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第9章 発達 ・ レッスン9-4自己と社会性はどう育つのか。エリクソンの発達段階説
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- エリクソンの発達段階説が、人の心の発達をどのような考え方で説明しているかを説明できる
- 青年期の課題とされる「アイデンティティの確立」について、その混乱との対比とともに説明できる
- 乳児期や青年期の課題の解決が、その後の人生にどう関わるかを、具体的な研究にもとづいて説明できる
要点
- エリクソンとは、人の心の発達を、生涯にわたる8つの段階と、各段階に特有の心理社会的な課題の組み合わせで説明した心理学者のことです。
- アイデンティティ(自己同一性)とは、自分が自分であるという感覚の連続性と、他者とは違う独自性の感覚のことで、エリクソンは、これを確立することが青年期の中心的な課題だと考えました。
- 高齢期における人生への満足感には、青年期のアイデンティティの確立だけでなく、乳児期の信頼感の獲得も関わることが、追跡的な研究で示されています。
01エリクソンの発達段階説とは何か
エリクソンとは、人の心の発達を、生涯にわたる8つの段階と、各段階に特有の心理社会的な課題の組み合わせで説明した心理学者のことです。
2021年に学術誌International Journal of Environmental Research and Public Healthに発表された論文によると、心理学者エリクソンの発達段階説は、人の心の発達を、乳児期から高齢期まで続く8つの段階に分け、それぞれの段階に特有の心理社会的な課題を示したものです。
同じ論文によると、その8段階とは、乳児期の「信頼対不信」、幼児期前期の「自律性対恥・疑惑」、遊戯期の「自主性対罪悪感」、学童期の「勤勉性対劣等感」、青年期の「アイデンティティ対アイデンティティの混乱」、成人期前期の「親密性対孤立」、成人期の「世代性対停滞」、そして高齢期の「統合対絶望」です。
この章の前のレッスンで見たピアジェの発達段階説が、子どもの「思考」の発達を中心に説明するのに対し、エリクソンの発達段階説は、人と人との関わりの中で育つ「自己」と「社会性」の発達を中心に説明する点に特徴があります。
02青年期の課題。アイデンティティの確立
アイデンティティ(自己同一性)とは、自分が自分であるという感覚の連続性と、他者とは違う独自性の感覚のことです。
2016年に学術誌Journal of the Canadian Academy of Child and Adolescent Psychiatryに発表されたレビュー論文によると、アイデンティティとは、自分自身の中の連続性と、他者との違いを区別する独自性の感覚を与えるものです。エリクソンは、このアイデンティティを確立することこそが、青年期の中心的な課題だと考えました。
同じ論文によると、アイデンティティをうまく確立できた青年は、心身の症状や神経症的な症状が少なく、不安や抑うつ、自殺に関する傾向も低いことが報告されています。
この論文は、53件の研究をもとに、アイデンティティの発達と仲間関係の関わりを調べたレビューで、最終的に質の基準を満たした7件の研究のうち6件で、アイデンティティの発達と仲間との良い関係との間に、統計的に意味のある関連が見られたと報告しています。ただし、別の研究では、親と友人への愛着が説明できるアイデンティティ発達の分散は、わずか4%にとどまるとも報告されており、仲間関係だけでアイデンティティの発達のすべてを説明できるわけではありません。
03乳児期の課題の解決は、高齢期にも関わる
高齢期の人生への満足感(統合)には、青年期のアイデンティティの確立だけでなく、乳児期の信頼感の獲得も関わることが、追跡的な研究で示されています。
前述のInternational Journal of Environmental Research and Public Healthの論文は、台湾に住む65歳から90歳までの、地域で生活する高齢者292人を対象に、それまでの発達段階の課題への取り組みが、高齢期の「統合」(人生をどれだけ受け入れ、満足できているか)にどう関わるかを調べました。
同じ論文によると、分析の結果、高齢期の統合を予測する要因として、成人期の「世代性」(標準化係数0.48)、青年期の「アイデンティティ」(同0.32)、そして乳児期の「信頼」(同0.42)の3つが、統計的に意味のある予測因子として見つかりました。
この結果は、高齢期にどれだけ人生に満足できるかが、高齢期だけで決まるものではなく、乳児期や青年期を含む、それまでの発達段階の課題にどう向き合ってきたかの積み重ねに関わっていることを示しています。
04エリクソンの発達段階説から見えること
エリクソンの発達段階説は、人の心の発達が、どの年齢の段階でも課題を抱えながら進む、生涯にわたる過程であることを示しています。
この章の最初のレッスンで見たように、発達心理学は、子ども時代だけでなく、生涯を通じた心と行動の変化を研究の対象としています。エリクソンの発達段階説は、その考え方を、「自己」と「社会性」という側面から具体的に示したものだと言えます。
次の章からは、感情や動機づけという、別の角度から人の心の発達と働きを見ていきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
エリクソンの発達段階説とは、人の心の発達を、生涯にわたる8つの段階と、各段階に特有の心理社会的な課題の組み合わせで説明する理論のことです。
アイデンティティ(自己同一性)とは、自分が自分であるという感覚の連続性と、他者とは違う独自性の感覚のことです。
統合とは、エリクソンの発達段階説で、高齢期に、自分の人生をどれだけ受け入れ、満足できているかを表す概念のことです。
出典
- Chen, P.-Y., Ho, W.-C., Lo, C., & Yeh, T.-P. (2021). Predicting Ego Integrity Using Prior Ego Development Stages for Older Adults in the Community. International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(18), 9490.
- Rageliene, T. (2016). Links of Adolescents Identity Development and Relationship with Peers: A Systematic Literature Review. Journal of the Canadian Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 25(2), 97-105.
LESSON 9-4 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. エリクソンの発達段階説について、正しい説明はどれですか。
- 人の心の発達を、生涯にわたる8つの段階と、各段階に特有の心理社会的な課題の組み合わせで説明する
- 子どもの「思考」の発達だけに注目した理論である
- 成人期以降の発達については何も説明していない
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正解: 1. 人の心の発達を、生涯にわたる8つの段階と、各段階に特有の心理社会的な課題の組み合わせで説明する
エリクソンの発達段階説は、人の心の発達を、乳児期から高齢期まで続く8つの段階と、各段階に特有の心理社会的な課題の組み合わせで説明します。
Q2. エリクソンが青年期の中心的な課題と考えたことについて、正しい説明はどれですか。
- アイデンティティ(自己同一性)を確立すること
- 乳児期の信頼感をもう一度やり直すこと
- 高齢期の統合を直接に完成させること
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正解: 1. アイデンティティ(自己同一性)を確立すること
エリクソンは、アイデンティティ(自己同一性)を確立することこそが、青年期の中心的な課題だと考えました。
Q3. 台湾の高齢者292人を対象にした研究で、高齢期の「統合」を予測する要因として報告されたものはどれですか。
- 成人期の世代性、青年期のアイデンティティ、乳児期の信頼のそれぞれ
- 身長や体重といった身体的な特徴
- 居住地域の人口密度だけ
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正解: 1. 成人期の世代性、青年期のアイデンティティ、乳児期の信頼のそれぞれ
この研究では、成人期の「世代性」、青年期の「アイデンティティ」、乳児期の「信頼」が、高齢期の統合を予測する、統計的に意味のある要因として見つかりました。
レッスン9-4はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。