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第9章 発達 ・ レッスン9-5発達は子ども時代だけで終わらない
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 流動性能力と結晶性能力という2種類の知的な能力が、成人期以降にどう変化するかを説明できる
- 流動性能力の低下と結晶性能力の変化が、個人の中でどう関連しているかを説明できる
- 人生への満足度が、年齢とともにどのようなパターンを示すとされているか、その研究の限界とともに説明できる
要点
- 流動性能力とは、その場で素早く情報を処理する能力のことで、成人期を通じて人口平均では低下していく傾向があります。
- 結晶性能力とは、知識や経験の積み重ねにもとづく能力のことで、70歳前後までは、人口平均では向上し続ける傾向があります。
- 人生への満足度は、年齢とともにU字型のパターンを示すという報告がありますが、その頑健性については、研究者の間でも議論が続いています。
01流動性能力。その場で考える力は、成人期を通じて低下していく
流動性能力(その場で素早く情報を処理する能力)は、成人期を通じて、人口平均では低下していく傾向があります。
2022年に学術誌Science Advancesに発表された論文によると、知的な能力は、大きく「流動性能力」と「結晶性能力」の2種類に分けて説明されます。流動性能力とは、その場で素早く情報を処理したり、新しい問題を解いたりする能力のことです。
同じ論文は、18歳から99歳までの5,566人を対象にした研究(最長8回、平均7年の追跡調査)と、25歳から95歳までの3,320人を対象にした研究(4回、およそ10年の追跡調査)という、2つの大規模な縦断研究の結果を分析しています。
同じ論文によると、これらの研究では、流動性能力は、人口平均で見ると成人期を通じて低下していくことが示されています。
02結晶性能力。知識や経験にもとづく力は、70代ごろまで伸び続ける
結晶性能力(知識や経験の積み重ねにもとづく能力)は、人口平均で見ると、70歳前後までは向上し続ける傾向があります。
同じ論文によると、結晶性能力(言葉の知識など、積み重ねた知識や経験にもとづく能力)は、人口平均で見ると、人生のおよそ70年目ごろまでは、年齢とともに向上し続ける傾向があることが示されています。
つまり、知的な能力のすべてが、年齢とともに一様に低下するわけではありません。その場で素早く考える力と、積み重ねた知識にもとづく力とでは、成人期以降の変化のパターンが異なります。
03流動性能力の低下と結晶性能力の変化は、個人の中でつながっている
流動性能力の低下が大きい人ほど、結晶性能力の向上も小さくなる(場合によっては低下する)傾向が、個人の中で見られます。
同じ論文のもっとも重要な発見は、流動性能力と結晶性能力の変化が、個人の中では強く関連しているという点です。流動性能力の低下が大きい人ほど、結晶性能力の向上も小さくなったり、場合によっては低下したりする傾向が見られました。
これは、「その場で考える力が落ちても、積み重ねた知識の力でそれを補える」という単純な見方とは異なる結果です。同じ論文は、2つの能力の変化の速さが、個人の中で強く結びついていることを示しています。
04人生への満足度は年齢とともにどう変わるか
ドイツで行われた調査では、人生への満足度は年齢とともにU字型のパターンを示し、男性では30代から40代にもっとも低くなる傾向が報告されています。
2022年に学術誌Frontiers in Psychologyに発表された論文によると、ドイツに住む12歳から94歳までの1,597人を対象にした調査では、人生への満足度は、年齢とともにU字型のパターンを示すことが報告されています。
同じ論文によると、男性では、人生への満足度がもっとも低くなるのは30歳から49歳ごろで、その後は年齢とともに再び満足度が上がる傾向が見られました。一方、女性では、年齢が上がるにつれて満足度が段階的に上がっていく傾向が見られ、男性のようなU字型のパターンは見られませんでした。
ただし、同じ論文は、このU字型のパターンの頑健性には議論があるとも述べています。特定の社会経済的な条件のもとでしか見られない可能性や、世代による違いが影響している可能性、そして今回のような横断的な調査では、一人ひとりの変化を直接追えないという限界も指摘されています。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
流動性能力とは、その場で素早く情報を処理したり、新しい問題を解いたりする能力のことです。
結晶性能力とは、知識や経験の積み重ねにもとづく能力のことです。
横断研究とは、ある一時点で、異なる年齢の人々を一度に調べる研究手法のことです。
出典
- Tucker-Drob, E. M., de la Fuente, J., Kohncke, Y., Brandmaier, A. M., Nyberg, L., & Lindenberger, U. (2022). A strong dependency between changes in fluid and crystallized abilities in human cognitive aging. Science Advances, 8(5), eabj2422.
- Karwetzky, C., Michaelsen, M. M., Werdecker, L., & Esch, T. (2022). The U-Curve of Happiness Revisited: Correlations and Differences in Life Satisfaction Over the Span of Life. Frontiers in Psychology, 13, 837638.
LESSON 9-5 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 流動性能力と結晶性能力について、正しい説明はどれですか。
- 流動性能力は人口平均で成人期を通じて低下し、結晶性能力は70歳前後まで向上し続ける傾向がある
- 流動性能力と結晶性能力は、どちらも20代でピークを迎え、その後は同じように低下する
- 結晶性能力は、成人期に入るとすぐに低下し始める
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正解: 1. 流動性能力は人口平均で成人期を通じて低下し、結晶性能力は70歳前後まで向上し続ける傾向がある
大規模な縦断研究では、流動性能力は人口平均で成人期を通じて低下し、結晶性能力は70歳前後までは向上し続ける傾向が示されています。
Q2. 流動性能力の低下と結晶性能力の変化の関係について、正しい説明はどれですか。
- 流動性能力の低下が大きい人ほど、結晶性能力の向上も小さくなる傾向がある
- 流動性能力が低下した人は、必ず結晶性能力が大きく向上する
- 流動性能力と結晶性能力の変化には、個人の中でまったく関連が見られない
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正解: 1. 流動性能力の低下が大きい人ほど、結晶性能力の向上も小さくなる傾向がある
研究では、流動性能力の低下が大きい人ほど、結晶性能力の向上も小さくなったり、場合によっては低下したりする傾向が見られました。
Q3. ドイツで行われた調査が報告した、人生への満足度のパターンについて、正しい説明はどれですか。
- 男性では30歳から49歳ごろに満足度がもっとも低くなるU字型のパターンが見られた
- 年齢と人生への満足度には、まったく関係が見られなかった
- 女性にも男性と同じU字型のパターンが明確に見られた
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正解: 1. 男性では30歳から49歳ごろに満足度がもっとも低くなるU字型のパターンが見られた
調査では、男性は30歳から49歳ごろに満足度がもっとも低くなるU字型のパターンを示しましたが、女性には同じパターンは見られませんでした。
レッスン9-5はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。