HOME / 日常の心理学 / 心理学用語辞典 / 単眼遮蔽とは
脳と心単眼遮蔽とは
英語: Monocular Deprivation ・ 更新日 2026-10-03
単眼遮蔽とは、発達初期の動物の片方の眼からの視覚入力を一時的に遮り、それが脳の視覚野の発達に与える影響を調べる実験手法のことです。
01単眼遮蔽をくわしく
単眼遮蔽は、1960年代から1970年代にかけてデイヴィッド・ヒューベルとトルステン・ウィーセルが子猫を用いた実験で確立した手法です。生まれて間もない動物の片方の眼瞼を一時的に縫合し、視覚入力を遮断した状態で育てることで、視覚経験が脳の視覚野の発達にどう影響するかを調べました。この研究は1981年のノーベル生理学・医学賞につながり、眼優位性コラムや臨界期という概念を生み出す基盤となりました。
代表的な知見は、発達初期の限られた期間に片眼を遮蔽すると、視覚野の神経細胞の反応が開いている眼に大きく偏り、遮蔽されていた眼に対応する皮質領域の活動が弱まるというものです。2025年に発表された比較神経科学のレビューでは、猫や霊長類のように眼窩が前方を向き両眼視野の重なりが大きい動物は眼優位性コラムを持ち単眼遮蔽の影響を強く受ける一方、げっ歯類のように眼が側方を向く動物では明確なコラム構造がなくても、脳梁を介した再編成やグリア細胞の活性化など別の仕組みで可塑性が生じることが指摘されています。
ただし近年の総説では、臨界期を単純な「開いている・閉じている」の切り替えとして捉えるのは正確ではなく、眼が開く前から続く連続的な可塑性の過程であり、やがて可塑性が収束していくことこそが臨界期の本質的な特徴だと指摘されています。また単眼遮蔽の影響や臨界期の長さは種によって異なるため、動物実験の結果をそのままヒトの弱視治療に当てはめることには限界があります。加えて、子猫の眼を縫合するという手法自体に動物福祉上の配慮が求められる点も踏まえておく必要があります。
このように単眼遮蔽は、視覚経験が脳の構造と機能を形作ることを示した代表的な研究手法であり、脳の可塑性や発達初期の重要性を理解するうえで、現在も神経科学の基礎研究に影響を与え続けています。
02身近な例
ヒトの弱視(amblyopia)治療における遮蔽療法(健眼を一時的に覆うパッチ療法)の考え方にも、単眼遮蔽研究で示された視覚経験と脳の可塑性の関係が背景として関わっているとされます。
03講座で学ぶ
単眼遮蔽は、無料講座「ゼロから学ぶ心理学入門」の次のレッスンで詳しく学べます。
FAQよくある質問
単眼遮蔽とは何ですか?
単眼遮蔽とは、発達初期の動物の片方の眼からの視覚入力を一時的に遮り、それが脳の視覚野の発達に与える影響を調べる実験手法のことです。1960年代にヒューベルとウィーセルが子猫を用いて確立しました。
単眼遮蔽によって脳にどのような変化が起きますか?
発達初期の限られた期間(臨界期)に片眼を遮蔽すると、視覚野の神経細胞の反応が開いている眼に偏り、遮蔽されていた眼に対応する皮質の活動が弱まることが報告されています。種によって影響の出方や仕組みは異なります。
単眼遮蔽の研究には限界がありますか?
はい。動物種によって臨界期の長さや可塑性の仕組みが異なるため、結果をそのままヒトに当てはめることには限界があります。また動物福祉の観点からの配慮も必要とされる手法です。
RELATED同じ分野の用語
出典
- do Amaral Júnior, F. L., Rodrigues, T. A., da Silva, N. L. T., Almeida Diniz, I. N., de Morais, L. N. A., Diniz, D. G., Brites, D., Anthony, D. C., & Diniz, C. W. P. (2025). Comparative Neuroplasticity in Frontal-and Lateral-Eyed Mammals With Induced-Binocular Vision Dysfunction: Insights From Monocular Deprivation Models. European Journal of Neuroscience, 62(1), e70179.
- Gorzek, R., & Trachtenberg, J. T. (2025). A Critical Look at Critical Periods. Annual Review of Vision Science, 11(1), 175-192.