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第13章 仕事と組織の心理学 ・ レッスン13-1産業・組織心理学とは何か。仕事の心理学の100年
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 産業・組織心理学が、仕事における人の心と行動の何を研究する分野かを説明できる
- 産業・組織心理学の始まりと、20世紀初頭にミュンスターバーグが果たした役割を説明できる
- 1919年から2019年までの100年間で、研究テーマがどのように変化してきたかを具体的に説明できる
要点
- 産業・組織心理学とは、仕事の現場における人の心と行動を、科学的な方法で研究する心理学の一分野のことです。
- この分野は、「産業・組織心理学の父」と呼ばれるミュンスターバーグの研究から始まり、1919年にはミッチェルが、心理学をさまざまな場面に応用する議論を初めて発表しました。
- 1919年から2019年までの研究動向を分析した論文によると、2000年代以降は「満足度」に関する語が研究の70%以上に登場するなど、研究テーマは時代とともに大きく変化してきました。
01産業・組織心理学とは何か
産業・組織心理学とは、仕事の現場における人の心と行動を、科学的な方法で研究する心理学の一分野のことです。
産業・組織心理学は、英語でWork and Organizational Psychology(WOP)と呼ばれます。2020年にFrontiers in Psychologyに発表された、ソット(Sott)らの論文によると、WOPとは「組織の雰囲気や文化、そして仕事をするチームの技能や成果を詳しく研究する心理学の一分野」のことです。
同じ論文は、産業心理学の定義として、ティフィン(Tiffin)とマコーミック(McCormick)による1975年の定義を引用し、「生産・分配・消費など、私たちの文明に関わる人間行動を研究する学問」としています。つまり、採用や配置など「個人と仕事の適性」を調べる側面と、職場の雰囲気やチームの働き方といった「組織全体」を調べる側面を合わせた分野だと言えます。
このレッスンでは、この分野がいつ始まり、どのように研究テーマを広げてきたかを、2本の査読論文から確認します。
02歴史の始まり。20世紀初頭の心理学者たち
産業・組織心理学は、「父」と呼ばれるミュンスターバーグの研究と、1919年のミッチェルによる議論から始まりました。
ソットらの論文によると、ミュンスターバーグ(Hugo Münsterberg)は「産業・組織心理学の父」と呼ばれ、仕事の現場における人間の行動について、最初の研究をおこなった人物だとされています。
さらに同じ論文では、1919年にミッチェルが、心理学をさまざまな場面に応用することについて、初めての議論を発表したと述べられています。この時期(1919〜1943年)は、まだ研究テーマの種類が少なく、組織の中での人の行動や、採用・配置といった「人事」に関わる問題が中心でした。
03第二次世界大戦と、研究テーマの広がり
1944年から1968年の時期には、性格検査が広く使われるようになり、「人間関係」も新しいテーマとして注目されました。
同じ論文によると、1944年から1968年の時期には、性格検査が、より効率的な人員選抜のために使われるようになりました。この検査が注目されたきっかけの一つが、第二次世界大戦中にアメリカ軍が性格検査を大規模に使用したことです。同じ時期には、「人間関係」も新しいテーマとして取り上げられるようになり、対人関係についての議論が広がりました。
続く1969年から1993年の時期には、学校教育など産業以外の組織を対象にした議論が増え、学校での集団療法(グループセラピー)の可能性についても論じられるようになりました。論文はこの時期に「性別」に関する議論も現れたと指摘しており、心理学のような「ケアに関わる専門職」が歴史的に女性に結びつけられてきたことと関連づけています。
04現在の産業・組織心理学は何を研究しているか
現在は、職務満足やリーダーシップ、チームの知的資本など、仕事に関わる幅広いテーマが研究されています。
ソットらの論文によると、1994年から2019年までの期間では、「満足度」に関する語が、分析した研究の70%以上に登場しました。この論文が分析対象としたのは、1919年から2019年10月11日までに発表された8,966件の論文です。
2023年にFrontiers in Psychologyに発表された、トレッドウェイ(Treadway)らの編集論文でも、リーダーシップ、集団の知的資本、イノベーション、職務満足とパフォーマンスといったテーマが、現在の産業・組織心理学の研究として取り上げられています。
次のレッスンからは、こうしたテーマのうち、職務満足、モチベーション、リーダーシップについて、具体的な研究データをもとに見ていきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
産業・組織心理学とは、仕事の現場における人の心と行動を、科学的な方法で研究する心理学の一分野のことです。
産業心理学とは、生産・分配・消費など、仕事に関わる場面での人間の行動を研究する学問のことです。
性格検査とは、人の性格の傾向を測定するための検査のことです。第二次世界大戦中にアメリカ軍で大規模に使われたことから注目されました。
出典
- Sott, M. K., Bender, M. S., Furstenau, L. B., Machado, L. M., Cobo, M. J., & Bragazzi, N. L. (2020). 100 Years of Scientific Evolution of Work and Organizational Psychology: A Bibliometric Network Analysis From 1919 to 2019. Frontiers in Psychology, 11, 598676.
- Treadway, D. C., Giorgi, G., & Thiel, M. (2023). Editorial: Insights in organizational psychology. Frontiers in Psychology.
LESSON 13-1 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 産業・組織心理学の説明として正しいものはどれですか。
- 仕事の現場における人の心と行動を、科学的な方法で研究する心理学の一分野
- 占いや性格診断を使って、人の将来を予測する学問
- 経営学の一分野で、心理学とは関係がない学問
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正解: 1. 仕事の現場における人の心と行動を、科学的な方法で研究する心理学の一分野
産業・組織心理学とは、仕事の現場における人の心と行動を、科学的な方法で研究する心理学の一分野のことです。
Q2. ソットらの2020年の論文で、「産業・組織心理学の父」と呼ばれているのは誰ですか。
- ミュンスターバーグ
- ミッチェル
- トレッドウェイ
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正解: 1. ミュンスターバーグ
同論文は、ミュンスターバーグを「産業・組織心理学の父」と呼び、仕事の現場における人間行動の最初の研究をおこなった人物として紹介しています。
Q3. 1944年から1968年の時期に、性格検査が広く使われるようになったきっかけとして論文が挙げているのは何ですか。
- 第二次世界大戦中にアメリカ軍が大規模に使用したこと
- インターネットが普及したこと
- 大学に心理学部が新設されたこと
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正解: 1. 第二次世界大戦中にアメリカ軍が大規模に使用したこと
同論文によると、この時期に性格検査が注目されたきっかけの一つは、第二次世界大戦中にアメリカ軍で性格検査が大規模に使われたことです。
レッスン13-1はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。