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第13章 仕事と組織の心理学 ・ レッスン13-3働く意欲はどう生まれるか。目標設定理論
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 目標設定理論が、どのような目標が成果と意欲を高めると説明しているかを述べられる
- 「具体的で難しい目標」が成果を高めるという主張が、どの程度の研究で確認されてきたかを説明できる
- 目標を達成できなかったとき、人の感情・自己肯定感・意欲にどのような影響が出るかを、実験データで説明できる
要点
- 目標設定理論とは、具体的で難しい目標を設定することが、曖昧な目標や「ベストを尽くせ」という目標よりも、成果と意欲を高めるという理論のことです。
- 2021年にFrontiers in Psychologyに発表された論文によると、具体的で難しい目標が成果・持続力・意欲を高めることは、1,000件を超える研究で一貫して示されてきました。
- 同じ論文の実験によると、具体的で難しい目標を達成できなかった参加者は、達成できた参加者に比べて、感情(効果量d=0.48)・自己肯定感(d=0.22)・意欲(d=0.22)のいずれにおいても、有意に低い結果となりました。
01目標設定理論とは何か
目標設定理論とは、具体的で難しい目標を設定することが、曖昧な目標よりも成果と意欲を高めるという理論のことです。
2021年にFrontiers in Psychologyの組織心理学セクションに発表された、ヘプフナー(Höpfner)とカイト(Keith)の論文によると、「高く具体的な目標を設定することは、成果と意欲を高めるための、もっとも確立されたマネジメント手法の一つ」です。
同じ論文は、目標について「人の意欲の対象であり、目標に関連する活動へ注意を向けさせ、努力を引き出し、目標を達成するための戦略を考えるよう人を動かすもの」と説明しています。ロック(Locke)とラザム(Latham)が発展させてきた、産業・組織心理学の代表的な理論です。
同論文によると、具体的で難しい目標が、成果・持続力・意欲を高めることは、1,000件を超える研究で一貫して示されてきました。
02目標設定理論の枠組みは、どのように発展してきたか
ロックとラザムの理論は、目標の「難易度」と「水準」が成果を左右する要因だという考え方を中心に発展してきました。
2023年にFrontiers in Psychologyに発表された、チェン(Cheng)の論文は、ロックとラザムの2002年の整理を引用し、「行動は、決められた期間内に、特定の達成水準を得ようとする目標によって引き起こされる」と説明しています。
同論文によると、1990年から2002年までの12年間に、数多くの研究が、目標の「難易度」と「水準」が、達成の程度を決める2つの主な要因であることを示そうとしてきました。
03目標を達成できなかったとき、何が起こるか
具体的で難しい目標を達成できなかった参加者は、達成できた参加者より、感情・自己肯定感・意欲のいずれも有意に低くなりました。
ヘプフナーとカイトは、オンライン実験に参加した185人(平均年齢28歳)に、10問の知能検査のうち7問を解くという、具体的で難しい目標を伝えました。その後、「目標を達成した」「目標を達成できなかった」「結果を伝えない」の3つの条件に分けて、感情・自己肯定感・意欲を比較しました。
その結果、目標を達成できなかった参加者は、達成できた参加者に比べて、感情の指標が有意に低く(効果量d=0.48, p<0.001)、自己肯定感(d=0.22, p<0.05)と意欲(d=0.22, p<0.05)も、それぞれ有意に低くなりました。86人を対象にした別の実験室実験でも、同様の傾向が確認されています。
04目標設定理論が、職場に示す意味
目標設定理論は、具体的で難しい目標が意欲を高める一方、達成できなかったときの心理的な負担にも注意が必要だと示しています。
論文は、「具体的で難しい目標を達成できないことは、組織の長期的な成果にとって重要な、自己に関わる要因を損なう可能性がある」と結論づけています。目標設定は、成果を高める有効な手法である一方、達成できなかったときの影響も考えたうえで使う必要があることがわかります。
次のレッスンでは、こうした「働く意欲」を導く仕組みについて、リーダーシップの観点から見ていきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
目標設定理論とは、具体的で難しい目標を設定することが、曖昧な目標よりも成果と意欲を高めるという理論のことです。
効果量とは、2つの条件のあいだの差の大きさを、測定単位に関係なく表すための統計的な指標のことです。
自己肯定感とは、自分自身を価値のある存在だと感じる、肯定的な評価や感覚のことです。
EXAMPLES身近な例で深める
このレッスンの内容を、日常の疑問にあてはめた研究解説記事です。
出典
- Höpfner, J., & Keith, N. (2021). Goal Missed, Self Hit: Goal-Setting, Goal-Failure, and Their Affective, Motivational, and Behavioral Consequences. Frontiers in Psychology, 12, 704790.
- Cheng, X. (2023). Looking through goal theories in language learning: A review on goal setting and achievement goal theory. Frontiers in Psychology, 13, 1035223.
LESSON 13-3 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 目標設定理論の説明として正しいものはどれですか。
- 具体的で難しい目標を設定することが、曖昧な目標よりも成果と意欲を高めるという理論
- 目標を立てないことが、もっとも成果を高めるという理論
- 目標の内容よりも、目標を立てる人の性格のほうが成果を決めるという理論
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正解: 1. 具体的で難しい目標を設定することが、曖昧な目標よりも成果と意欲を高めるという理論
目標設定理論とは、具体的で難しい目標を設定することが、曖昧な目標よりも成果と意欲を高めるという理論のことです。
Q2. ヘプフナーとカイトの2021年の論文によると、具体的で難しい目標が成果・持続力・意欲を高めることは、どの程度の研究で示されてきましたか。
- 1,000件を超える研究で一貫して示されてきた
- 10件程度の研究でのみ示された
- 研究によって結果が大きく異なり、一貫した傾向はない
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正解: 1. 1,000件を超える研究で一貫して示されてきた
同論文によると、具体的で難しい目標が成果・持続力・意欲を高めることは、1,000件を超える研究で一貫して示されてきました。
Q3. ヘプフナーとカイトの実験で、具体的で難しい目標を達成できなかった参加者について正しいものはどれですか。
- 達成できた参加者より、感情・自己肯定感・意欲のいずれも有意に低かった
- 達成できた参加者と、感情・自己肯定感・意欲のいずれにも差がなかった
- 達成できた参加者より、むしろ意欲が有意に高かった
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正解: 1. 達成できた参加者より、感情・自己肯定感・意欲のいずれも有意に低かった
目標を達成できなかった参加者は、達成できた参加者に比べて、感情(d=0.48)・自己肯定感(d=0.22)・意欲(d=0.22)のいずれも有意に低くなりました。
レッスン13-3はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。