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第2章 心理学の研究法 ・ レッスン2-1

なぜ心理学は研究法を学ぶのか。直感と実証のちがい

読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-01

このレッスンの学習目標

要点

  1. 心理学の研究法とは、仮説をデータで確かめ、他の研究者が同じ手順で確認できるようにする手続きのことです。
  2. 人には自分の考えに合う情報ばかり集める確証バイアスがあるため、直感だけに頼ると判断を誤りやすくなります。
  3. 2015年に心理学の100の研究を追試したプロジェクトでは、元の研究の97%が統計的に有意だったのに対し、追試では36%にとどまりました。研究法を知ると、こうした結果の確かさを自分で判断できます。

01直感や経験だけでは判断を誤りやすい

人には、自分の考えに合う情報ばかりを集めたり、都合よく解釈したりする「確証バイアス」があります。直感だけに頼ると、この影響を受けやすくなります。

「血液型で性格がわかる」「目をそらす人は嘘をついている」。こうした話は、身近な経験に合っているように感じられます。しかし、経験から得た印象は、思っているほど確かではありません。

心理学者ニッカーソンは1998年の論文で、人が自分の信じていることや仮説に有利な形で証拠を探したり解釈したりする傾向を「確証バイアス」としてまとめ、それが日常のさまざまな場面に現れることを示しました。たとえば「A型は几帳面だ」と思っている人は、几帳面なA型の人を見ると記憶に残し、そうでない例は見落としがちです。

このバイアスは、知識がある人や専門家にも起こります。だからこそ、自分の感覚ではなく、決まった手続きで集めたデータで確かめる方法が必要になります。それが心理学の研究法です。

02心理学は、仮説をデータで確かめる科学

心理学の研究は、仮説を立てて実験や調査を行い、得られたデータで仮説を確かめるという手順をとります。

研究の流れは、おおまかに次の4段階です。まず、疑問を「こういう条件なら、こうなるはずだ」という仮説の形にします。次に、仮説を確かめるための実験や調査を計画します。そしてデータを集めて分析し、最後に結果を論文として公開します。

大切なのは、手順を細かく公開することです。どんな人を対象に、何を、どう測ったのかが書かれていれば、他の研究者が同じ手順で確かめられます。結果が自分の予想と違っても、そのまま報告します。予想に合う結果だけを選んで発表すると、確証バイアスと同じ誤りを研究全体で起こしてしまうからです。

この講座の第2章では、この手順を支える道具として、実験・調査・観察の違い、相関と因果の区別、平均やばらつきなど結果の読み方、そして研究倫理を順に学びます。

03結果を確かめる追試と、心理学の再現性

2015年の大規模な追試プロジェクトでは、心理学の研究の多くが、同じ手順で確かめても同じ結果にならないことがわかりました。

同じ手順で研究をやり直し、同じ結果が出るかを確かめることを「追試」といいます。追試で同じ結果が得られることを「再現性がある」といいます。

2015年、多くの研究者が協力したオープン・サイエンス・コラボレーションは、心理学の3つの学術誌に載った100の研究を追試し、その結果を学術誌サイエンスに発表しました。元の研究では97%が統計的に有意な結果でしたが、追試で有意な結果が出たのは36%でした。また、追試で見られた効果の大きさは、元の研究の半分ほどでした。

この結果は「心理学は信用できない」という意味ではありません。1本の研究だけで結論を出さず、追試や複数の研究のまとめ(メタ分析)で確かめることが大切だ、ということを示しています。この考え方は、ネットで見かける「心理学ではこう証明された」という話を読むときにも役立ちます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

確証バイアスConfirmation bias

自分の考えや仮説に合う情報ばかりを集めたり、都合よく解釈したりする心の働き。

追試Replication

同じ手順で研究を繰り返し、同じ結果が得られるかどうかを確かめること。

再現性Reproducibility

同じ手順で研究を繰り返したとき、同じ結果がどれだけ得られるかの度合い。

統計的に有意Statistically significant

得られた結果が、偶然だけでは起こりにくいと判断される基準を満たしていること。

QUIZ確認問題

答えを見る前に、自分で選んでみましょう。

Q1. 確証バイアスの説明として、最も適切なものはどれですか。
  1. 自分の考えに合う情報ばかり集め、都合よく解釈する傾向
  2. どんな情報も公平に集めようとする傾向
  3. 記憶が時間とともにすべて消える現象
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正解: 1. 自分の考えに合う情報ばかり集め、都合よく解釈する傾向
確証バイアスは、自分の考えや仮説に合う情報を探したり、都合よく解釈したりする心の働きです。

Q2. 2015年の大規模な追試プロジェクトの結果として正しいものはどれですか。
  1. 元の研究とほぼ同じ結果がすべて再現された
  2. 元の研究の97%が有意だったのに対し、追試では36%しか有意にならなかった
  3. 心理学の研究はひとつも追試されなかった
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正解: 2. 元の研究の97%が有意だったのに対し、追試では36%しか有意にならなかった
100件の心理学研究を対象にした追試プロジェクトでは、元の研究の97%に対し、追試では36%しか統計的に有意な結果になりませんでした。

Q3. 心理学で研究法を学ぶ意義として、最も適切なものはどれですか。
  1. 占いのように当たる確率を上げるため
  2. 結果の信頼性を見分け、正しく読み解く力をつけるため
  3. 専門用語を覚えて権威を示すため
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正解: 2. 結果の信頼性を見分け、正しく読み解く力をつけるため
研究法を学ぶことで、「心理学の研究によると」という情報がどの程度信頼できるかを見分けられるようになります。

出典

  1. Nickerson, R. S. (1998). Confirmation bias: A ubiquitous phenomenon in many guises. Review of General Psychology, 2(2), 175-220.
  2. Open Science Collaboration (2015). Estimating the reproducibility of psychological science. Science, 349(6251), aac4716.
  3. Stevens, J. R. (2017). Replicability and Reproducibility in Comparative Psychology. Frontiers in Psychology, 8:862.

第2章 心理学の研究法

  1. 2-1研究法を学ぶ理由

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