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第4章 意識と睡眠 ・ レッスン4-5睡眠不足は心と体に何をするのか。慢性的な影響とは
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 慢性的な睡眠不足が、注意力や判断力にどう影響するかを、研究例から説明できる
- 睡眠不足のときの自覚的な眠気と、実際の能力の低下がずれることがあると説明できる
- 慢性的な睡眠不足が、体の病気のリスクにどう関係するかを説明できる
要点
- 睡眠不足とは、体や脳に必要な睡眠時間が、十分に取れていない状態が続くことです。
- 2009年に発表された総説では、2週間にわたって1日4時間睡眠を続けた人の注意力や作業記憶の低下は、2晩完全に眠らなかった場合と同じ程度になったと報告されています。
- 2021年に発表された総説では、睡眠不足が続くことで、冠動脈性心疾患のリスクが48%、脳卒中のリスクが15%、肥満のリスクが55%、それぞれ高くなるという関連が報告されています。
01睡眠不足が続くと、注意力や判断力はどうなるのか
2週間にわたって1日4時間睡眠を続けると、注意力や作業記憶の低下は、2晩完全に眠らなかった場合と同じ程度になります。
睡眠不足の影響を調べた研究では、一晩まったく眠らない完全な徹夜だけでなく、睡眠時間を少しずつ削った状態が続く、十分な睡眠時間を取れない状態が何日も続く慢性的な睡眠不足も調べられています。2009年に発表された総説では、1日の睡眠時間を4時間・6時間・8時間に分けて14日間続けた実験が紹介されています。
この実験では、1日4時間睡眠を2週間続けた場合、注意力や作業記憶、頭の中で情報を処理する速さの低下が、2晩まったく眠らなかった場合と同じ程度まで進んでいたことが示されました。
一方、本人が感じる眠さの程度は、実際の能力の低下に比べて、あまり大きくは増えていきませんでした。これは、自分では慣れたと感じていても、実際の注意力や判断力は低下したままである可能性を示しています。
同じ実験で脳波を測ったところ、1日4時間睡眠を続けても、深い睡眠に特徴的なゆっくりとした脳波の量は、完全な徹夜をしたときのようには大きく変化しませんでした。慢性的な睡眠不足と完全な徹夜とでは、脳への負担のかかり方が異なる可能性を示す結果です。
02睡眠不足は体の病気のリスクにも関係するのか
睡眠不足が続くことは、心臓病や脳卒中、肥満などの病気のリスクが高まることと関連しています。
睡眠不足は、脳の働きだけでなく、体にも影響を与えます。2021年に発表された総説では、睡眠不足と免疫のはたらき、病気のリスクとの関連がまとめられています。
この総説によると、睡眠不足は、炎症に関わる物質を増やし、体を守るはたらきを持つ細胞の働きを弱めることが報告されています。また睡眠不足は、食欲に関わるホルモンの量や、血糖の調節のされ方にも影響すると報告されています。
こうした変化と関連して、睡眠不足は、冠動脈性心疾患のリスクを48%、脳卒中のリスクを15%、肥満のリスクを55%、それぞれ高めるという関連が、この総説では報告されています。
同じ総説では、睡眠不足と2型糖尿病のリスクが28%、高血圧のリスクが21%、それぞれ高くなるという関連も報告されています。これらはいずれも「関連」であり、睡眠不足だけが原因だと確かめられたわけではない点に注意が必要です。
03睡眠不足にどう向き合えばよいのか
睡眠不足は自分で感じる眠さだけでは正確に判断しにくいため、十分な睡眠時間を確保すること自体が大切だと考えられています。
ここまで見てきたように、睡眠不足は、本人が気づきにくい形で注意力や判断力を低下させ、それが何日も積み重なることで、体の病気のリスクにも関わっていく可能性があります。
この章では、意識とは何かという問いから始めて、睡眠の段階、睡眠と夢の役割、そして睡眠不足が心と体にもたらす影響までを見てきました。次の章からは、感覚と知覚について学んでいきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
必要な睡眠時間に届かない状態が、何日も続くこと。
画面に表れた信号にできるだけ早く反応する作業を使って、注意力の低下を測る検査。
心臓に血液を送る血管(冠動脈)が狭くなったり詰まったりして起こる病気。
出典
- Goel, N., Rao, H., Durmer, J. S., & Dinges, D. F. (2009). Neurocognitive Consequences of Sleep Deprivation. Seminars in Neurology, 29(4), 320-339.
- Garbarino, S., Lanteri, P., Bragazzi, N. L., Magnavita, N., & Scoditti, E. (2021). Role of Sleep Deprivation in Immune-Related Disease Risk and Outcomes. Communications Biology, 4, 1304.
LESSON 4-5 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 2009年の総説で紹介された実験からわかることはどれですか。
- 1日4時間睡眠を2週間続けた場合の注意力の低下は、2晩完全に眠らなかった場合と同じ程度になった
- 睡眠時間を減らしても、注意力や作業記憶はまったく低下しなかった
- 本人が感じる眠さと、実際の能力の低下は、つねに同じ割合で増えていった
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正解: 1. 1日4時間睡眠を2週間続けた場合の注意力の低下は、2晩完全に眠らなかった場合と同じ程度になった
2009年の総説では、1日4時間睡眠を2週間続けた場合の注意力・作業記憶の低下が、2晩完全に眠らなかった場合と同じ程度になったと報告されています。
Q2. 2021年の総説が報告した、睡眠不足と病気のリスクの関連として正しいものはどれですか。
- 睡眠不足は、冠動脈性心疾患や脳卒中、肥満などのリスクの高まりと関連していた
- 睡眠不足は、病気のリスクにまったく関連していなかった
- 睡眠不足は、病気のリスクを下げる方向に関連していた
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正解: 1. 睡眠不足は、冠動脈性心疾患や脳卒中、肥満などのリスクの高まりと関連していた
2021年の総説では、睡眠不足が冠動脈性心疾患・脳卒中・肥満などのリスクの高まりと関連していたと報告されています。
Q3. この章の内容から、睡眠不足について正しいといえるものはどれですか。
- 本人が感じる眠さだけでは、実際の注意力や判断力の低下を正確に判断できないことがある
- 眠気を感じなければ、睡眠不足による能力の低下は起きていない
- 睡眠不足は、脳にも体にもまったく影響しない
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正解: 1. 本人が感じる眠さだけでは、実際の注意力や判断力の低下を正確に判断できないことがある
研究では、本人が感じる眠さの程度と、実際の注意力・判断力の低下がずれることがあると報告されています。
レッスン4-5はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。