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第7章 思考と知能 ・ レッスン7-5言語とは何か。乳児の学習と臨界期の研究から
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-06
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. フリンが1984年に報告した、1932年から1978年の間の平均IQの変化はどれですか。
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正解: 1. 13.8ポイント上昇した
フリンは、1932年から1978年までの46年間で、平均IQが13.8ポイント上昇していたと報告しました。
Q2. トヴェルスキーとカーネマンのルーレット実験で、65で止まった参加者の推定値の中央値はどれでしたか。
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正解: 2. 45%
ルーレットが65で止まった参加者の推定値の中央値は45%でした。
このレッスンの学習目標
- 言語とは何かを、音韻・統語・意味という構成要素とともに説明できる
- 新生児を対象にした実験から、言語の学習が胎児期から始まっていることを説明できる
- 臨界期という考え方を、手話の習得研究を例に説明できる
要点
- 言語とは、音の並びに意味を対応させ、規則(文法)で組み合わせることで、無限に近い数の文を作れる、人に特有の記号の体系のことです。
- 新生児を対象にした実験から、言語の学習はすでに生まれる前の胎児期から始まっていることがわかっています。
- 子ども時代に言語に触れる機会が極端に少ないと、その後どれだけ学んでも、文法を使いこなす力が十分に育たない「臨界期」があると考えられています。
01言語とは何か
言語とは、音の並びに意味を対応させ、一定の規則(文法)で組み合わせることで、無限に近い数の文を作り出せる、人に特有の記号の体系のことです。
言語とは、音の並びに意味を結びつけ、一定の規則(文法)で組み合わせることで、無限に近い数の文を作り出せる、人に特有の記号の体系のことです。限られた音の種類と規則の組み合わせだけで、誰も言ったことのない文を作ったり理解したりできるのが、言語の大きな特徴です。
2018年に学術誌Bilingualism: Language and Cognitionに発表されたメイベリーとクルエンダーの論文によると、人には言語を学ぶ力が生まれつき備わっていますが、その力がどれだけ発揮されるかは、人生のごく初期にどれだけ言語に触れたかに大きく左右されるとされています。
この章では、言語の学習がいつから始まるのか、そして子ども時代のうちに言語に触れないとどうなるのかを、具体的な研究から見ていきます。
02言語の学習はいつから始まるのか
言語の学習は、生まれる前の胎児期からすでに始まっており、新生児は母親の言語の音にある程度親しんでいることが、実験で示されています。
2013年に学術誌Acta Paediatricaに発表されたムーン、ラガークランツ、クールの研究では、アメリカとスウェーデンで生まれたばかりの新生児80人(生後平均32.8時間)を対象に、おしゃぶりを吸う回数で、聞かせた母音への関心を測定する実験が行われました。
新生児に、自分が生まれた国の言語の母音(アメリカなら英語の/i/、スウェーデンならスウェーデン語の/y/)か、もう一方の言語の母音を聞かせたところ、聞き慣れない言語の母音を聞いた新生児の方が、平均吸引回数が7.1回と、聞き慣れた言語の母音を聞いた新生児の6.5回より多くなりました。
この差は生まれてからの経過時間とは関係がなく、研究者らは、胎児期に子宮の中で聞いていた母親の言語の音が、すでに新生児の母音の聞き取り方に影響を与えていると結論づけています。言語の学習は、生まれた瞬間ではなく、おなかの中にいるときから始まっているといえます。
03言語の習得に臨界期はあるのか
子ども時代に言語に触れる機会が極端に少ないと、その後どれだけ学んでも、文法を使いこなす力が十分に育たないことが、手話を学んだ人の研究からわかっています。
2018年に学術誌Bilingualism: Language and Cognitionに発表されたメイベリーとクルエンダーの論文によると、言語の学習には「臨界期」、つまり子ども時代のうちに言語に触れないと、その後の学習能力そのものが低下してしまう時期があるとされています。
同論文が紹介する事例では、21歳で初めてアメリカ手話(ASL)を学び始め、その後30年間使い続けた人でも、文法(統語)や語形変化(形態)を扱う力には限界が残ったと報告されています。
同論文は、子ども時代に言語に触れずに育った聴覚障害者では、脳の中で言語に関わる神経線維の髄鞘化(ミエリン化)が十分に進んでおらず、それが複雑な文を理解する難しさと結びついていることも報告しています。子ども時代の言語経験は、脳の発達そのものに影響するといえます。
04臨界期は何歳までなのか
臨界期が何歳まで続くかについては、研究によって12歳から20歳までと見解が分かれており、まだはっきりとは決まっていません。
同じメイベリーとクルエンダーの2018年の論文は、これまでの第二言語習得の研究を比較し、臨界期が終わるとされる年齢が、12歳とする研究から20歳とする研究まで、研究ごとに大きく異なることを指摘しています。
同論文が紹介する、ジョンソンとニューポートの1989年の研究を後年に再分析した研究では、言語の習得を始めた年齢と最終的な言語能力の関係を、直線的な関係で説明すると差の39.25%、曲線的な関係で説明すると63.1%を説明できたとされています。
つまり、臨界期という考え方自体は多くの研究で支持されているものの、何歳までを「臨界期」と呼ぶべきかについては、心理学の中でもまだ意見が分かれている段階だといえます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
言語とは、音の並びに意味を対応させ、一定の規則(文法)で組み合わせることで、無限に近い数の文を作り出せる、人に特有の記号の体系のことです。
臨界期とは、子ども時代のうちに特定の経験(ここでは言語)をしないと、その後どれだけ学んでも能力が十分に育たなくなる、発達上の限られた時期のことです。
統語とは、語をどの順序でどう組み合わせて文を作るかを決める、文法上の規則のことです。
ミエリン化とは、神経線維の周りにミエリンという膜が巻きつき、電気信号が伝わる速さを高める過程のことです。
出典
- Moon, C., Lagercrantz, H., & Kuhl, P. K. (2013). Language experienced in utero affects vowel perception after birth: a two-country study. Acta Paediatrica, 102(2), 156-160.
- Mayberry, R. I., & Kluender, R. (2018). Rethinking the critical period for language: New insights into an old question from American Sign Language. Bilingualism: Language and Cognition, 21(5), 938-944.
LESSON 7-5 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. 言語の定義として正しいものはどれですか。
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正解: 1. 音の並びに意味を対応させ、規則で組み合わせて文を作る、人に特有の記号の体系
言語とは、音の並びに意味を対応させ、規則(文法)で組み合わせることで、無限に近い数の文を作れる、人に特有の記号の体系のことです。
Q2. ムーンらの実験で、新生児が聞き慣れない言語の母音を聞いたときの平均吸引回数はどれでしたか。
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正解: 2. 7.1回
聞き慣れない言語の母音を聞いた新生児の平均吸引回数は7.1回で、聞き慣れた言語の母音を聞いた新生児の6.5回より多くなりました。
Q3. メイベリーとクルエンダーの論文が紹介する、21歳で初めてアメリカ手話を学び始めた人について正しいのはどれですか。
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正解: 2. 30年間使い続けても、文法や語形変化を扱う力には限界が残った
この事例では、30年間アメリカ手話を使い続けても、文法(統語)や語形変化(形態)を扱う力には限界が残ったと報告されています。
レッスン7-5はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。