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第9章 発達 ・ レッスン9-2

子どもの思考はどう育つのか。ピアジェの発達段階説

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02

このレッスンの学習目標

要点

  1. ピアジェとは、子どもの思考が年齢とともに質的に異なる段階を経て発達すると考えた心理学者のことです。
  2. 物の永続性とは、物が視界から消えても存在し続けるという理解のことで、ピアジェが想定したよりも早い時期に芽生える可能性が、その後の研究で示されています。
  3. 数の保存とは、見た目の配置が変わっても物の数自体は変わらないという理解のことで、多くの子どもは7歳ごろにこれを身につけます。

01ピアジェの発達段階説とは何か

ピアジェとは、子どもの思考が、年齢とともに質的に異なる段階を経て発達すると考えた心理学者のことです。

スイスの心理学者ジャン・ピアジェは、子どもの思考の発達を研究した、発達心理学の中でもとくに大きな影響を残した人物です。

1999年に学術誌British Journal of Developmental Psychologyに発表された論文によると、ピアジェの理論では、物が完全に隠れても存在し続けると理解できるようになるのは、感覚運動期と呼ばれる発達初期の時期の、ある段階(論文内では「第4段階」と表現)に達してからだとされています。この段階に達すると、子どもは、物を隠している遮蔽物を取り除くという行動を使って、隠れた物を探し出せるようになります。

つまりピアジェの考え方は、子どもが何を「知っている」かだけでなく、何を知るための行動が「できる」ようになるかに注目した点に特徴があります。次の節では、この「物の永続性」という考え方自体が、その後どのように検証されてきたかを見ていきます。

02物の永続性。ピアジェの想定と、その後の研究

物の永続性への理解を示す反応は、ピアジェが想定したよりも早い、生後3.5か月から5か月ごろの乳児にも見られることが、その後の研究で示されています。

同じ論文によると、心理学者ルネ・バイヤルジョンの研究は、ピアジェの想定よりずっと早い時期に、物の永続性への理解を示す乳児の反応を報告しています。具体的には、生後3.5か月から5か月、場合によっては生まれつきの時期から、物の永続性を示す反応が見られると解釈されています。

この研究で使われたのは、乳児に出来事を見せ続けさせて、物理的にありえない出来事(たとえば、物があるはずの場所を遮蔽物がそのまま通り抜けるように見える場面)を見たときに、乳児がより長く見つめるかどうかを調べる方法です。長く見つめることは、その出来事を「意外だ」と感じていることの手がかりとされます。

ただし、同じ論文は、ピアジェの理論とバイヤルジョンの研究のどちらも、子どもが「物を隠す場所」によって探し方が変わる理由を十分に説明できないとも指摘しています。物の永続性の発達は、単純に「早いか遅いか」だけでは説明できない複雑さを持っています。

03数の保存。見た目が変わっても数は変わらないという理解

数の保存(見た目の配置が変わっても物の数自体は変わらないという理解)は、多くの子どもが7歳ごろに身につけます。

2012年に学術誌PLoS ONEに発表された論文によると、ピアジェが考案した代表的な実験の一つが、数の保存を調べる課題です。2列のコインを1対1に対応させて並べ、同じ数であることを確認したあと、片方の列だけを間隔を広げて並べ直します。

同じ論文によると、7歳より前の子どもの多くは、間隔を広げて長くなった列の方が、コインの数が多いと誤って答える傾向があります。見た目の長さという特徴に引きずられてしまうためです。

同じ論文は、fMRI(脳機能画像)を使った実験で、この誤りを乗り越えて正しく「数は変わらない」と判断できる子どもほど、見た目の長さに引きずられる判断を抑える働きに関わる右脳の下前頭回・島と、数の情報を保持する左脳の頭頂間溝という、2つの脳領域が活動していたことを報告しています。

