短時間の反応です。けれども、現代の生活では、仕事の締め切りや人間関係の悩みのように、すぐには消えないストレッサーがあります。こうしたストレッサーに、くり返しさらされることも少なくありません。次のレッスンでは、このような状態が続いたとき、体に何が起こるのかを見ていきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
ストレスとは、体の恒常性(ホメオスタシス)が脅かされた状態のことです。
ストレッサーとは、体の恒常性を脅かす可能性を持つ、身体的または心理的な要因のことです。
闘争・逃走反応とは、危険に対して、交感神経とアドレナリンの働きにより、体を戦うか逃げるかの行動に備えさせる、緊急的な反応のことです。
EXAMPLES身近な例で深める
このレッスンの内容を、日常の疑問にあてはめた研究解説記事です。
出典
LESSON 14-1 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. ストレスとストレッサーの関係として正しいものはどれですか。
- ストレッサーは原因であり、ストレスはそれによって体に起きる状態である
- ストレスとストレッサーは完全に同じ意味である
- ストレッサーは心理的な要因だけを指し、身体的な要因は含まれない
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正解: 1. ストレッサーは原因であり、ストレスはそれによって体に起きる状態である
ルーらの2021年の論文によると、ストレッサーは恒常性を脅かす要因(原因)であり、ストレスはその結果として体に起きる状態を指します。
Q2. 次のうち、心理的なストレッサーに分類されるものはどれですか。
- 情報が多すぎることによる認知的な負荷
- 騒音や振動といった物理的な環境の変化
- 体温や血糖値を一定に保とうとするしくみ
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正解: 1. 情報が多すぎることによる認知的な負荷
ルーらの論文では、情報過多のような認知的な負荷は心理的なストレッサーに分類され、騒音や振動は身体的なストレッサーに分類されています。
Q3. 1915年にキャノンが報告した「闘争・逃走反応」を引き起こすのはどれですか。
- 交感神経とアドレナリンの働き
- 恒常性が完全に失われること
- ディストレスだけに特有の反応
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正解: 1. 交感神経とアドレナリンの働き
キャノンの研究を紹介する記事によると、交感神経とアドレナリンの働きが組み合わさることで、闘争・逃走反応が引き起こされます。
レッスン14-1はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。