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第8章 記憶 ・ レッスン8-5記憶はどのように歪むか。目撃証言と誤情報効果
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 誤情報効果とは何かを、具体的な実験結果とともに説明できる
- 虚偽記憶を植え付けられる確率が、使う面接技法によって変わることを説明できる
- 目撃証言を集める面接の方法が、記憶そのものに影響しうることを説明できる
要点
- 誤情報効果とは、出来事の後に誤解を招く情報に触れることで、もとの出来事についての記憶の正確さが下がる現象のことです。
- 複数の研究をまとめたメタ分析によると、虚偽記憶を植え付けられる確率は、使う面接技法によって大きく変わります。
- 警察などが使うガイド付きイメージ法は、虚偽記憶を植え付けやすいとされ、自由再生を重視した面接が勧められています。
01記憶は正確な録音ではない。誤情報効果とは何か
誤情報効果とは、出来事の後に誤解を招く情報に触れることで、もとの出来事についての記憶の正確さが下がる現象のことです。
2024年に学術誌Cognitive Research: Principles and Implicationsに発表された論文によると、誤情報効果とは、参加者が誤解を招く提案された詳細を、もとの出来事に属するものとして誤って信じてしまう、頑健な現象として知られています。
同じ論文の実験では、参加者はある出来事を記憶した後、無意識のうちにその出来事についての誤情報を受け取り、その後記憶テストを受けました。手がかりを与えて思い出させる検査(cued recall)では、誤情報を与えられた項目は、対照項目に比べて誤って答えられる確率が2.35倍、一貫した情報を与えられた項目に比べると4.06倍高いという結果でした。
同じ論文によると、手がかりを与えずに選んでもらう認識テスト(recognition)でも同様の傾向が見られ、誤情報を与えられなかった一貫性項目のほうが、誤情報を与えられた項目よりも正答率が高かったことが報告されています。
02虚偽記憶は植え付けられる。メタ分析が示す確率
複数の研究をまとめたメタ分析によると、豊かな自伝的虚偽記憶を植え付けられる確率には大きな効果が見られますが、使う手法によって差があります。
2023年に学術誌International Journal of Clinical and Health Psychologyに発表されたメタ分析によると、豊かな自伝的虚偽記憶(実際には経験していない出来事についての、詳細で本人が信じている記憶)を植え付けられる確率には、極めて大きな効果量(d = 1.43)が報告されています。
同じメタ分析によると、虚偽記憶を植え付けやすい手法は、やり方によって差がありました。ガイド付きのイメージ法(d = 1.45、19件の研究)や、答えるよう圧力をかける指示(d = 1.56、5件の研究)は、植え付けやすい手法でした。一方、指示を与えずに自由に話してもらう非指示的な技法(d = 0.90、4件の研究)は、他の手法に比べて統計的に有意に植え付けにくいという結果でした(非指示的技法とガイド付きイメージ法の比較、p = .012)。
03目撃証言への影響。面接の方法が記憶を変えてしまう
警察などが使うガイド付きイメージ法は、虚偽記憶を植え付けやすいとされており、記憶を思い出させる面接では、自由再生を重視した方法が勧められています。
同じメタ分析によると、警察が目撃者や被疑者から記憶を引き出すために使う、ガイド付きイメージ法は、虚偽記憶が植え付けられる割合の高さと結びついていました。
そのため、論文は、自由再生を使った面接技法は、想像を導くことに基づくべきではなく、感覚的な記憶を取り戻すための文脈の再現にもとづくべきだと述べています。目撃証言は、面接のやり方しだいで、記憶そのものが変わってしまう可能性があるということです。
記憶は、録音や録画のような正確な記録ではなく、符号化・貯蔵・検索のたびに変化しうる、再構成された情報です。これで、記憶について学ぶ第8章は終わりです。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
誤情報効果とは、出来事の後に誤解を招く情報に触れることで、もとの出来事についての記憶の正確さが下がる現象のことです。
虚偽記憶とは、実際には経験していない出来事についての、詳細で本人が信じている記憶のことです。
誘導イメージ法とは、想像を導くことで記憶を引き出そうとする面接技法のことです。
自由再生とは、手がかりを与えずに、覚えていることを自由に話してもらう記憶の検査方法のことです。
出典
- Sharma, P. R., Spearing, E. R., Wade, K. A., & Jobson, L. (2024). Distress reactions and susceptibility to misinformation for an analogue trauma event. Cognitive Research: Principles and Implications, 9, Article 53.
- Arce, R., Selaya, A., Sanmarco, J., & Fariña, F. (2023). Implanting rich autobiographical false memories: Meta-analysis for forensic practice and judicial judgment making. International Journal of Clinical and Health Psychology, 23(4), 100386.
LESSON 8-5 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 誤情報効果とは何ですか。
- 出来事の後に誤解を招く情報に触れることで、もとの記憶の正確さが下がる現象
- 記憶が時間とともにすべて消えてしまう現象
- 記憶が一瞬で長期記憶に移る現象
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正解: 1. 出来事の後に誤解を招く情報に触れることで、もとの記憶の正確さが下がる現象
誤情報効果とは、出来事の後に誤解を招く情報に触れることで、もとの出来事についての記憶の正確さが下がる現象のことです。
Q2. 2023年のメタ分析によると、虚偽記憶を植え付けにくかった面接技法はどれですか。
- 指示を与えない非指示的な技法
- ガイド付きのイメージ法
- 答えるよう圧力をかける指示
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正解: 1. 指示を与えない非指示的な技法
非指示的な技法(d=0.90)は、ガイド付きイメージ法(d=1.45)や圧力をかける指示(d=1.56)に比べて、統計的に有意に虚偽記憶を植え付けにくいという結果でした。
Q3. 目撃証言を集める面接について、メタ分析の論文はどのような方法を勧めていますか。
- 感覚的な記憶を取り戻すための文脈の再現にもとづく自由再生
- 想像を導くガイド付きイメージ法
- 答えを急がせる、圧力をかけた質問
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正解: 1. 感覚的な記憶を取り戻すための文脈の再現にもとづく自由再生
論文は、自由再生を使った面接技法は、想像を導くことに基づくべきではなく、感覚的な記憶を取り戻すための文脈の再現にもとづくべきだと述べています。
レッスン8-5はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。