HOME / ゼロから学ぶ心理学 / 講座 / 第1章 心理学とは何か / 後知恵バイアス

第1章 心理学とは何か ・ レッスン1-6

後知恵バイアスとは何か。「知っていた」と感じる心のクセ

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-08

前回の復習(1分)

本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。

レッスン1-5から

Q1. 科学と疑似科学の関係について、Lee & Hunsley (2015) の説明として正しいのはどれか。

答えを見る

正解: 2. 科学と疑似科学は連続体であり、疑似科学的な特徴が多いほど疑似科学に近いと考えられる
Lee & Hunsley (2015) は、科学と疑似科学は連続体の上にあり、疑似科学的な特徴に当てはまる数が多いほど疑似科学に近いと述べています。

レッスン1-3から

Q2. 人が他者や集団からどう影響を受けるかを調べる分野はどれですか。

答えを見る

正解: 1. 社会心理学
他者や集団からの影響を調べるのは社会心理学です。

このレッスンの学習目標

要点

  1. 後知恵バイアスとは、結果を知った後に、その結果を「もともと予測できていた」と感じてしまう心の働きのことです。
  2. フィッシュホフ(2003)は、結果を知ると出来事が実際より起こりやすく感じられ、本人はその影響に気づきにくいことを示しました。
  3. バーンスタインら(2011)の研究では、3歳から95歳までの幅広い年齢層で後知恵バイアスが見られ、特に幼児期と高齢期で大きいことが分かりました。

01後知恵バイアスとは何か

後知恵バイアスとは、結果を知った後に、その結果を「もともと予測できていた」と感じてしまう心の働きのことです。

スポーツの試合やニュースの結果を見たあと、「やっぱりそうなると思っていた」と感じた経験がある人は多いはずです。この「知っていた」という感覚の多くは、結果を知った後に生まれたものであり、結果を知る前に本当にそう予測していたとは限りません。心理学では、この心の働きを後知恵バイアス(hindsight bias)と呼びます。

後知恵バイアスは、単純な記憶違いとは少し異なります。結果を知る前の自分の判断が、結果を知った後の記憶で上書きされてしまうために起こると考えられています。この働きは「自分は最初から分かっていた」という感覚を強めるだけでなく、結果を知らなかった他者の判断を、実際より厳しく評価することにもつながります。

02フィッシュホフ(2003)の実験が示すこと

フィッシュホフ(2003)は、結果を知ると出来事が実際より起こりやすく感じられ、本人はその影響に気づきにくいことを示しました。

心理学者バルーク・フィッシュホフ(Fischhoff, 2003)は、学術誌Quality & Safety in Health Careに発表した論文で、不確かな状況での判断に結果の知識がどう影響するかをまとめています。この論文によると、ある出来事の結果を知らされると、人はその出来事を「もともと起こりやすかった」ように感じ、与えられていた情報の見え方までも変わってしまいます。

さらに重要なのは、この影響を受けていることに、本人がほとんど気づかない点です。フィッシュホフの研究では、判断する人は、結果を知らなかったら自分が何を予測できていたかを過大評価し、また結果を知らなかった他の人が実際に知っていたことも、同様に過大評価する傾向が見られました。

つまり後知恵バイアスは、「自分は冷静に予測していた」という感覚そのものが、結果を知った後に作られた思い込みである可能性を示しています。

03子どもから高齢者まで起こる心の働き(Bernstein et al., 2011)

3歳から95歳までの194人を対象にした研究では、ほぼ全ての年齢層で後知恵バイアスが見られ、幼児期と高齢期で特に大きいことが分かりました。

後知恵バイアスは、大人だけに起こるわけではありません。バーンスタインらの研究(Bernstein et al., 2011)は、3歳から95歳までの194人を12の年齢群に分け、言葉を使う課題、コンピューター上の課題、実物を使う課題という3種類の課題で後知恵バイアスを調べました。

