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第3章 脳と心 ・ レッスン3-2ニューロンはどうやって情報を伝えるのか。電気信号の仕組み
読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-01
このレッスンの学習目標
- ニューロンの基本的な構造を説明できる
- 「動的分極の法則」の内容を説明できる
- 活動電位がどのような実験で明らかにされたかを説明できる
要点
- ニューロンどうしの情報伝達とは、樹状突起と細胞体が受け取った情報を、軸索を通して次のニューロンへ送る仕組みのことです。
- スペインの解剖学者ラモン・イ・カハールは、染色法を使った観察から、情報が樹状突起・細胞体から軸索へ一方向に流れるという「動的分極の法則」を示しました。
- 1952年、ホジキンとハクスリーは、ヤリイカの巨大な軸索を使った実験で、電気信号(活動電位)が伝わる仕組みを数式で説明しました。
01ニューロンの形と、情報が流れる向き
ニューロンは樹状突起・細胞体・軸索からなり、情報は樹状突起・細胞体から軸索へ一方向に流れます。
ニューロンには、枝分かれした「樹状突起」、核のある「細胞体」、そこから伸びる1本の長い「軸索」という部分があります。樹状突起は他のニューロンからの情報を受け取り、細胞体はその情報を集めて処理し、軸索は次のニューロンへ向けて情報を送り出します。
19世紀末、スペインの解剖学者サンティアゴ・ラモン・イ・カハールは、1887年にカミロ・ゴルジが考案した染色法を使い、1個ずつのニューロンの形をくわしく観察しました。その観察から、ニューロンの中を情報が伝わる向きには決まった規則があることを見つけました。
2024年に発表された論文によれば、カハールはこの規則を「動的分極の法則」と呼びました。これは、神経の興奮が常に樹状突起や細胞体から軸索へ向かって伝わる、という考え方です。一方通行の仕組みがあるからこそ、脳の中の情報は混線せずに目的の相手へ届きます。
02電気信号は、どうやって伝わるのか
ニューロンの中を伝わる電気信号は、1952年にヤリイカの巨大な軸索を使った実験で、仕組みが明らかにされました。
軸索の中を伝わる信号は、電気の信号です。この仕組みを詳しく調べたのが、イギリスの生理学者アラン・ホジキンとアンドリュー・ハクスリーです。2人は1952年、ヤリイカの神経にある、太く観察しやすい「巨大軸索」を使って実験を行いました。
ホジキンとハクスリーは、軸索の膜を出入りする微小な電流を細かく測定し、その結果を数式にまとめました。この研究により、軸索を伝わる電気信号(活動電位)が、膜を通過する特定の物質の動きによって生み出される仕組みが、定量的に説明されました。
ニューロン1個の中を信号が伝わる仕組みが、こうして数式で説明できるようになりました。ニューロンとニューロンの間、つまりカハールが見つけた接触点では、電気信号とは別の仕組みが働きます。次に見ていきましょう。
03ニューロンとニューロンのつなぎ目
ニューロンは1つずつ独立した細胞で、軸索の末端が次のニューロンに接触する場所をシナプスと呼びます。
カハールが観察する以前、神経系は糸のようにつながった1つの網目だと考える学者もいました(網状説)。しかしカハールは1888年から1889年にかけて、ニューロンが1つずつ独立した「自律した単位」であり、それぞれの突起が自由な枝分かれの末端で互いに接触することで情報をやり取りしていることを示しました。
この接触点は、1897年にイギリスの生理学者チャールズ・シェリントンによって「シナプス」と名づけられました。軸索を伝わってきた電気信号はシナプスの手前までで、次のニューロンへは別の仕組みで情報が受け渡されます。この仕組みについては、感情や記憶を扱う章で、神経伝達物質の働きとしてあらためて詳しく取り上げます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
ニューロンのうち、他のニューロンからの情報を受け取る、枝分かれした部分。
ニューロンの細胞体から伸び、次のニューロンへ情報を送る長い突起。
神経の興奮は、樹状突起・細胞体から軸索へ一方向に伝わるという、カハールが示した規則。
軸索を伝わる、電気的な変化としての神経信号。
ヤリイカなどが持つ、太くて観察しやすい軸索。活動電位の研究に使われた。
あるニューロンの軸索末端と、次のニューロンが接触し、情報を受け渡す場所。
出典
- Rozo, J. A., Martínez-Gallego, I., & Rodríguez-Moreno, A. (2024). Cajal, the Neuronal Theory and the Idea of Brain Plasticity. Frontiers in Neuroanatomy, 18:1331666.
- Hodgkin, A. L., & Huxley, A. F. (1952). A Quantitative Description of Membrane Current and Its Application to Conduction and Excitation in Nerve. The Journal of Physiology, 117(4), 500-544.
LESSON 3-2 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。
Q1. ニューロンの中を、情報はどの向きに流れますか。
- 樹状突起・細胞体から軸索へ
- 軸索から樹状突起・細胞体へ
- 決まった向きはなく、双方向に流れる
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正解: 1. 樹状突起・細胞体から軸索へ
カハールが示した「動的分極の法則」により、情報は樹状突起・細胞体から軸索へ一方向に流れます。
Q2. カハールがニューロンの形をくわしく観察できたきっかけは何ですか。
- ゴルジが考案した染色法を使ったから
- 顕微鏡の倍率を2倍にしたから
- ヒトの脳を直接観察したから
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正解: 1. ゴルジが考案した染色法を使ったから
カハールは1887年、カミロ・ゴルジの染色法を使ってニューロンを1個ずつ観察しました。
Q3. ホジキンとハクスリーが1952年の実験で使った材料は何ですか。
- ヤリイカの巨大軸索
- ヒトの脳の切片
- マウスの脊髄
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正解: 1. ヤリイカの巨大軸索
2人はヤリイカの太い巨大軸索を使い、電気信号が伝わる仕組みを数式で説明しました。
レッスン3-2はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。