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第13章 仕事と組織の心理学 ・ レッスン13-2職務満足はどう測り、何に影響するか
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 職務満足とは何かを、研究で使われている定義にもとづいて説明できる
- 職務満足が、仕事の成果(パフォーマンス)とどのように関連しているかを、具体的な相関係数で説明できる
- 職務満足が、心身の健康とどの程度関連しているかを、大規模なメタ分析のデータで説明できる
要点
- 職務満足とは、自分の仕事や仕事での経験を評価した結果として生じる、心地よい感情の状態のことです。
- 2023年の実験研究によると、課題への満足度は後の作業成績に影響しましたが、その影響は課題を重ねるごとに小さくなり、逆に「成果をどう感じたか」が満足度に与える影響の方が、一貫して強く見られました。
- 2005年に発表された、485件の研究・のべ26万7995人分のデータを統合したメタ分析によると、職務満足度とバーンアウトの相関係数は0.478、抑うつとの相関係数は0.428でした。
01職務満足とは何か
職務満足とは、自分の仕事や仕事での経験を評価した結果として生じる、心地よい感情の状態のことです。
2023年にEurope's Journal of Psychologyに発表された、ドゥダショヴァ(Dudasova)らの論文は、職務満足を「仕事や組織に対する全般的な態度で、感情・認知、そして場合によっては行動の側面を含むもの」と説明しています。
同じ論文の実験では、職務満足を測る質問として、ハックマンとオールダム(Hackman & Oldham, 1974)が作成した「職務診断調査」の満足度尺度の短縮版が使われました。「この作業に満足している」といった3つの項目に、5段階(1:まったくそう思わない〜5:そう思う)で答えてもらう方法です。
このレッスンでは、この測定方法を使った実験と、大規模なメタ分析から、職務満足が何と関わっているかを確認します。
02職務満足と仕事の成果は、どちらが先に動くのか
満足度が後の成果に与える影響は課題を重ねるごとに小さくなり、「成果をどう感じたか」が満足度に与える影響の方が一貫して強く見られました。
ドゥダショヴァらの論文は、まず過去のメタ分析を紹介しています。1967年から1999年に発表された254件の研究を統合した、ジャッジ(Judge)らの2001年の分析では、満足度と成果の相関係数は-0.18〜0.86の範囲で、補正後の平均は0.30でした。1971年から2008年の48件の研究を統合した別の分析でも、相関係数の範囲は0.01〜0.71、補正後の平均は同じく0.30でした。
ドゥダショヴァらは、18〜30歳のチェコの成人143人を対象に、3つの作業課題を順番にやってもらう実験をおこないました。その結果、最初の課題への満足度は、その後の成果に影響しましたが、この影響は課題を重ねるごとに小さくなりました。一方、各課題の後に伝えられたフィードバックによって「どれだけうまくできたと感じたか」は、その後の満足度に一貫して影響していました。論文は、満足度と成果のあいだには両方向の影響があるものの、「成果の感じ方が満足度に与える影響のほうが、満足度が実際の成果に与える影響よりも強く支持された」と結論づけています。
03職務満足と心身の健康は、どの程度関連しているか
2005年のメタ分析によると、職務満足度は、バーンアウトや抑うつなど複数の健康指標と、中程度から強い関連を示しました。
2005年にOccupational and Environmental Medicineに発表された、ファラガー(Faragher)・キャス(Cass)・クーパー(Cooper)の論文は、職務満足度と健康に関する485件の研究、のべ26万7995人分のデータを統合したメタ分析です。
その結果、職務満足度とすべての健康指標を合わせた相関係数は、補正後で0.370でした。健康指標別では、バーンアウトとの相関係数が0.478、自己肯定感との相関係数が0.429、抑うつとの相関係数が0.428、不安との相関係数が0.420と、いずれも中程度から強い関連を示しました。本人が報告する身体的健康との相関係数は0.287で、メンタルヘルスに関する指標より弱い関連でした。
04職務満足はなぜ重要なのか
職務満足は、仕事の成果だけでなく、働く人の心身の健康にも関わるため、産業・組織心理学で重要な研究テーマになっています。
ここまで見たように、職務満足は、仕事の成果(パフォーマンス)や、バーンアウト・抑うつといった心身の健康と関連しています。ただし、どちらの研究でも、満足度は唯一の原因ではなく、複数の要因が影響し合う関係として示されています。
次のレッスンでは、こうした満足度やパフォーマンスの背景にある「働く意欲(モチベーション)」が、どのような仕組みで生まれるのかを見ていきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
職務満足とは、自分の仕事や仕事での経験を評価した結果として生じる、心地よい感情の状態のことです。
バーンアウトとは、仕事における強いストレスが続いた結果、心身が消耗してしまった状態のことです。
職務診断調査とは、仕事の特徴や、そこから生じる満足度などを測定するために開発された質問調査のことです。
EXAMPLES身近な例で深める
このレッスンの内容を、日常の疑問にあてはめた研究解説記事です。
出典
- Dudasova, L., Vaculik, M., Prochazka, J., Svitavska, P., & Patton, G. (2023). Causality of the Satisfaction-Performance Relationship: A Task Experiment. Europe's Journal of Psychology, 19(1), 48-66.
- Faragher, E., Cass, M., & Cooper, C. (2005). The relationship between job satisfaction and health: a meta-analysis. Occupational and Environmental Medicine, 62(2), 105-112.
LESSON 13-2 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 職務満足の説明として正しいものはどれですか。
- 自分の仕事や仕事での経験を評価した結果として生じる、心地よい感情の状態
- 給料の額だけで決まる、客観的な指標
- 性格検査によって測定される、変化しない個人の特性
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正解: 1. 自分の仕事や仕事での経験を評価した結果として生じる、心地よい感情の状態
職務満足とは、自分の仕事や仕事での経験を評価した結果として生じる、心地よい感情の状態のことです。
Q2. ドゥダショヴァらの2023年の実験で、満足度と成果の関係について、より強く支持された方向はどちらですか。
- 「成果をどう感じたか」が、その後の満足度に影響する方向
- 満足度が、その後の客観的な成果に影響する方向
- 両者にはまったく関連が見られなかった
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正解: 1. 「成果をどう感じたか」が、その後の満足度に影響する方向
この実験では両方向の影響が見られたものの、成果の感じ方が満足度に与える影響のほうが、満足度が実際の成果に与える影響よりも強く支持されました。
Q3. 2005年のファラガーらのメタ分析で、職務満足度ともっとも強い相関(0.478)を示した健康指標はどれですか。
- バーンアウト
- 本人が報告する身体的健康(相関係数0.287)
- 不安(相関係数0.420)
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正解: 1. バーンアウト
同じメタ分析では、職務満足度とバーンアウトの相関係数が0.478でもっとも高く、他の健康指標よりも強い関連を示しました。
レッスン13-2はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。