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心理学の分野発達心理学とは(第9章)
更新日 2026-10-03
発達心理学とは、人が生まれてから死に至るまでの心と行動の変化を研究する心理学の一分野です。発達は子ども時代に限らず、生涯を通じて続くと考えられています。
01発達は「子ども時代だけ」ではない
発達心理学では、発達は年齢に限定されず、人生の出来事や環境との関わりの中で、生涯を通じて多方向に進むと考えられています。
2019年の論文は、生涯発達心理学の基本原則として『多次元性』と『多方向性』を挙げています。多次元性とは、発達が知力・感情・身体など複数の側面で同時に起こるという考え方で、多方向性とは、ある側面は伸びる一方で別の側面は衰えるなど、発達の方向が一つではないという考え方です。
同論文は、こうした原則にもとづくと、発達は暦年齢だけで決まるのではなく、歴史的な出来事や、その人固有の文脈、予測できない出来事、病気、死への過程などとも関わっていると述べています。『発達=子どもの成長』という狭いイメージではとらえきれない現象だということです。
02逆境への適応から見える発達の多様性
がんの診断や失業、大切な人との別れといった逆境に対する適応のしかたも、生涯発達心理学の視点から研究されています。
先の2019年の論文は、生涯発達心理学の原則を応用して、がんの診断・失業・喪失といった多様な逆境に直面した人の『回復力(レジリエンス)』を調べる研究を紹介しています。逆境への適応のしかたは一人ひとり異なり、社会的な支えなどの資源があるかどうかが、良い結果につながる要因として注目されています。
これは、発達心理学が子どもの成長だけでなく、大人になってからの困難にどう向き合うかという、生涯を通じた心の変化も扱う分野であることを示しています。
03青年期に起こる脳の再構成
青年期には、感情や報酬に関わる部位が、理性的な判断を担う前頭前皮質よりも先に成熟するという、脳の発達の『不均衡』が起こります。
2013年の論文は、以前は脳の大きな変化は乳幼児期に限られると考えられていたが、新しい神経科学の知見によってこの見方が覆されたと述べています。青年期にも脳は大きく再構成され、灰白質の密度は感覚運動を担う皮質で最初に成熟し、理性的な判断や計画を担う背外側前頭前皮質では最後に成熟するという順番があるとされています。
特に重要なのは、感情や報酬に関わる皮質下領域(辺縁系・報酬系)が、前頭前皮質よりも早く成熟するという非線形的な発達パターンです。この『不均衡』が、青年期に特有のリスクを取りやすい行動を説明する神経生物学的な基盤になっていると論じられています。
04脳の不均衡が示す教育・環境の大切さ
青年期は脳の可塑性が高い時期でもあり、環境や教育からの影響を特に強く受けやすい時期だと考えられています。
2013年の論文は、青年期の脳が高い可塑性(変化しやすさ)を持つことから、この時期の環境要因が脳の回路に特に強い影響を及ぼす可能性があると指摘しています。これは、教育や社会的な支援のあり方を考えるうえでも重要な示唆だと論じられています。
子ども時代の発達だけでなく、青年期・成人期・老年期のそれぞれで、脳や心がどのように変化し、何が良い適応につながるのかを知ることは、自分自身や身近な人の心の変化を理解するうえでも役立ちます。
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FAQよくある質問
発達心理学は子どもの発達だけを研究するのですか?
いいえ。発達心理学は、生まれてから死に至るまでの生涯を通じた心と行動の変化を研究します。大人になってからの逆境への適応なども研究対象です。
青年期の脳はどのように変化しますか?
感情や報酬に関わる皮質下領域が、理性的な判断を担う前頭前皮質よりも早く成熟するという『不均衡』が起こると報告されています。
この不均衡はなぜ重要なのですか?
この不均衡が青年期特有のリスクを取りやすい行動の神経生物学的な基盤になっているとされ、また脳の可塑性が高いため、環境や教育の影響を強く受けやすい時期でもあるとされています。
出典
- Infurna (2019). UTILIZING PRINCIPLES OF LIFESPAN DEVELOPMENTAL PSYCHOLOGY TO EXAMINE RESILIENCE TO ADVERSITY. Innovation in Aging 3(Suppl 1):S229
- Konrad, Firk & Uhlhaas (2013). Brain development during adolescence: neuroscientific insights into this developmental period. Deutsches Ärzteblatt International 110(25):425-431
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