HOME / 日常の心理学 / 講座 / 第12章 社会心理学 / 偏見が生まれる仕組み
第12章 社会心理学 ・ レッスン12-4偏見とステレオタイプはなぜ生まれるか。集団わけと潜在的バイアス
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 偏見とステレオタイプの違いを、研究にもとづいて説明できる
- ただ集団に分けられるだけで、内集団ひいきが生まれることを、具体的な実験データで説明できる
- 潜在的な偏見を測る方法と、その限界について説明できる
要点
- 偏見とは、特定の集団に対してあらかじめ抱く否定的な感情のことです。ステレオタイプとは、集団に対する単純化されたイメージのことです。
- 2016年の実験では、1,005人の参加者を意味のない基準でグループ分けしただけで、自分のグループへの利益配分を優先する「内集団ひいき」が確認されました。
- 2015年の研究では、潜在的な偏見を測る複数の心理テストの結果どうしの相関は弱く、1つのテストだけで潜在的な偏見の強さを決めつけることには注意が必要だとわかりました。
01偏見とステレオタイプとは何か
偏見とは特定の集団に対してあらかじめ抱く否定的な感情のことで、ステレオタイプとは集団に対する単純化されたイメージのことです。
偏見とは、特定の集団に対してあらかじめ抱く否定的な感情のことです。ステレオタイプとは、集団に対する単純化されたイメージや思い込みのことです。この2つは関連していますが、同じ言葉ではありません。
心理学では、人がどのようにして特定の集団に対する偏見やステレオタイプを持つようになるのかを、実験によって調べてきました。代表的な研究が、集団に分けるだけで差が生まれるかを調べる実験と、潜在的な偏見の測定に関する研究です。
このレッスンでは、2015年と2016年に発表された2つの研究から、偏見がどのように生まれ、どう測られているかを確認します。
02内集団ひいき。ただ集団に分けるだけで差が生まれる
2016年の実験では、意味のない基準でグループ分けしただけで、自分のグループを優遇する「内集団ひいき」が確認されました。
2016年に学術誌PLOS ONEに発表された、デューハイム(Durrheim)らの論文は、「ミニマルグループパラダイム」と呼ばれる、参加者を意味のない基準でグループ分けするだけの実験をおこないました。1つ目の実験には1,005人の学生が参加しました。
参加者は、14人のグループでゲームをおこない、相手に利益を配分します。同じ論文によると、グループ分けされた条件では、個人として扱われた条件に比べて、自分のグループへの利益配分が多く、相手のグループへの配分が少なくなりました。
さらに、地位に差をつけた条件では、地位の低いグループのほうが、地位が対等なグループよりも内集団ひいきが強く、この差は統計的に意味のあるものでした(t=4.50)。たったグループ分けされただけで、自分の所属する集団を優先する行動が生まれることを示す結果です。
03潜在的な偏見はどう測るか。測定の限界
2015年の研究では、潜在的な偏見を測る複数のテストの結果どうしの相関は弱いことが示されました。
2015年に学術誌Journal of Personality and Social Psychologyに発表された、イトウ(Ito)らの論文は、潜在的な人種バイアスを測る複数の心理テスト(潜在連合テストなど3種類)の結果が、どれくらい一致するかを、485人の参加者を対象に調べました。
その結果、同じ論文は「潜在的なバイアスを測る指標どうしの相関は弱かった」と報告しています。つまり、あるテストで「潜在的な偏見が強い」と判定された人が、別のテストでも同じように判定されるとは限りません。
この結果は、潜在的な偏見という考え方自体を否定するものではありませんが、1つの心理テストの結果だけで、ある人の潜在的な偏見の強さを決めつけることには、慎重になる必要があることを示しています。
04まとめ。偏見はどこから生まれ、何に注意すべきか
偏見は、ただ集団に分けられるだけでも生まれうる一方、その測定には限界があることが、これらの研究から示されています。
2016年の実験と2015年の研究は、どちらも、偏見やそれに関わる心の働きが、単純な条件や測定方法の違いによって、大きく変わりうることを示しています。意味のないグループ分けだけでも差が生まれる一方で、潜在的な偏見を測るテストの結果は、慎重に扱う必要があります。
こうした研究結果を知っておくことは、自分や他者の判断を、集団への単純な思い込みだけで決めつけていないかを振り返る手がかりになります。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
偏見とは、特定の集団に対してあらかじめ抱く否定的な感情のことです。
ステレオタイプとは、集団に対する単純化されたイメージや思い込みのことです。
内集団ひいきとは、自分が所属する集団を、所属していない集団より優遇する傾向のことです。
出典
- Durrheim, K., Quayle, M., Tredoux, C. G., Titlestad, K., & Tooke, L. (2016). Investigating the Evolution of Ingroup Favoritism Using a Minimal Group Interaction Paradigm: The Effects of Inter- and Intragroup Interdependence. PLOS ONE.
- Ito, T. A., Friedman, N. P., Bartholow, B. D., Correll, J., Loersch, C., Altamirano, L. J., & Miyake, A. (2015). Toward a Comprehensive Understanding of Executive Cognitive Function in Implicit Racial Bias. Journal of Personality and Social Psychology, 108(2), 187-218.
LESSON 12-4 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. 偏見とステレオタイプの違いとして正しいものはどれですか。
- 偏見は否定的な感情、ステレオタイプは集団への単純化されたイメージ
- 偏見とステレオタイプは、まったく同じ意味の言葉
- ステレオタイプは良い意味でしか使われない言葉
答えを見る
正解: 1. 偏見は否定的な感情、ステレオタイプは集団への単純化されたイメージ
偏見とは集団に対してあらかじめ抱く否定的な感情のことで、ステレオタイプとは集団に対する単純化されたイメージのことです。
Q2. 2016年のデューハイムらの実験について正しいものはどれですか。
- 意味のない基準でグループ分けしただけで、内集団ひいきが見られた
- グループ分けをしても、利益配分にはまったく差が出なかった
- 地位の高いグループのほうが、常に内集団ひいきが弱かった
答えを見る
正解: 1. 意味のない基準でグループ分けしただけで、内集団ひいきが見られた
同じ実験では、意味のない基準でグループ分けしただけで、自分のグループへの利益配分を優先する内集団ひいきが見られました。
Q3. 2015年のイトウらの研究について正しいものはどれですか。
- 潜在的な偏見を測る複数のテストの結果どうしの相関は弱かった
- すべてのテストが、まったく同じ結果を示した
- 潜在的な偏見は、1つのテストで完全に測定できることが証明された
答えを見る
正解: 1. 潜在的な偏見を測る複数のテストの結果どうしの相関は弱かった
同じ研究では、潜在的な偏見を測る複数の心理テストの結果どうしの相関は弱いことが示されました。
レッスン12-4はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。