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第4章 意識と睡眠 ・ レッスン4-4

夢はなぜ見るのか。夢の内容と感情処理から考える

読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02

このレッスンの学習目標

要点

  1. 夢とは、おもにレム睡眠中に経験する、物語のような心の体験のことです。
  2. 2010年に発表された総説では、レム睡眠中の夢の報告のうち25〜30%には感情がまったく含まれておらず、前日までの出来事がそのまま現れる夢は全体の約1.5%にすぎないと報告されています。
  3. 2009年に発表された総説では、1晩の徹夜によってネガティブな画像に対する扁桃体の反応が60%大きくなることが報告されており、レム睡眠が感情を整理する働きに関わっている可能性が指摘されています。

01夢にはどんな内容が多いのか

夢の中には感情がまったく含まれない報告も多く、前日までの出来事がそのまま現れる夢は、全体のわずかな割合にすぎません。

夢は、物語のように感情豊かな体験だと思われがちですが、実際の夢の報告を分析した研究では、必ずしもそうとは限らないことがわかっています。2010年に発表された総説によると、レム睡眠中に見た夢の報告のうち、25〜30%には感情がまったく含まれていませんでした。

同じ総説では、前日までに実際に経験した出来事が、そのままの形で夢に現れる割合は、全体の夢のうち約1.5%にすぎないとも報告されています。夢の内容の多くは、特定の記憶そのものというより、さまざまな記憶や感情が組み合わさってできていると考えられます。

02夢を見ることには、どんな意味があると考えられてきたか

夢の意味については、無意識の欲求を表すという考え方から、脳の活動を解釈しようとする働きだとする考え方まで、異なる理論が提案されてきました。

夢の意味について、20世紀前半には、夢は満たされていない無意識の欲求を表しているという考え方が、精神分析の立場から提案されていました。この考え方では、夢の本当の意味である潜在内容は、検閲によって姿を変えられた顕在内容として現れるとされました。

一方、2010年に発表された総説で紹介されている神経科学の立場の理論では、夢は、レム睡眠中に脳の内部で生じる活動を、脳自身が意味づけしようとする働きの結果だと考えられています。この立場では、夢の内容そのものよりも、それを生み出す脳の活動の状態に注目します。

同じ総説では、夢を「十分に活性化した脳が、外部からの入力を絶たれ、かつ自分をふり返る働きが抑えられたときに起こる現象」だとする、別の神経科学的な考え方も紹介されています。この考え方では、夢そのものを特別な意味を持つメッセージとして読み解くよりも、夢が生じているときの脳の状態を調べることに重点が置かれます。

03夢を見ることは感情の処理に関係しているのか

レム睡眠には、前日の感情的な経験を整理し、過剰な反応を和らげる働きがあると考えられています。

2009年に発表された総説では、レム睡眠が、感情的な経験を整理する一種の「夜の間のセラピー」のような働きを持つ可能性が提案されています。

この総説によると、1晩まったく眠らなかった人は、ネガティブな画像を見たときの扁桃体(感情に関わる脳の部位)の反応が、十分に眠った人より60%大きくなり、扁桃体と、感情を抑える働きを持つ前頭前皮質との結びつきも弱まっていました。

レム睡眠をとることで、こうした感情的な経験が整理され、次にその出来事を思い出したときの反応が和らげられる可能性があると、この総説では指摘されています。夢を見るというレム睡眠中の体験が、感情の整理そのものとどう関係しているのかは、今も研究が続いているテーマです。

日中の短い睡眠(昼寝)を使った別の実験では、睡眠の中でレム睡眠をとった時間が長い人ほど、感情に関わる記憶の改善の程度が大きいという、強い関係が報告されています。レム睡眠の量そのものが、感情の整理の進み方と結びついている可能性を示す結果です。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

顕在内容Manifest Content

夢の中でそのまま体験される、見た目の内容。精神分析の理論では、潜在内容が姿を変えて現れたものとされる。

潜在内容Latent Content

精神分析の理論で、夢の本当の意味だとされる、隠された欲求や考え。

扁桃体Amygdala

脳の中で、恐怖や不安などの感情の処理に関わる部位。

出典

  1. Nir, Y., & Tononi, G. (2010). Dreaming and the Brain: From Phenomenology to Neurophysiology. Trends in Cognitive Sciences, 14(2), 88.
  2. van der Helm, E., & Walker, M. P. (2009). Overnight Therapy? The Role of Sleep in Emotional Brain Processing. Psychological Bulletin, 135(5), 731-748.

LESSON 4-4 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. 2010年の総説が報告した、夢の内容の特徴として正しいものはどれですか。
  1. レム睡眠中の夢の報告のうち25〜30%には感情がまったく含まれていなかった
  2. 夢の内容はすべて前日の出来事がそのまま再現されたものだった
  3. 夢にはつねに強い感情が含まれていた
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正解: 1. レム睡眠中の夢の報告のうち25〜30%には感情がまったく含まれていなかった
2010年の総説では、レム睡眠中の夢の報告のうち25〜30%には感情がまったく含まれていなかったと報告されています。

Q2. 精神分析の理論と神経科学の理論の違いとして正しいものはどれですか。
  1. 精神分析の理論は無意識の欲求に注目し、神経科学の理論は脳の活動状態に注目する
  2. どちらの理論も、夢は見ないほうがよいと主張している
  3. 精神分析の理論と神経科学の理論は、まったく同じ内容を主張している
答えを見る

正解: 1. 精神分析の理論は無意識の欲求に注目し、神経科学の理論は脳の活動状態に注目する
精神分析の理論は無意識の欲求(潜在内容)に注目し、神経科学の理論は脳の活動の状態に注目します。

Q3. 2009年の総説が報告した、睡眠不足と扁桃体の関係として正しいものはどれですか。
  1. 1晩眠らなかった人は、ネガティブな画像に対する扁桃体の反応が、十分に眠った人より60%大きくなった
  2. 睡眠不足は扁桃体の反応にまったく影響しなかった
  3. 睡眠不足によって扁桃体の反応は半分に減った
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正解: 1. 1晩眠らなかった人は、ネガティブな画像に対する扁桃体の反応が、十分に眠った人より60%大きくなった
2009年の総説では、1晩眠らなかった人は、ネガティブな画像に対する扁桃体の反応が、十分に眠った人より60%大きくなったと報告されています。

レッスン4-4はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第4章 意識と睡眠 のレッスン一覧
  1. 4-1意識とは何か
  2. 4-2睡眠の段階とは
  3. 4-3なぜ人は眠るのか
  4. 4-4夢はなぜ見るのか
  5. 4-5睡眠不足の影響とは

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