04ピアジェの理論は今、どう位置づけられているか

ピアジェの発達段階説は今も重要な出発点ですが、乳児の能力に関する具体的な年齢の見積もりは、その後の研究で見直されています。

ピアジェの観察にもとづく発達段階説は、子どもの思考をはじめて体系的にとらえた研究として、その後の発達心理学の土台になりました。

一方で、物の永続性のように、乳児を対象とした研究方法が洗練されるにつれて、ピアジェが想定した年齢よりも早い時期に、特定の能力の芽が見られるという報告が積み重ねられてきました。

次のレッスンでは、思考の発達とは別の角度から、子どもの発達を支えるもう一つの重要な土台である「愛着」について見ていきます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

感覚運動期Sensorimotor stage

感覚運動期とは、ピアジェの発達段階説で、乳児が感覚と運動を通じて外界を理解していくとされる、発達初期の時期のことです。

物の永続性Object permanence

物の永続性とは、物が視界から消えても存在し続けるという理解のことです。

数の保存Conservation of number

数の保存とは、物の見た目の配置が変わっても、その数自体は変わらないという理解のことです。

出典

  1. Moore, M. K., & Meltzoff, A. N. (1999). New findings on object permanence: A developmental difference between two types of occlusion. British Journal of Developmental Psychology, 17(4), 623-644.
  2. Poirel, N., Borst, G., Simon, G., Rossi, S., Cassotti, M., Pineau, A., & Houde, O. (2012). Number Conservation is Related to Children's Prefrontal Inhibitory Control: An fMRI Study of a Piagetian Task. PLoS ONE, 7(7), e40802.

LESSON 9-2 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. ピアジェの理論で、物が完全に隠れても存在し続けると理解できるようになる段階について、正しい説明はどれですか。
  1. 感覚運動期のある段階に達すると、遮蔽物を取り除くという行動で隠れた物を探せるようになる
  2. 生まれた直後から、物の永続性を完全に理解している
  3. 物の永続性は、言葉を話せるようになってから初めて芽生える
答えを見る

正解: 1. 感覚運動期のある段階に達すると、遮蔽物を取り除くという行動で隠れた物を探せるようになる
ピアジェの理論では、感覚運動期のある段階(論文内の「第4段階」)に達すると、遮蔽物を取り除くという行動を使って隠れた物を探し出せるようになるとされています。

Q2. バイヤルジョンの研究が示した、物の永続性への理解を示す乳児の反応について、正しい説明はどれですか。
  1. 生後3.5か月から5か月ごろの乳児にも、物理的にありえない出来事をより長く見つめる反応が見られる
  2. 物の永続性への理解を示す反応は、2歳を過ぎてから初めて見られる
  3. 乳児は、ありえない出来事とありえる出来事を見る時間に差を示さない
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正解: 1. 生後3.5か月から5か月ごろの乳児にも、物理的にありえない出来事をより長く見つめる反応が見られる
バイヤルジョンの研究では、生後3.5か月から5か月ごろ(場合によってはそれ以前)の乳児にも、物理的にありえない出来事をより長く見つめる反応が見られると報告されています。

Q3. 数の保存の実験で、7歳より前の子どもに見られやすい誤りについて、正しい説明はどれですか。
  1. コインの列の間隔を広げて長くすると、数が増えたと誤って答えやすい
  2. コインの数を数え間違えることはまったくない
  3. 7歳より前の子どもは、必ず正しく数の保存を理解している
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正解: 1. コインの列の間隔を広げて長くすると、数が増えたと誤って答えやすい
7歳より前の子どもの多くは、コインの列の間隔を広げて見た目が長くなると、数が増えたと誤って答える傾向があります。

レッスン9-2はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第9章 発達 のレッスン一覧
  1. 9-1発達心理学と敏感期
  2. 9-2ピアジェの発達段階説
  3. 9-3愛着理論
  4. 9-4エリクソンの発達段階説
  5. 9-5成人期以降の発達

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