HOME / 日常の心理学 / 講座 / 第6章 学習 / 学習性無力感

第6章 学習 ・ レッスン6-5

学習性無力感とは何か。セリグマンの実験からわかること

読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02

このレッスンの学習目標

要点

  1. 学習性無力感とは、自分の行動では結果を変えられないという経験を繰り返した結果、行動すれば結果を変えられる新しい場面でも、行動しなくなることです。
  2. 心理学者セリグマンとマイヤーは、1967年、犬に電気ショックを与える実験から、この現象を発見しました。
  3. ショックを止められなかった犬は、その後、逃げられる場面になっても、3分の2が逃げようとしませんでした。

01学習性無力感とは何か

学習性無力感とは、自分の行動では結果を変えられないという経験を繰り返した結果、行動すれば逃げられる場面でも、行動しなくなることです。

2016年に学術誌Psychological Reviewに発表された論文によると、学習性無力感とは、自分が何をしても結果(たとえば電気ショックが止まるかどうか)が変わらないという経験を重ねた動物が、その後、行動すれば結果を変えられる新しい場面でも、行動しようとしなくなる現象のことです。

この現象を最初に示したのは、心理学者マーティン・セリグマンとスティーブン・マイヤーです。2人は1967年、犬を使った実験から、この現象を発見しました。

02セリグマンの実験。電気ショックと犬

セリグマンらの実験では、犬をハンモックに固定し、電気ショックを64回与え、逃げられる群と逃げられない群を比較しました。

同じ論文によると、セリグマンとマイヤーの1967年の実験では、犬をハンモックに固定し、後ろ足に中程度の電気ショックを64回与えました。それぞれのショックの前には、トーン音(合図)が鳴らされました。

犬は2つの群に分けられました。一方は、鼻でパネルを押すとショックを止められる(統制できる)群で、もう一方は、何をしてもショックが止まらない(統制できない)群でした。

03統制できる群とできない群の違い

統制できないショックを受けた犬は、その後、逃げられる新しい場面になっても、3分の2が逃げようとしませんでした。

同じ論文によると、24時間後、すべての犬は、低い障壁を飛び越えればショックから逃げられる「シャトルボックス」という装置でテストされました。

ショックを止められた(統制できた)群では、90%の犬が、簡単に逃げる方法を学びました。これは、ショックを経験していない群と同じくらいの割合でした。

一方、ショックを止められなかった(統制できなかった)群では、3分の2の犬が、逃げられる場面になっても、逃げようとしませんでした。ショックそのものの強さや量は同じでも、自分の行動で結果を変えられた経験があるかどうかで、その後の行動が大きく変わったのです。

04学習性無力感からわかること

学習性無力感は、結果を変えられないという経験そのものが、その後の行動する意欲に影響することを示しています。

同じ論文によると、学習性無力感は、動物が「自分の行動の有無にかかわらず、結果が変わらない」ということを学習し、その学習が、新しい場面でも行動しようとする意欲を弱めることで起こると説明されています。

この考え方は、その後、うつ病の動物モデルとしての研究にも応用されてきました。ただし、2021年に学術誌PLOS ONEに発表された論文によると、このモデルは、うつ病のすべての症状(たとえば、喜びを感じにくくなる無快感症)を十分に再現できているわけではないことも指摘されています。心の不調については、この講座のあとの章でくわしく学びます。

この章では、古典的条件づけ、オペラント条件づけ、観察学習、学習性無力感という、4つの学習の仕組みを学びました。次の章では、記憶の仕組みについて学んでいきます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

学習性無力感Learned helplessness

学習性無力感とは、自分の行動では結果を変えられないという経験を繰り返した結果、行動すれば結果を変えられる新しい場面でも、行動しようとしなくなることです。

統制可能性Controllability

統制可能性とは、自分の行動によって、受ける結果(刺激)を変えられるかどうかということです。

シャトルボックスShuttle box

シャトルボックスとは、低い障壁を飛び越えることで、電気ショックなどの刺激から逃げられるかどうかを調べる実験装置のことです。

出典

  1. Maier, S. F., & Seligman, M. E. P. (2016). Learned helplessness at fifty: Insights from neuroscience. Psychological Review, 123(4), 349-367.
  2. Song, X., & Vilares, I. (2021). Assessing the relationship between the human learned helplessness depression model and anhedonia. PLOS ONE, 16(3), e0249056.

LESSON 6-5 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. セリグマンとマイヤーの実験で、犬に与えられた電気ショックは何回でしたか。
  1. 24回
  2. 64回
  3. 100回
答えを見る

正解: 2. 64回
犬には、後ろ足に中程度の電気ショックが64回与えられました。

Q2. 統制できないショックを受けた犬は、その後のテストでどうなりましたか。
  1. 90%が簡単に逃げる方法を学んだ
  2. 3分の2が逃げようとしなかった
  3. 全員がすぐに逃げ方を学んだ
答えを見る

正解: 2. 3分の2が逃げようとしなかった
統制できないショックを受けた群では、3分の2の犬が、逃げられる場面でも逃げようとしませんでした。

Q3. 学習性無力感とは何ですか。
  1. 結果を変えられない経験を繰り返した結果、行動すれば変えられる場面でも行動しなくなること
  2. 刺激と刺激を対にして新しい反応を学習すること
  3. 他人の行動を観察して新しい行動を身につけること
答えを見る

正解: 1. 結果を変えられない経験を繰り返した結果、行動すれば変えられる場面でも行動しなくなること
学習性無力感は、結果を変えられないという経験によって、新しい場面でも行動しようとしなくなる現象です。

レッスン6-5はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第6章 学習 のレッスン一覧
  1. 6-1古典的条件づけ
  2. 6-2オペラント条件づけ
  3. 6-3強化と罰
  4. 6-4観察学習
  5. 6-5学習性無力感

講座の目次(全16章)へ