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第15章 心の不調を理解する ・ レッスン15-4統合失調症とは何か。陽性症状と陰性症状
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 統合失調症の陽性症状と陰性症状を、具体例とともに説明できる
- 統合失調症の有病率について、「100人に1人」という通説と研究データの違いを説明できる
- 陰性症状が、治療や生活にどう影響するかを説明できる
要点
- 統合失調症とは、幻覚や妄想などの陽性症状と、意欲や感情表現の低下などの陰性症状を特徴とする心の不調のことです。
- 2005年の系統的レビューによると、統合失調症の生涯有病率はおよそ1000人に4人で、「100人に1人」という通説は過大評価です。
- 陰性症状は、陽性症状と違って自然には改善しにくく、生活の質や社会参加に大きな影響を与えると報告されています。
01統合失調症とは何か
統合失調症とは、幻覚や妄想などの陽性症状と、意欲や感情表現の低下などの陰性症状を特徴とする心の不調のことです。
統合失調症(schizophrenia)は、現実の受け止め方や、考えをまとめる力に影響が出る心の不調です。オーストラリア・クイーンズランド大学のサハらが2005年に専門誌PLoS Medicineに発表した系統的レビューは、統合失調症を、幻覚、妄想、まとまりのない言動、計画を立てる力の低下、感情表現の乏しさなどを特徴とする、生活に支障をきたす脳の不調の集まりと説明しています。発症の時期は、成人期の早い段階であることが多いとされています。
統合失調症の症状は、大きく2つに分けられます。2021年に専門誌Frontiers in Psychiatryに発表された、モソロフとヤルトンスカヤの総説論文によると、幻覚や妄想のように、通常にはない体験や言動が加わる症状は陽性症状、意欲の低下(無為)・感情表現の乏しさ・会話の乏しさ・対人関係からの引きこもり・楽しみを感じにくいことのように、通常の機能が失われる症状は陰性症状と呼ばれます。
02統合失調症はどれくらい多いのか
統合失調症の生涯有病率は、1000人あたり4人ほどで、「100人に1人」という通説は過大評価です。
統合失調症については、「100人に1人がかかる」という話を聞いたことがあるかもしれません。しかしサハらの系統的レビューは、1965年から2002年までに発表された研究をまとめ、この数字が過大評価であることを示しました。論文によると、生涯のうちに一度でも統合失調症と診断される割合(生涯有病率)の中央値は、1000人あたり4.0人でした。もっとも幅広い「生涯のリスク」を示す指標でも、1000人あたり7.2人にとどまっています。
論文は、「100人に1人」という通説は、この生涯リスクの数字を誤って広めたものだと考えられるとし、より正確には1000人あたり7〜8人ほどと表現すべきだと述べています。また、男女のあいだで有病率に統計的に意味のある差は見られなかったことも報告されています。一方で、移民の人は、その国で生まれ育った人と比べて、統合失調症の有病率が高い傾向にあることも報告されています。
03陰性症状は見過ごされやすく、改善しにくい
陰性症状は、陽性症状と違って自然には改善しにくく、生活の質や社会参加に大きな影響を与えると報告されています。
モソロフとヤルトンスカヤの総説論文は、陰性症状が、陽性症状に比べて目立ちにくいものの、本人の生活への影響は大きいと指摘しています。論文によると、陰性症状は日常生活での機能、対人関係、仕事に支障をもたらし、陽性症状のように自然に軽くなることが少なく、治療にも反応しにくいとされています。
統合失調症という心の不調は、幻覚や妄想といった目立つ症状だけでなく、意欲や感情表現の乏しさのように、気づかれにくい症状も含めて理解することが大切です。次のレッスンでは、心の不調への偏見(スティグマ)について見ていきます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
統合失調症とは、幻覚や妄想などの陽性症状と、意欲や感情表現の低下などの陰性症状を特徴とする心の不調のことです。
陽性症状とは、幻覚や妄想のように、通常にはない体験や言動が加わる形で現れる症状のことです。
陰性症状とは、意欲の低下や感情表現の乏しさのように、通常の機能が失われる形で現れる症状のことです。
出典
LESSON 15-4 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 幻覚や妄想のように、通常にはない体験や言動が加わる形で現れる症状は何と呼ばれるか。
- 陽性症状
- 陰性症状
- 離脱症状
答えを見る
正解: 1. 陽性症状
モソロフとヤルトンスカヤの論文によると、通常にはない体験や言動が加わる症状は陽性症状と呼ばれます。
Q2. サハらの系統的レビューによると、統合失調症の生涯有病率の中央値はどれくらいか。
- 1000人あたり4.0人
- 100人あたり1人
- 1000人あたり100人
答えを見る
正解: 1. 1000人あたり4.0人
同論文は、「100人に1人」という通説は過大評価であり、実際の生涯有病率の中央値は1000人あたり4.0人だと報告しています。
Q3. モソロフとヤルトンスカヤの論文によると、陰性症状について正しいのはどれか。
- 陽性症状と違って自然には改善しにくく、治療にも反応しにくい
- 陽性症状よりも目立ちやすく、見過ごされにくい
- 生活の質や社会参加にはほとんど影響しない
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正解: 1. 陽性症状と違って自然には改善しにくく、治療にも反応しにくい
同論文は、陰性症状が自然には改善しにくく、治療にも反応しにくいと報告しています。
レッスン15-4はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。