その結果、ほぼ全ての年齢群が、3つの課題すべてで統計的に意味のある後知恵バイアスを示しました。年齢とバイアスの大きさの関係はU字型で、幼児期と高齢期でバイアスが大きく、6歳前後から30歳頃までは、バイアスの大きさがほぼ一定だったと報告されています。

この結果は、後知恵バイアスが特定の年齢や性格に限った特徴ではなく、人の記憶や判断の仕組みに広く組み込まれた心の働きであることを示しています。

04このバイアスが、心理学を学ぶうえで持つ意味

後知恵バイアスは、直感や「当たり前」の感覚だけでは心を正しく理解できないことを示す例であり、科学的な方法で確かめる大切さにつながります。

後知恵バイアスが厄介なのは、「結果を見れば誰でも分かる」という感覚が、実際にはあとから作られたものであっても、本人には本当の実力や予測力があったように感じられてしまう点です。この感覚のまま振り返りだけに頼ると、次の判断を改善するための材料を見誤ってしまいます。

この講座の前のレッスン(科学的に考えるとは何か)で見たように、心理学は、結果が出てから「そうなると思っていた」と語るだけでは、主張の正しさを確かめたことにはなりません。結果を知る前にどのような予測を立て、それがどれだけ当たったかを記録し、後から振り返る方法が必要になります。

後知恵バイアスを知っておくと、自分や他人の「どうしてあの失敗を予測できなかったのか」という振り返りにも、少し慎重になれます。結果を知った後の記憶は、当時の本当の予測とは違うかもしれないと考える視点が、心理学を学ぶ土台の1つになります。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

後知恵バイアスHindsight bias

結果を知った後に、その結果を「もともと予測できていた」と感じてしまう心の働き。

結果知識Outcome knowledge

ある出来事の結果について、すでに知っている情報のこと。判断や記憶に影響を与えることがある。

事後的な予測Postdiction

結果を知った後に、その結果がどれくらい起こりやすかったかを判断すること。

出典

  1. Fischhoff, B. (2003). Hindsight ≠ foresight: the effect of outcome knowledge on judgment under uncertainty. Quality & Safety in Health Care, 12(4), 304-312.
  2. Bernstein, D. M., Erdfelder, E., Meltzoff, A. N., Peria, W., & Loftus, G. R. (2011). Hindsight Bias from 3 to 95 Years of Age. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 37(2), 378-391.

LESSON 1-6 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。

Q1. 後知恵バイアスの説明として正しいものはどれか。

答えを見る

正解: 2. 結果を知った後に、その結果を「もともと予測できていた」と感じてしまう心の働き
後知恵バイアスとは、結果を知った後に、その結果を「もともと予測できていた」と感じてしまう心の働きです。

Q2. フィッシュホフ(2003)の研究で分かったことはどれか。

答えを見る

正解: 1. 結果を知ると出来事が実際より起こりやすく感じられ、本人はその影響にほとんど気づかない
フィッシュホフ(2003)は、結果を知ると出来事が実際より起こりやすく感じられ、かつ本人はその影響にほとんど気づかないことを示しました。

Q3. バーンスタインら(2011)の研究について正しいのはどれか。

答えを見る

正解: 2. 3歳から95歳までの幅広い年齢層で後知恵バイアスが見られ、幼児期と高齢期で特に大きかった
バーンスタインら(2011)の研究では、3歳から95歳までのほぼ全ての年齢群で後知恵バイアスが見られ、年齢とバイアスの大きさの関係はU字型で、幼児期と高齢期で特に大きいことが分かりました。

レッスン1-6はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第1章 心理学とは何か のレッスン一覧
  1. 1-1心理学とは何か
  2. 1-2心理学の歴史
  3. 1-3心理学の分野と仕事
  4. 1-4生物心理社会モデル
  5. 1-5疑似科学との違い
  6. 1-6後知恵バイアス

講座の目次(全16章)へ