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第12章 社会心理学 ・ レッスン12-5

向社会的行動と傍観者効果。なぜ助け、なぜ助けないのか

読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-02

このレッスンの学習目標

要点

  1. 向社会的行動とは、他者の利益になるような自発的な行動のことです。傍観者効果とは、周囲に人が多いほど、個人が助けなくなる現象のことです。
  2. 2019年の研究では、暴力事件の映像から764人分の傍観者の行動を分析した結果、傍観者の数が増えるほど個人が介入する確率は下がりましたが、事件全体の85.0%では少なくとも1人が介入していました。
  3. 2022年の研究では、1,037人の大学生を対象に、視点取得(相関係数0.46)や共感的配慮(相関係数0.26)が強いほど、向社会的行動が多い傾向が示されました。

01向社会的行動と傍観者効果とは何か

向社会的行動とは他者の利益になる自発的な行動のことで、傍観者効果とは周囲に人が多いほど個人が助けなくなる現象のことです。

向社会的行動とは、他者の利益になるような自発的な行動のことです。困っている人を助けることや、寄付をすることなどが当てはまります。傍観者効果とは、緊急事態に周囲にいる人の数が多いほど、個人が助ける行動を取らなくなる現象のことです。

心理学では、人がいつ助け、いつ助けないのかを、現実の映像データや調査によって調べてきました。代表的な研究が、暴力事件の監視カメラ映像を分析した研究と、共感と向社会的行動の関連を調べた研究です。

このレッスンでは、2019年と2022年に発表された2つの研究から、人が助ける・助けない理由を確認します。

02傍観者効果。周囲の人数は介入をどう変えるか

2019年の研究では、傍観者の数が増えるほど個人が介入する確率は下がりましたが、事件全体の85.0%では少なくとも1人が介入していました。

2019年に学術誌Aggressive Behaviorに発表された、リーブスト(Liebst)らの論文は、アムステルダムなどで実際に起きた81件の暴力事件の監視カメラ映像を分析し、764人の傍観者の行動を調べました。

同じ論文によると、現場にいた傍観者の数が増えるほど、個々の傍観者が介入する確率は下がりました。これは、古くから知られている傍観者効果と同じ傾向です。一方で、紛争の当事者と社会的な関係がある傍観者は、見知らぬ人である傍観者より20倍以上介入しやすいという結果でした。

さらに、事件全体で見ると、85.0%の事件では少なくとも1人の傍観者が介入し、1つの事件あたり平均2.7人が介入していました。周囲に人が多いと個人の介入確率は下がる一方で、現実の緊急事態では、誰も助けないまま終わることは少ないといえます。

03共感。なぜ人は他者を助けようとするのか

2022年の研究では、視点取得や共感的配慮といった共感の働きが強い人ほど、向社会的行動が多い傾向が示されました。

2022年に学術誌Frontiers in Psychologyに発表された、パン(Pang)・ソン(Song)・マー(Ma)の論文は、中国の大学生1,037人を対象に、共感の4つの側面(視点取得・想像・共感的配慮・個人的苦痛)と、向社会的行動との関連を調べました。

同じ論文によると、相手の立場に立って考える「視点取得」は、向社会的行動との相関係数が0.46でもっとも強く、相手の気持ちに寄り添う「共感的配慮」も相関係数0.26と関連していました。想像や個人的苦痛との相関は、これよりやや弱いものでした。

この結果は、相手の立場や気持ちを想像する力が強いほど、実際に他者を助ける行動につながりやすいことを示しています。傍観者効果のように周囲の状況が助けを減らす一方で、共感のような個人の働きが助けを後押しする側面もあります。

04まとめ。人はいつ助け、いつ助けないのか

周囲の状況と、個人の共感の働きの両方が、向社会的行動が起きるかどうかに関わっています。

2019年の研究と2022年の研究は、どちらも、人が他者を助けるかどうかが、1つの原因だけで決まるわけではないことを示しています。周囲にいる人の数や、当事者との関係といった状況の要因と、視点取得や共感的配慮といった個人の働きの両方が関わっています。

傍観者効果という言葉だけを聞くと、「人は助けないものだ」という印象を持ちやすいですが、現実の緊急事態では、多くの場合に誰かが介入しているという結果も、あわせて知っておく価値があります。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

向社会的行動Prosocial behavior

向社会的行動とは、他者の利益になるような自発的な行動のことです。

傍観者効果Bystander effect

傍観者効果とは、緊急事態に周囲にいる人の数が多いほど、個人が助ける行動を取らなくなる現象のことです。

視点取得Perspective-taking

視点取得とは、相手の立場に立って考える、共感の働きの1つのことです。

EXAMPLES身近な例で深める

このレッスンの内容を、日常の疑問にあてはめた研究解説記事です。

出典

  1. Liebst, L. S., Philpot, R., Bernasco, W., Dausel, K. L., Ejbye-Ernst, P., Nicolaisen, M. H., & Lindegaard, M. R. (2019). Social relations and presence of others predict bystander intervention: Evidence from violent incidents captured on CCTV. Aggressive Behavior, 45(6), 598-609.
  2. Pang, Y., Song, C., & Ma, C. (2022). Effect of Different Types of Empathy on Prosocial Behavior: Gratitude as Mediator. Frontiers in Psychology.

LESSON 12-5 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. 向社会的行動と傍観者効果の説明として正しいものはどれですか。
  1. 向社会的行動は他者の利益になる自発的な行動、傍観者効果は周囲の人数が多いほど個人が助けなくなる現象
  2. 向社会的行動と傍観者効果は、まったく同じ意味の言葉
  3. 傍観者効果が起きると、誰も助けないまま事件が終わることが大半である
答えを見る

正解: 1. 向社会的行動は他者の利益になる自発的な行動、傍観者効果は周囲の人数が多いほど個人が助けなくなる現象
向社会的行動とは他者の利益になる自発的な行動のことで、傍観者効果とは周囲の人数が多いほど個人が助けなくなる現象のことです。

Q2. 2019年のリーブストらの研究について正しいものはどれですか。
  1. 傍観者の数が増えるほど個人の介入確率は下がったが、事件全体の85.0%では誰かが介入した
  2. 傍観者の数が増えるほど、個人の介入確率は上がった
  3. 社会的な関係がある傍観者は、見知らぬ人よりも介入しにくかった
答えを見る

正解: 1. 傍観者の数が増えるほど個人の介入確率は下がったが、事件全体の85.0%では誰かが介入した
同じ研究では、傍観者が増えるほど個人の介入確率は下がりましたが、事件全体の85.0%では少なくとも1人が介入していました。

Q3. 2022年のパンらの研究について正しいものはどれですか。
  1. 視点取得は、向社会的行動との相関係数が0.46でもっとも強かった
  2. 共感のどの側面も、向社会的行動とはまったく関連しなかった
  3. 個人的苦痛だけが、向社会的行動と関連していた
答えを見る

正解: 1. 視点取得は、向社会的行動との相関係数が0.46でもっとも強かった
同じ研究では、視点取得が向社会的行動との相関係数0.46でもっとも強く関連していました。

レッスン12-5はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第12章 社会心理学 のレッスン一覧
  1. 12-1対人魅力の3つの要因
  2. 12-2説得の3つの仕組み
  3. 12-3同調と服従の実験
  4. 12-4偏見が生まれる仕組み
  5. 12-5助ける心、助けない心

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