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第4章 意識と睡眠 ・ レッスン4-3なぜ人は眠るのか。記憶と脳の老廃物から考える
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 睡眠が記憶の定着に関わっていることを、研究例から説明できる
- 睡眠中に脳の老廃物が取り除かれる仕組みを説明できる
- 睡眠には複数の役割が同時にある可能性があることを説明できる
要点
- 睡眠とは、ただ体を休めるだけでなく、記憶を定着させたり脳にたまった老廃物を取り除いたりする、積極的な働きを持つ時間のことです。
- 1924年に発表された実験では、学習した内容を覚えている割合が、眠って過ごした場合のほうが、同じ時間起きて過ごした場合より高いことが示されました。
- 2013年に発表されたマウスの実験では、眠っている間は脳の細胞間のすきまが60%以上広がり、老廃物が起きているときの2倍の速さで取り除かれていたことが報告されています。
01眠ると記憶は定着しやすくなるのか
眠って過ごした場合は、同じ時間起きて過ごした場合よりも、学習した内容を覚えている割合が高くなることが実験で示されています。
睡眠が記憶に関係しているという考えは、19世紀のドイツの心理学者エビングハウスが、学習した内容がどれくらいの速さで忘れられていくかを調べた研究の中に、すでに表れていました。
1924年に発表された実験では、学習した内容を覚えている割合を、その後眠って過ごした場合と、同じ時間起きて過ごした場合とで比較しました。その結果、眠って過ごした場合のほうが、学習した内容をよく覚えていることが確かめられました。
その後の研究では、起きている間に働いていた脳の神経細胞の活動パターンが、眠っている間に、もとよりも速い速さで再現される「リプレイ」という現象が見つかっています。記憶に深く関わる脳の部位である海馬が、この再現を通じて新しい記憶を安定させる働きに関わっていると考えられています。
脳がゆっくりとした波を出すノンレム睡眠の深い段階ほど、この記憶の定着が進みやすいことも報告されています。実験で人工的にこのゆっくりとした脳波を強めると、目覚めたときの記憶の成績が上がることも確認されました。
02眠ると脳の老廃物は減るのか
眠っている間は脳の細胞の間のすきまが広がり、老廃物が起きているときよりも速く取り除かれます。
脳は、何もしていないときも含めて活動するたびに、アミロイドベータなどの老廃物を生み出しています。2013年に発表されたマウスを使った実験では、この老廃物が脳からどれくらいの速さで取り除かれるかを、眠っているときと起きているときで比較しました。
その結果、眠っている、または麻酔で意識を失っているマウスでは、脳の細胞の間のすきまの体積が、起きているときより60%以上広がっていました。このすきまが広がることで脳の中を流れる液体の量が増え、アミロイドベータは起きているときの2倍の速さで取り除かれていました。
目が覚めると、この液体の流れ込みは95%ほど減ることも報告されています。この実験はマウスを対象にしたものですが、眠ることが脳の老廃物を片づける時間としても働いている可能性を示しています。
03睡眠には1つだけの役割しかないのか
睡眠には、記憶を定着させる働きと、脳の老廃物を取り除く働きなど、複数の役割が同時にあると考えられています。
ここまで見た記憶の定着と老廃物の除去は、睡眠が持つ働きの一部です。研究者たちは、睡眠が同時に複数の役割を果たしている可能性があると考えています。睡眠の研究が、記憶を調べる心理学者と、脳のしくみを調べる生物学者の両方によって進められてきたのも、このためです。
どちらの働きも、起きている間には同じようには進みにくく、眠っている間だからこそ効率よく行われると考えられています。次のレッスンでは、睡眠中にみる「夢」について、どのような研究が行われてきたかを見ていきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
学習した内容が、時間とともに安定した記憶として保持されるようになる過程。
脳の細胞の間を流れる液体によって、老廃物を脳の外へ運び出すしくみ。
脳の活動にともなって作られるたんぱく質の一種。脳内に蓄積しやすい老廃物として知られる。
出典
- Simon, K. C., Nadel, L., & Payne, J. D. (2022). The Functions of Sleep: A Cognitive Neuroscience Perspective. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(44), e2201795119.
- McKinley, J., McCarthy, A., & Lynch, T. (2013). Don't Lose Sleep Over Neurodegeneration-It Helps Clear Amyloid Beta. Frontiers in Neurology, 4, 206.
- Watson, B. O., & Buzsáki, G. (2015). Sleep, Memory & Brain Rhythms. Daedalus, 144(1), 67-82.
LESSON 4-3 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 1924年に発表された実験からわかることはどれですか。
- 学習した内容を覚えている割合は、眠って過ごした場合のほうが、起きて過ごした場合より高かった
- 眠っても起きていても、記憶の残り方はまったく同じだった
- 眠ると、学習した内容は必ずすべて忘れてしまう
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正解: 1. 学習した内容を覚えている割合は、眠って過ごした場合のほうが、起きて過ごした場合より高かった
1924年の実験では、眠って過ごした場合のほうが、同じ時間起きて過ごした場合より学習内容を覚えている割合が高いことが示されました。
Q2. 2013年に発表されたマウスの実験からわかることはどれですか。
- 眠っている間は脳の細胞間のすきまが広がり、老廃物が起きているときより速く取り除かれる
- 眠っている間は脳の老廃物がまったく取り除かれない
- 脳の老廃物は、起きているときにしか取り除かれない
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正解: 1. 眠っている間は脳の細胞間のすきまが広がり、老廃物が起きているときより速く取り除かれる
2013年の実験では、眠っているマウスは脳の細胞間のすきまが60%以上広がり、老廃物が起きているときの2倍の速さで取り除かれていました。
Q3. この章の内容から、睡眠の働きについて正しいといえるものはどれですか。
- 睡眠には記憶の定着や老廃物の除去など、複数の役割が同時にあると考えられている
- 睡眠の役割は記憶の定着だけで、他の働きはない
- 睡眠には脳にとって役立つ働きは何もない
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正解: 1. 睡眠には記憶の定着や老廃物の除去など、複数の役割が同時にあると考えられている
睡眠には記憶の定着と老廃物の除去など、複数の役割が同時にあると考えられています。
レッスン4-3はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。