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第15章 心の不調を理解する ・ レッスン15-5心の不調への偏見(スティグマ)とは何か
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 公衆のスティグマとセルフスティグマの違いを説明できる
- ステレオタイプ・偏見・差別という3つの段階を説明できる
- 国際調査のデータから、統合失調症のある人がどのような差別を経験しているかを説明できる
要点
- スティグマとは、心の不調がある人に向けられる否定的な思い込みと、それにもとづく差別的な扱いのことです。
- スティグマには、社会全体が向ける公衆のスティグマと、本人が自分自身に向けてしまうセルフスティグマの2種類があります。
- 29か国・807人を対象にした国際調査では、統合失調症のある人のおよそ73%が診断を隠したいと感じ、半数近くが友人や家族との関係で差別を経験したと報告しています。
01スティグマとは何か
スティグマとは、心の不調がある人に向けられる否定的な思い込みと、それにもとづく差別的な扱いのことです。
心の不調は、身近でありふれているにもかかわらず、周囲からの偏見や誤解にさらされやすいという特徴があります。アメリカの心理学者コリガンとワトソンが2002年に専門誌World Psychiatryに発表した論文は、このような偏見をスティグマと呼び、社会全体が心の不調がある人に向ける反応である公衆のスティグマと、心の不調がある人自身が自分に対して向けてしまう偏見であるセルフスティグマの2つに分けて説明しています。
同じ論文によると、スティグマはステレオタイプ・偏見・差別という3つの段階で進みます。まず、「心の不調がある人は危険だ」といった思い込み(ステレオタイプ)が生まれ、それに同意し恐れや怒りの感情が伴うと偏見になります。そして、その人を避けたり、仕事や住まいの機会を与えなかったりする行動に表れると、差別になります。論文は、セルフスティグマと周囲から拒まれることへの恐れが、本人が仕事や人間関係の機会を自ら避けてしまう原因にもなると指摘しています。
02スティグマは、どのような形で現れるのか
29か国・807人を対象にした国際調査では、統合失調症のある人のおよそ73%が診断を隠したいと感じていました。
スティグマが実際にどれほどの影響を与えているかを示す、国際的な調査もあります。グロンホルムらが2023年に専門誌Epidemiology and Psychiatric Sciencesに発表した研究は、29か国の統合失調症のある人807人を対象に、差別と偏見を測る尺度(DISC-10)を使って調査しました。その結果、友人との関係で差別を経験したと答えた人はおよそ47%、家族との関係ではおよそ42%にのぼりました。
さらに、調査対象者のおよそ73%が、自分の診断を周囲に隠したいと感じていました。また、半数以上の人が、差別を恐れて、日常のさまざまな場面で自ら行動を控えていたことも報告されています。これらのデータは、心の不調そのものだけでなく、周囲の偏見もまた、本人の生活に大きな影響を与えていることを示しています。
03スティグマを減らすために何ができるか
コリガンとワトソンの論文は、抗議・教育・接触という3つの方法が、スティグマを減らすのに役立つと報告しています。
コリガンとワトソンの論文は、スティグマを減らす方法として、抗議・教育・接触の3つを挙げています。抗議は、心の不調を誤って伝えるメディアの表現などに対して、やめるよう働きかける方法です。教育は、心の不調についての正確な知識を伝え、誤った思い込みを減らす方法です。そして接触は、心の不調がある人と実際に関わる経験を通じて偏見を減らす方法で、論文は、接触の機会が多いほど、精神医学的なスティグマに同意しにくくなるという関係を報告しています。
この章で見てきたように、不安症・うつ病・統合失調症は、いずれも機能不全を伴う心の不調であり、誰にでも起こりうるものです。気分の落ち込みや強い不安が長く続き、生活に支障が出ていると感じたときは、一人で抱え込まず、医療機関(精神科・心療内科)や、お住まいの地域の精神保健福祉センターなどの公的な相談窓口に相談することができます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
スティグマとは、心の不調がある人に向けられる否定的な思い込みと、それにもとづく差別的な扱いのことです。
公衆のスティグマとは、社会全体が、心の不調がある人に向ける否定的な反応のことです。
セルフスティグマとは、心の不調がある人自身が、偏見を自分に向けてしまうことのことです。
出典
- Corrigan, P.W. & Watson, A.C. (2002) “Understanding the Impact of Stigma on People with Mental Illness,” World Psychiatry, 1(1), 16–20.
- Gronholm, P.C., Ali, S., Brohan, E., & Thornicroft, G. (2023) “Discrimination Reported by People with Schizophrenia: Cross-National Variations in Relation to the Human Development Index,” Epidemiology and Psychiatric Sciences, 32, e66.
LESSON 15-5 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. コリガンとワトソンの論文によると、公衆のスティグマとセルフスティグマの違いは何か。
- 公衆のスティグマは社会からの反応、セルフスティグマは本人が自分に向ける偏見
- 公衆のスティグマは差別行動、セルフスティグマはステレオタイプ
- 両者に違いはなく、同じものを指す
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正解: 1. 公衆のスティグマは社会からの反応、セルフスティグマは本人が自分に向ける偏見
公衆のスティグマは社会全体の反応、セルフスティグマは本人が自分自身に向けてしまう偏見です。
Q2. グロンホルムらの国際調査によると、統合失調症のある人のうち、自分の診断を隠したいと感じていた人はおよそ何%か。
- およそ73%
- およそ7%
- およそ30%
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正解: 1. およそ73%
29か国・807人を対象にした調査では、およそ73%が診断を隠したいと感じていたと報告されています。
Q3. 次のうち、コリガンとワトソンの論文がスティグマを減らす方法として挙げているものはどれか。
- 接触(心の不調がある人と直接関わる経験)
- 薬による治療
- 法律による罰則の強化
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正解: 1. 接触(心の不調がある人と直接関わる経験)
論文は、抗議・教育・接触の3つをスティグマを減らす方法として挙げています。
レッスン15-5はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。