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第6章 学習 ・ レッスン6-1

学習とは何か。古典的条件づけとパブロフの実験

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02

このレッスンの学習目標

要点

  1. 学習とは、経験によって、行動や反応の仕方が変化することです。
  2. 古典的条件づけとは、もともと関係のない刺激を繰り返し対にすることで、新しい反応を学習する仕組みのことです。
  3. ロシアの生理学者パブロフは、メトロノームの音と食物を対にして犬に与える実験から、この仕組みを発見しました。

01学習とは何か

心理学における学習とは、経験によって、行動や反応の仕方が変化することです。

心理学でいう学習とは、経験によって、行動や反応の仕方が変化することを指します。勉強して知識が増えることも、しつけによって行動が変わることも、学習のひとつです。

2026年に学術誌npj Science of Learningに発表された論文によると、学習という言葉には50以上もの異なる定義があり、研究者によって少しずつとらえ方が違います。それでも共通しているのは、経験によって、その後の行動や反応の仕方が変わるという点です。

心理学では、学習の仕組みを理解するために、まず「古典的条件づけ」と呼ばれる、もっとも基本的な学習の形から研究が始まりました。この章では、古典的条件づけから、学習の仕組みを順番に見ていきます。

02古典的条件づけとは何か。パブロフの発見

古典的条件づけとは、もともと関係のない刺激を繰り返し対にすることで、新しい反応を学習する仕組みのことです。

古典的条件づけの研究は、ロシアの生理学者イワン・パブロフ(1849〜1936年)から始まりました。パブロフはもともと心理学者ではなく、消化のしくみを研究する生理学者でした。

2022年に学術誌Arquivos de Neuro-Psiquiatriaに発表された論文によると、パブロフは1904年に、消化の生理学に関する研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しています。条件反射の研究で知られるようになったのは、その後のことです。

パブロフは、犬に食物を与える前から、犬が唾液を出し始めることに気づきました。足音や食器の音など、食物とは直接関係のない刺激にも、犬が反応するようになっていたのです。この観察から、パブロフは、もともと関係のない刺激が学習によって反応を引き起こすようになる仕組みを調べる実験を始めました。

03パブロフの実験の仕組み。無条件刺激と条件刺激

パブロフの実験では、メトロノームの音(条件刺激)と食物(無条件刺激)を繰り返し対にすることで、音だけで唾液が出るようになりました。

2005年に学術誌Physiology & Behaviorに発表された論文によると、パブロフの実験の基本的な形は、メトロノームの音を、食物を与える直前に鳴らすというものでした。

食物は、もともと唾液という反応を引き起こします。これは学習しなくても起こる、生まれつきの反応で、無条件反応と呼ばれます。食物のように、学習しなくてもその反応を引き起こす刺激のことは、無条件刺激と呼ばれます。一方、メトロノームの音は、もともと唾液とは関係のない、ただの音でした。

ところが、メトロノームの音と食物を繰り返し対にして与えると、犬はメトロノームの音だけで唾液や胃液を出すようになりました。この、学習によって新しく身についた反応のことを条件反応と呼び、それを引き起こすようになった音のほうは条件刺激と呼ばれます。

04古典的条件づけからわかること

古典的条件づけは、感情や生理反応が、直接経験していない刺激とも結びついて学習されることを示しています。

2018年に学術誌Psychologica Belgicaに発表された論文によると、古典的条件づけの考え方は、唾液や胃液のような生理反応だけでなく、好き嫌いの感情や、恐怖反応の学習にも応用されています。

たとえば、特定の音や場所と怖い経験が結びつくことで、その音や場所に対して不安を感じるようになることがあります。これも、パブロフが見つけた条件づけという仕組みの一種です。

次のレッスンでは、古典的条件づけとは違うタイプの学習である、オペラント条件づけについて学びます。オペラント条件づけは、刺激ではなく、自分の行動の結果によって学習が起こる仕組みです。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

学習Learning

学習とは、経験によって、行動や反応の仕方が変化することです。

古典的条件づけClassical conditioning

古典的条件づけとは、もともと関係のない刺激を繰り返し対にすることで、新しい反応を学習する仕組みのことです。

無条件刺激Unconditioned stimulus

無条件刺激とは、学習しなくても、もとから特定の反応を引き起こす刺激のことです。

無条件反応Unconditioned response

無条件反応とは、無条件刺激によって、学習しなくても起こる反応のことです。

条件刺激Conditioned stimulus

条件刺激とは、もともとは特定の反応と関係がなかったが、学習によって反応を引き起こすようになった刺激のことです。

条件反応Conditioned response

条件反応とは、条件刺激によって、学習の結果として起こるようになった反応のことです。

出典

  1. Rozo, J. A., Palacios-Sánchez, L., & Pérez-Acosta, A. M. (2022). Ivan Petrovich Pavlov and Santiago Ramón y Cajal, scientists and Nobel laureates of a new century. Arquivos de Neuro-Psiquiatria, 80(6).
  2. Holland, P. C., & Petrovich, G. D. (2005). A neural systems analysis of the potentiation of feeding by conditioned stimuli. Physiology & Behavior, 86(5), 747-761.
  3. Eelen, P. (2018). Classical conditioning: Classical yet modern. Psychologica Belgica, 58(1), 196-211.
  4. Lövdén, M., Hansson, I., & Voits, T. (2026). Learning: One definition to rule them all? npj Science of Learning, 11, 45.

LESSON 6-1 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. パブロフが実験で、食物を与える直前に鳴らした中性の刺激は何でしたか。
  1. メトロノームの音
  2. 犬の鳴き声
  3. 赤い光
答えを見る

正解: 1. メトロノームの音
パブロフの実験では、メトロノームの音を条件刺激として使い、食物を与える直前に鳴らしました。

Q2. 無条件刺激とは何ですか。
  1. 学習によって新しく反応を引き起こすようになった刺激
  2. 学習しなくても、もとから特定の反応を引き起こす刺激
  3. 何の反応も引き起こさない刺激
答えを見る

正解: 2. 学習しなくても、もとから特定の反応を引き起こす刺激
無条件刺激は、食物のように、学習しなくても、もとから反応(唾液など)を引き起こす刺激です。

Q3. パブロフが1904年にノーベル賞を受賞した対象分野はどれですか。
  1. 条件反射の研究
  2. 消化の生理学の研究
  3. 心理療法の研究
答えを見る

正解: 2. 消化の生理学の研究
パブロフは1904年、条件反射ではなく、消化の生理学の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。条件反射の研究で知られるようになったのはその後です。

レッスン6-1はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第6章 学習 のレッスン一覧
  1. 6-1古典的条件づけ
  2. 6-2オペラント条件づけ
  3. 6-3強化と罰
  4. 6-4観察学習
  5. 6-5学習性無力感

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