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第15章 心の不調を理解する ・ レッスン15-3うつ病とは何か。抑うつ障害の症状と頻度
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- うつ病の診断に必要な症状と期間を、DSM-IVの基準から説明できる
- うつ病の生涯有病率について、日本を含む国際比較データを挙げて説明できる
- うつ病の有病率に見られる男女差を、データを挙げて説明できる
要点
- うつ病(抑うつ障害)とは、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失を中心とする5つ以上の症状が、2週間以上続いている状態のことです。
- 世界精神保健調査によると、うつ病の生涯有病率は国によって大きく異なり、日本は6.6%、アメリカは19.2%と報告されています。
- うつ病は、女性が男性のおよそ2倍診断されやすいことが、国をまたいだ調査で一貫して確認されています。
01うつ病とは何か
うつ病とは、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失を中心とする5つ以上の症状が、2週間以上続いている状態のことです。
気分が落ち込むことは、誰にでもあります。しかし、その状態が長く続き、日常生活に支障をきたすようになると、うつ病(抑うつ障害)という心の不調にあたる場合があります。イギリスの医学誌BMJに2002年に掲載されたピヴェラーらの総説論文によると、うつ病の中心となる症状は、持続的で広範囲にわたる気分の落ち込みと、普段の活動への興味や喜びの喪失の2つです。
同じ論文は、DSM-第4版(DSM-IV)の基準として、これら2つを含む5つ以上の症状が、同じ2週間のあいだに、それまでとは違う状態として現れることを診断の条件に挙げています。症状には、睡眠や食欲の変化、疲れやすさ、集中力の低下、自分を責める気持ちなどが含まれます。
02うつ病はどれくらい多いのか
うつ病の生涯有病率は国によって差があり、世界精神保健調査では日本が6.6%、アメリカが19.2%と報告されています。
アメリカの社会学者ケスラーと、精神科医ブロメットが2013年に専門誌Annual Review of Public Healthに発表した総説論文は、世界保健機関(WHO)が各国で行った世界精神保健調査のデータをまとめています。それによると、うつ病エピソードの生涯有病率は、日本が6.6%であるのに対し、アメリカは19.2%、ブラジルのサンパウロは18.4%と、国によって大きく異なっていました。日本の12か月有病率は2.2%と報告されています。
国際的な傾向をより広くまとめた研究もあります。2018年にリムらが専門誌Scientific Reportsに発表した、30か国・111万人以上を対象にしたメタ分析によると、うつ病の生涯有病率は世界全体でおよそ10.8%、直近1年の有病率はおよそ7.2%と推定されています。
03うつ病には、誰がかかりやすいのか
うつ病は、女性が男性のおよそ2倍診断されやすく、発症年齢の中央値は20代半ばごろとされています。
ケスラーとブロメットの総説論文は、世界精神保健調査において、女性が男性のおよそ2倍、うつ病エピソードと診断されやすいと報告しています。この男女差は、調査した国の多くで一貫して見られました。リムらのメタ分析でも、女性の有病率(14.4%)は男性(11.5%)より高く、同様の傾向が確認されています。
発症する年齢にも特徴があります。ケスラーとブロメットの論文によると、うつ病エピソードが最初に起こる年齢の中央値は、多くの国でおおむね20代半ばでした。また同論文は、世界保健機関が、うつ病を世界で4番目に大きい障害の原因とみなし、2020年までに2番目になると予測していたことも紹介しています。放っておくと再発しやすいことも、うつ病の特徴の1つです。
うつ病は、誰にでも起こりうる身近な心の不調であると同時に、原因や経過には個人差があります。次のレッスンでは、心の不調の中でも症状が大きく異なる統合失調症について見ていきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
うつ病(抑うつ障害)とは、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失を中心とする症状が、2週間以上続いている心の不調のことです。
抑うつエピソードとは、うつ病の診断の基準となる、一定期間続く抑うつ症状のまとまりのことです。
アンヘドニアとは、以前は楽しめていた活動に、興味や喜びを感じられなくなる状態のことです。
出典
- Peveler, R., Carson, A., & Rodin, G. (2002) “Depression in Medical Patients,” BMJ, 325(7356), 149–152.
- Kessler, R.C. & Bromet, E.J. (2013) “The Epidemiology of Depression Across Cultures,” Annual Review of Public Health, 34, 119–138.
- Lim, G.Y. et al. (2018) “Prevalence of Depression in the Community from 30 Countries between 1994 and 2014,” Scientific Reports, 8, 2861.
LESSON 15-3 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. ピヴェラーらの論文によると、うつ病の診断の中心となる2つの症状は何か。
- 持続的な気分の落ち込みと、興味・喜びの喪失
- 不眠と食欲の増加
- 集中力の低下と疲労感
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正解: 1. 持続的な気分の落ち込みと、興味・喜びの喪失
同論文は、持続的で広範囲にわたる気分の落ち込みと、興味・喜びの喪失を、うつ病の2つの中心症状としています。
Q2. ケスラーとブロメットの論文によると、世界精神保健調査でのうつ病の生涯有病率は、日本とアメリカでどう異なるか。
- 日本が6.6%、アメリカが19.2%で、国によって大きな差がある
- 日本もアメリカも、ほぼ同じ20%前後である
- 日本の方がアメリカより高い
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正解: 1. 日本が6.6%、アメリカが19.2%で、国によって大きな差がある
同論文は、世界精神保健調査のデータから、日本6.6%、アメリカ19.2%という、国による大きな差を報告しています。
Q3. うつ病の有病率について、研究で一貫して報告されている男女差はどのようなものか。
- 女性は男性のおよそ2倍、うつ病と診断されやすい
- 男性は女性のおよそ2倍、うつ病と診断されやすい
- 男女差はほとんど見られない
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正解: 1. 女性は男性のおよそ2倍、うつ病と診断されやすい
ケスラーとブロメットの論文、リムらのメタ分析のどちらも、女性の方が男性よりうつ病の有病率が高いと報告しています。
レッスン15-3はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。