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第2章 心理学の研究法 ・ レッスン2-4

研究結果はどう読むのか。平均・ばらつき・効果の大きさ

読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-01

このレッスンの学習目標

要点

  1. 平均とは、データの真ん中あたりの値を表す代表値のことで、ばらつき(標準偏差など)は、データが平均からどれくらい散らばっているかを表します。
  2. 効果の大きさ(効果量)とは、2つのグループの違いなどを、ばらつきの大きさを基準にして表した数値のことで、d=0.2・0.5・0.8がそれぞれ小・中・大の目安とされています。
  3. サンプルの人数が少ない研究は、効果量が実際より大きく見積もられやすいため、後から多くの研究を見直すと、効果量が小さく訂正される場合があります。

01平均とばらつき

平均とは、データの真ん中あたりの値を表す代表値のことです。ばらつきは、データが平均からどれくらい散らばっているかを表します。

心理学の研究では、「○○をした人は、しなかった人より気分がどれくらい良くなったか」のような問いに答えるために、多くの人のデータを集めます。このとき、まず見るのが平均です。平均は、全員の値を足して人数で割った、データの真ん中あたりを表す数値です。

しかし、平均だけでは研究結果を十分に読み取れません。同じ平均でも、全員がその値の近くに集まっている場合と、高い人も低い人もいて散らばっている場合があります。この散らばりの大きさを、ばらつき(分散・標準偏差など)と呼びます。

平均とばらつきの両方を見ることで、「多くの人に共通する変化なのか」「一部の人だけに大きな変化が起きているのか」を区別しやすくなります。

02効果の大きさ(効果量)とは何か

効果量とは、2つのグループの違いなどを、ばらつきの大きさを基準にして表した数値です。d=0.2・0.5・0.8が、それぞれ小・中・大の目安です。

「統計的に有意」という言葉は、その違いが偶然では起こりにくいという意味です。しかし、違いが偶然でなくても、その違いがどれくらい大きいかまではわかりません。違いの大きさを表す数値を、効果量と呼びます。

よく使われる効果量がCohenのdです。2020年の神経科学分野の論文でも紹介されているとおり、d=0.2は小さい効果、d=0.5は中程度の効果、d=0.8は大きい効果の目安とされています。

効果量を見ると、「差はあるが小さい」のか「大きな差がある」のかを区別できます。ニュースなどでは、統計的に有意という言葉だけが強調され、効果量の大きさが省略されがちです。

03効果量は、見積もりが変わることがある:ポジティブ心理学介入の再分析

小さなサンプルで行われた研究をまとめると、効果量が実際より大きく見積もられやすいことが、ある再分析からわかっています。

2019年に学術誌PLOS ONEに発表された研究は、「ポジティブ心理学的介入」(感謝日記をつけるなど、気分を良くするための取り組み)についての、よく引用される2つのメタ分析を再分析しました。

元のメタ分析では、幸福感との関連がr=.29、うつ症状との関連がr=.31と報告されていました。しかし、サンプルの人数が少ない研究ほど効果が大きく出やすいという偏りを調整すると、幸福感との関連はr=.10に、うつ症状との関連はr=-.03(統計的に有意ではない)まで小さくなりました。

この再分析は、「効果がない」と証明したわけではありません。小さなサンプルの研究を多く含むメタ分析では、効果量が実際より大きく見積もられやすいという、研究結果を読むときの注意点を示しています。

04研究結果を読むときに気をつけること

「統計的に有意」という言葉だけでなく、効果量の大きさと、研究に参加した人数もあわせて確認することが大切です。

心理学の研究結果を読むときは、平均の違いだけでなく、ばらつきと効果量も合わせて見ることが大切です。効果量が小さければ、統計的に有意であっても、実生活での影響は限られるかもしれません。

また、研究に参加した人数が少ない研究は、効果量の見積もりが不安定になりやすいことも、前のセクションの再分析からわかります。1つの研究だけでなく、複数の研究をまとめたメタ分析や、サンプルの人数を確認する習慣をつけましょう。

この章の最後のレッスンでは、こうした研究を行う際に守るべき研究倫理について学びます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

平均Mean

データの値をすべて足して、個数で割った、代表値のひとつ。

ばらつきVariability

データが、平均からどれくらい散らばっているかの度合い。標準偏差などで表される。

効果量Effect size

2つのグループの違いなどを、ばらつきの大きさを基準にして表した数値。

出典

  1. White, C. A., Uttl, B., & Holder, M. D. (2019). Meta-analyses of positive psychology interventions: The effects are much smaller than previously reported. PLoS One, 14(5), e0216588.
  2. Tursic, A., Eck, J., Lührs, M., Linden, D. E. J., & Goebel, R. (2020). A systematic review of fMRI neurofeedback reporting and effects in clinical populations. NeuroImage: Clinical, 28, 102496.

LESSON 2-4 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. データが平均からどれくらい散らばっているかを表す言葉はどれですか。
  1. 平均
  2. ばらつき
  3. 効果量
答えを見る

正解: 2. ばらつき
データの散らばりの大きさを表すのがばらつき(標準偏差など)です。

Q2. Cohenのdについて、小さい効果の目安とされる値はどれですか。
  1. 0.2
  2. 0.5
  3. 0.8
答えを見る

正解: 1. 0.2
d=0.2が小さい効果、d=0.5が中程度、d=0.8が大きい効果の目安です。

Q3. 2019年のPLOS ONEの再分析からわかることとして、最も適切なものはどれですか。
  1. サンプルの人数が少ない研究をまとめると、効果量が実際より大きく見積もられやすい
  2. サンプルの人数は、効果量の見積もりに影響しない
  3. 統計的に有意であれば、効果の大きさは常に大きい
答えを見る

正解: 1. サンプルの人数が少ない研究をまとめると、効果量が実際より大きく見積もられやすい
小さなサンプルの研究を多く含むメタ分析では、効果量が実際より大きく見積もられやすいことが示されました。

レッスン2-4はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第2章 心理学の研究法 のレッスン一覧
  1. 2-1研究法を学ぶ理由
  2. 2-2実験・調査・観察の違い
  3. 2-3相関と因果の違い
  4. 2-4研究結果の読み方
  5. 2-5心理学の研究倫理

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