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第10章 感情と動機づけ ・ レッスン10-1感情とは何か。感情を構成する要素
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-02
このレッスンの学習目標
- 感情とは何かを、心理学の研究にもとづいて説明できる
- 感情を構成する主な要素(主観的経験・生理的反応・行動)を説明できる
- 感情が、出来事に対する評価(アプレイザル)から始まることを説明できる
要点
- 感情とは、出来事の評価をきっかけに、主観的な経験・生理的な反応・行動という複数の要素が同時に変化する、まとまりのある反応のことです。
- 感情の研究では、主観的経験(気持ち)・生理的反応(身体の変化)・行動(表情や声、ふるまい)という3つの要素がよく取り上げられます。
- 感情は、出来事を自分にとって重要かどうか評価する「アプレイザル」から始まり、複数の要素がほぼ同時に、連動してまとまって変化すると考えられています。
01感情とは何か
感情とは、出来事の評価をきっかけに、主観的な経験・生理的な反応・行動という複数の要素が同時に変化する、まとまりのある反応のことです。
感情という言葉は日常でよく使われますが、心理学ではその定義が1つに定まっているわけではありません。2009年に学術誌Cognition and Emotionに発表されたマウス(Mauss)とロビンソン(Robinson)の論文では、感情反応は、出来事が自分にとってどれほど重要かという評価(アプレイザル)から始まり、主観的な経験・生理的反応・行動という要素の変化につながるものとして説明されています。
同じ2009年に、学術誌Philosophical Transactions of the Royal Society Bに発表された心理学者シェラー(Scherer)の論文では、感情は「システムの中で区切られた1つのエピソードであり、複数の要素が同期して変化する、まとまりのあるパターンとして現れるもの」として説明されています。
この2つの論文に共通するのは、感情を、気持ちだけでなく、体の反応や行動まで含めた、複数の要素がセットになって動く現象として捉えている点です。
02感情を構成する3つの要素
感情の研究では、主観的経験(気持ち)・生理的反応(身体の変化)・行動(表情や声、ふるまい)という3つの要素がよく取り上げられます。
マウスとロビンソンの論文によると、感情の研究で広く用いられている要素モデルでは、感情を、主観的経験・生理的反応・行動という3つの要素から捉えます。主観的経験とは、本人が内側で感じる気持ちそのもので、多くの場合、本人への質問(自己報告)によって調べられます。
同じ論文によると、生理的反応には、心拍・発汗・ホルモンの変化といった体の末梢部分の反応だけでなく、脳の活動という中枢の反応も含まれます。生理的反応は、心拍計や皮膚電気反応の測定、脳波(EEG)や脳画像などの方法で調べられるとされています。
同じ論文によると、行動の要素には、表情・声の調子・体全体を使ったふるまいが含まれます。感情の研究では、これらの行動を、観察者による評定や、表情を自動で読み取るコーディングの手法で調べることが多いとされています。
03感情はどのように始まるのか。出来事の評価(アプレイザル)
感情は、出来事が自分にとって重要かどうかを評価する「アプレイザル」をきっかけに始まると考えられています。
シェラーの論文で示されている要素プロセスモデルでは、感情は、出来事に対する評価(アプレイザル)から始まり、その評価の結果が、ほかの要素に影響を与えていく過程として説明されています。
同じ論文によると、このモデルでは、感情は、評価(認知)・生理(身体の反応)・動機づけ(行動を起こそうとする構え)・運動表出(表情や声)・主観的な気持ちという、5つの要素から構成されるとされています。評価の要素が、ほかの4つの要素の変化を引き起こすきっかけになると説明されています。
たとえば、暗い夜道で物音がしたとき、それを「危険かもしれない」と評価すると、心拍が上がり、体がこわばり、逃げようとする構えが生まれます。このように、1つの出来事の評価から、複数の反応が連鎖して起こる過程が、感情だと考えられています。
04感情の要素はまとまって動く。同期というしくみ
感情とは、複数の要素がばらばらに起こるのではなく、ほぼ同時に連動して変化する、まとまりのある反応だと考えられています。
シェラーの論文によると、感情を特徴づけているのは、評価・生理・動機づけ・運動表出・主観的な気持ちという複数の要素が、ほぼ同時に、連動して変化する「同期」という性質です。同じ論文は、この同期が強く起こっている状態を、1つのまとまった感情のエピソードとして捉えています。
マウスとロビンソンの論文によると、感情の研究者は、こうした複数の要素を調べるために、本人への質問による自己報告・心拍や皮膚電気反応などの生理測定・表情や行動の観察という、異なる方法を組み合わせて使うことが多いとされています。1つの方法だけでは、感情の全体像を捉えきれないと考えられているためです。
感情を、気持ちだけでなく、体の反応や行動まで含めた、複数の要素がまとまって動く現象として捉えることで、「なぜ緊張すると手が震えるのか」「なぜ嬉しいと自然と笑顔になるのか」といった、日常の感情の動きも説明しやすくなります。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
感情とは、出来事の評価をきっかけに、主観的な経験・生理的な反応・行動という複数の要素が同時に変化する、まとまりのある反応のことです。
アプレイザルとは、ある出来事が自分にとってどのような意味を持つかを評価する、感情の引き金となる心のはたらきのことです。
主観的経験とは、本人が内側で感じる気持ちそのものを指す、感情を構成する要素の1つのことです。
出典
LESSON 10-1 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. マウスとロビンソンの論文によれば、感情反応は何をきっかけに始まりますか。
- 出来事が自分にとってどれほど重要かという評価(アプレイザル)
- 周囲からの社会的な圧力だけ
- 生まれつき決まっている固定の反応パターンだけ
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正解: 1. 出来事が自分にとってどれほど重要かという評価(アプレイザル)
感情反応は、出来事が自分にとってどれほど重要かという評価(アプレイザル)から始まり、主観的な経験・生理的反応・行動という要素の変化につながるとされています。
Q2. シェラーの論文で、感情を特徴づけるものとして説明されている性質はどれですか。
- 複数の要素がほぼ同時に連動して変化する「同期」という性質
- 1つの要素だけが単独で変化し、ほかの要素には影響しない性質
- すべての人で、まったく同じ速さで起こる性質
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正解: 1. 複数の要素がほぼ同時に連動して変化する「同期」という性質
シェラーの論文によると、感情を特徴づけているのは、複数の要素がほぼ同時に、連動して変化する「同期」という性質です。
Q3. 感情の研究でよく取り上げられる3つの要素に含まれないものはどれですか。
- 生理的反応(心拍や発汗などの身体の変化)
- 行動(表情や声、ふるまい)
- 収入の水準
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正解: 3. 収入の水準
感情の研究では、主観的経験・生理的反応・行動という3つの要素がよく取り上げられます。収入の水準は、感情を構成する要素にはあたりません。
レッスン10-1はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。