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第8章 記憶 ・ レッスン8-2短期記憶とワーキングメモリの仕組み
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 短期記憶の容量が、昔考えられていたより少ない「3〜4個程度」であることを説明できる
- チャンク化によって、覚えやすくなる仕組みを説明できる
- ワーキングメモリが、中央実行系と複数の一時貯蔵システムからなることを説明できる
要点
- 短期記憶とは、情報を一時的にアクセス可能な状態で保持する、限られた容量の記憶のことです。
- 短期記憶の容量は、昔は7±2個と言われていましたが、チャンク化を防いだ条件では3〜4個程度とされています。
- ワーキングメモリとは、短期記憶に加えて、それを使いこなすための中央実行系などの仕組みを含む、より広い概念です。
01短期記憶とは何か。昔考えられていたより少ない容量
短期記憶とは、情報を一時的にアクセス可能な状態で保持する働きのことで、その容量は3〜4個程度とされています。
2008年に学術誌Progress in Brain Researchに発表された論文によると、短期記憶とは、一時的にアクセス可能な状態で、限定された情報を保持する能力のことです。
1956年に心理学者ジョージ・ミラーは、学術誌Psychological Reviewに発表した論文で「マジカルナンバー7、プラスマイナス2」という考えを示し、広く知られるようになりました。しかし同じ論文(Cowan, 2008)によると、その後の研究では、チャンク化を防いだ条件での容量の限界は、3〜4個程度だとされています。たとえば、ある学習条件では、容量の限界が約3.5チャンクだったと報告されています。
注意の焦点(限られた範囲にしか向けられない注意の働き)の限界についても、同様に3〜4項目程度だったと報告されています。
02チャンク化。情報をまとめて覚える
チャンク化とは、複数の項目を、意味のあるまとまった単位(チャンク)として結びつけ、覚えやすくすることです。
同じ論文によると、ミラー(1956)の論文で最も重要な点は、複数の項目をより大きな、意味のあるまとまりに結びつけられるということでした。
たとえば、ランダムな数字の並びも、意味のある単位(電話番号や年号など)にまとめることができれば、覚えるべき項目の数を実質的に減らせます。短期記憶の容量そのものが増えるわけではなく、1つのチャンクに詰め込める情報量が増えることで、結果的に多くの情報を保持できるようになります。
03ワーキングメモリとは何か。中央実行系と一時貯蔵システム
ワーキングメモリとは、短期記憶に加えて、それを使いこなすための注意の制御や、複数の一時貯蔵システムを含む、より広い仕組みのことです。
2008年の論文によると、ワーキングメモリとは、短期記憶に加えて、短期記憶を活用するための処理の仕組みを含む概念です。
2021年に学術誌Archives of Clinical Neuropsychologyに発表された論文で、ワーキングメモリの研究者アラン・バドリーは、1974年にヒッチとともに提案した当初のモデルを振り返っています。それによると、モデルは3つの要素、すなわち注意を制御する中央実行系と、それを補う2つの一時貯蔵システム(言語的な情報を扱う音韻ループと、視覚的な情報を扱う視空間スケッチパッド)からなっていました。
同じ論文によると、その後の研究で、この3つの要素だけでは説明できない現象が見つかったため、第4の要素として「エピソディック・バッファ」が提案されました。
04新近性効果。リストの最後のほうが思い出しやすい
新近性効果とは、リストの最後のほうの項目が、短期貯蔵に支えられて、他の項目より思い出しやすくなる現象のことです。
2008年の論文によると、リストの最後の数項目の成績は、主に短期貯蔵にもとづいていると説明されています。この現象は新近性効果と呼ばれます。
同じ論文は、記憶障害であるコルサコフ症候群の患者でも、リストの最後の数項目についての記憶は保たれることを紹介しています。これは、新近性効果が、長期記憶とは別の仕組みに支えられていることを示す手がかりの1つとされています。
短期記憶とワーキングメモリは、今まさに考えたり会話をしたりするために欠かせない仕組みです。次のレッスンでは、意味記憶・エピソード記憶・手続き記憶という、長期記憶の種類について学びます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
短期記憶とは、情報を一時的にアクセス可能な状態で保持する、限られた容量の記憶のことです。
チャンク化とは、複数の項目を、意味のあるまとまった単位として結びつけ、覚えやすくすることです。
ワーキングメモリとは、短期記憶に加えて、それを活用するための複数の処理の仕組みを含む、より広い概念のことです。
中央実行系とは、ワーキングメモリの中で、注意を制御する働きのことです。
新近性効果とは、リストの最後のほうの項目が、他の項目より思い出しやすくなる現象のことです。
出典
LESSON 8-2 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 心理学者ジョージ・ミラーが1956年に示した「マジカルナンバー7」について、その後の研究はどう示していますか。
- チャンク化を防いだ条件での容量の限界は、3〜4個程度である
- 容量の限界は、常に7個のままである
- 容量の限界は、年齢とともに7個から2個に減る
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正解: 1. チャンク化を防いだ条件での容量の限界は、3〜4個程度である
Cowan(2008)によると、その後の研究では、チャンク化を防いだ条件での容量の限界は3〜4個程度だとされています。
Q2. チャンク化とは何ですか。
- 複数の項目を、意味のあるまとまった単位として結びつけること
- 項目を1つずつ、ばらばらに覚えること
- 記憶をすべて長期記憶に移すこと
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正解: 1. 複数の項目を、意味のあるまとまった単位として結びつけること
チャンク化とは、複数の項目を意味のあるまとまり(チャンク)として結びつけ、覚えやすくすることです。
Q3. 1974年にバドリーとヒッチが提案した当初のワーキングメモリモデルに含まれていたのはどれですか。
- 中央実行系、音韻ループ、視空間スケッチパッド
- 海馬、扁桃体、小脳
- 感覚記憶、短期記憶、長期記憶
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正解: 1. 中央実行系、音韻ループ、視空間スケッチパッド
当初のモデルは、中央実行系と、音韻ループ・視空間スケッチパッドという2つの一時貯蔵システムからなっていました。
レッスン8-2はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。