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第5章 感覚と知覚 ・ レッスン5-5耳はどうやって音を「聞く」に変えるのか。聴覚のしくみ
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-05
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. ミュラー・リヤー錯視について、正しいものはどれですか。
答えを見る
正解: 2. 矢羽根の向きだけで、同じ長さの線の見え方が変わる
線の長さは同じでも、矢羽根の向きによって長さの見え方が変わります。
Q2. 目に入った光が、網膜に像を結ぶまでに通る順番として正しいものはどれですか。
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正解: 2. 角膜→瞳孔→水晶体
光は角膜→瞳孔→水晶体の順に通り、網膜に像を結びます。
このレッスンの学習目標
- 音が外耳・中耳・内耳(蝸牛)の順に、どのように伝わるかを説明できる
- 蝸牛の中の有毛細胞が、振動をどのように電気信号に変えるかを説明できる
- 音の高さの違いが、蝸牛のどこで区別されるか(場所説)を説明できる
要点
- 聴覚とは、空気の振動である音を、耳が神経の電気信号に変えて脳に伝える感覚のことです。
- 音は、外耳と中耳を通って内耳の蝸牛に伝わり、蝸牛の中の有毛細胞が、その振動を電気信号に変換します。
- 音の高さの違いは、蝸牛の中の基底膜のどの場所が最も強く振動するかによって区別されており、この仕組みを場所説(トノトピー)と呼びます。
01音はどうやって内耳まで届くのか。外耳と中耳の働き
外耳が空気の振動である音を集めて鼓膜に伝え、中耳の耳小骨がその振動を、内耳の蝸牛まで機械的な振動として伝えています。
耳は、外耳・中耳・内耳という3つの部分からできています。外耳は、耳介と耳道からなり、空気を伝わってきた音の振動を集めて、鼓膜まで届ける働きをしています。
2011年に学術誌Nature Communicationsに発表されたレビュー論文によると、外耳道に入った空気の振動は、「きわめて特殊な器官」である中耳によって機械的な振動に変換されます。中耳では、鼓膜の振動が、耳小骨という小さな骨を通じて内耳の入り口まで伝わり、そこで圧力の波に変換されます。
この圧力の波が、次の段階で、渦巻き状の内耳の器官である蝸牛の中を伝わっていきます。
02蝸牛の中で、音はどうやって電気信号になるのか
蝸牛の中の有毛細胞は、基底膜の振動によって毛(有毛突起)が傾くと、イオンの通り道(イオンチャネル)が開き、振動を神経の電気信号に変換します。
同じ2011年のレビュー論文は、中耳から伝わった圧力の波が、蝸牛の中で周波数ごとの成分に分かれ、蝸牛の中にある基底膜という膜を振動させることを説明しています。
基底膜が振動すると、その上に並ぶ感覚細胞である有毛細胞の毛(有毛突起)が、上にある蓋のような膜(テクトリア膜)との結合によって、ずれるように傾きます。この傾きが、毛の根もとにある、カドヘリン23とプロトカドヘリン15という分子でできた「先端リンク」を引っぱり、機械的に開閉するイオンの通り道を開かせます。
イオンの通り道が開くと、カルシウムなどのイオンが細胞内に流れ込み、電気信号が生まれます。この信号が聴神経を通って脳に伝わることで、私たちは「音が聞こえた」と感じます。
03音の高さの違いは、どこで区別されるのか。場所説(トノトピー)
場所説(トノトピー)とは、基底膜のどの場所が最も強く振動するかによって、音の高さ(周波数)が区別されるという考え方のことです。
蝸牛の中の基底膜は、場所によって振動しやすい周波数が異なります。2013年に学術誌Acoustical Science and Technologyに発表されたレビュー論文によると、基底膜の渦巻きの奥側(頂部)は低い周波数に、入り口側(基部)は高い周波数に、最も強く反応します。
基底膜のそれぞれの場所には、最も強く反応する周波数である「特性周波数」が決まっており、この場所と周波数の対応関係を、トノトピーと呼びます。同じ論文によると、このトノトピーの並びは、蝸牛から聴神経、脳の聴覚皮質まで、聴覚の経路全体で保たれています。
04場所だけでは決まらない。時間的な情報との組み合わせ
音の高さは、基底膜のどこが振動するかという場所の情報だけでなく、聴神経が音の振動のタイミングに合わせて発火する時間的な情報も組み合わさって区別されています。
同じレビュー論文は、人が音の高さの違いに気づける範囲を、おおよそ30Hzから5000Hzの間としています。この範囲のうち、おおむね2〜4kHzまでは、聴神経が音の振動のタイミングに合わせて発火する「位相固定」という現象が見られます。
位相固定は、4〜5kHzを超えるあたりから弱くなり、同じ論文によると、ちょうどこのあたりから、人が音の高さの違いに気づきにくくなることも知られています。このことから、音の高さの知覚は、場所の情報だけでなく、神経の発火タイミングという時間の情報も組み合わさって成り立っていると考えられています。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
聴覚とは、空気の振動である音を、耳が電気信号に変えて脳に伝える感覚のことです。
蝸牛とは、内耳にある渦巻き状の器官で、音の振動を基底膜の振動に変える部位のことです。
有毛細胞とは、蝸牛の中にある感覚細胞で、基底膜の振動を神経の電気信号に変換する細胞のことです。
基底膜とは、蝸牛の中にある膜で、音の周波数によって最も強く振動する場所が異なる膜のことです。
トノトピーとは、基底膜のどの場所がどの周波数に最も強く反応するかという、場所と周波数の対応関係のことです。
位相固定とは、聴神経が音の振動のタイミングに合わせて発火する現象のことです。
出典
- Peng, A. W., Salles, F. T., Pan, B., & Ricci, A. J. (2011). Integrating the biophysical and molecular mechanisms of auditory hair cell mechanotransduction. Nature Communications, 2, 523.
- Oxenham, A. J. (2013). Revisiting place and temporal theories of pitch. Acoustical Science and Technology, 34(6), 388-396.
LESSON 5-5 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. 音が耳に入ってから蝸牛に伝わるまでの順序として、正しいものはどれですか。
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正解: 1. 外耳→中耳→内耳(蝸牛)の順に伝わる
音は、外耳で集められ、中耳の鼓膜と耳小骨を通って、内耳の蝸牛まで伝わります。
Q2. 有毛細胞が、基底膜の振動を電気信号に変える仕組みとして、最も適切なものはどれですか。
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正解: 1. 毛(有毛突起)が傾くことでイオンの通り道が開き、イオンが流れ込むことで電気信号が生まれる
有毛細胞は、毛(有毛突起)が傾くことでイオンの通り道が開き、イオンが流れ込むことで電気信号を生み出します。
Q3. トノトピー(場所説)が示すこととして、最も適切なものはどれですか。
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正解: 1. 基底膜のどの場所が強く振動するかによって、音の高さが区別される
トノトピーとは、基底膜の場所ごとに最も強く反応する周波数が異なり、その場所によって音の高さが区別されるという考え方です。
レッスン5-5はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。