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第3章 脳と心 ・ レッスン3-1

なぜ心理学で脳を学ぶのか。心と行動は脳から生まれる

読む時間の目安: 4分 ・ 公開日 2026-10-01

このレッスンの学習目標

要点

  1. 脳と神経系とは、考える・感じる・覚えるという心の働きを生み出す、心理学の土台となる仕組みのことです。
  2. 19世紀に広まった骨相学は、頭の形から性格がわかるとした説でしたが、データで確かめられず誤りとして退けられました。
  3. ヒトの脳には平均で約860億個のニューロンがあり、ほぼ同数の非神経細胞があることが、2009年の研究でわかっています。

01心理学で脳を学ぶ理由

考える・感じる・覚えるといった心の働きは脳から生まれるため、心理学では脳と神経系の仕組みを学びます。

心理学は心と行動を科学的に調べる学問です。心そのものは目に見えませんが、心の働きは、脳という臓器の中で起きている出来事から生まれていることが、現代の研究でわかっています。

考える、感じる、記憶する、といった働きはすべて、脳の中にある無数のニューロンどうしのやり取りに支えられています。心理学で「心」を理解するには、その土台になっている脳の仕組みを知る必要があります。

この章では、ニューロンが情報を伝える仕組み、脳の部位ごとの働き、脳の働きを調べる方法、そして脳が経験によってどう変わるのかを、順番に学んでいきます。

02骨相学という失敗から学んだこと

骨相学は、頭の形から性格がわかるとした説でしたが、データで確かめられず、誤りとして退けられました。

19世紀の初め、頭蓋骨の形や凹凸から、その人の性格や能力がわかるという「骨相学」という説が広まりました。しかしこの説を裏づけるデータは示されず、後の研究者たちによって誤った理論として退けられました。2019年に発表された神経科学史についての論文でも、骨相学は「反証され、却下された理論」の代表例として紹介されています。

一方、フランスの外科医ポール・ブロカは、話す力を失った患者を解剖し、脳の実際の損傷部位を確かめるという方法をとりました。ブロカが調べた患者の脳は、現在もパリのデュピュイトラン博物館に保存されており、先の2019年の論文によれば、現代のPETやfMRIを使った画像解析で再び調べ直されています。

頭の形を外から推測するだけの骨相学と違い、実際の脳の組織を確かめ、何度でも検証し直せる方法が、その後の脳科学の土台になりました。心理学が「科学」であるためには、このように確かめ直せる証拠が欠かせません。

03脳はどれくらい複雑なのか

ヒトの脳には平均で約860億個のニューロンがあり、同じくらいの数の非神経細胞もあります。

ヒトの脳はどれくらい多くの細胞でできているのでしょうか。2009年に発表された研究では、新しい計測方法を使って、成人の脳に含まれる細胞の数を数え直しました。その結果、平均で約860億個のニューロンと、約850億個の非神経細胞(グリア細胞など)が見つかりました。

それまでは「脳には1000億個のニューロンがあり、グリア細胞はその10倍ある」という数字が広く信じられていましたが、この研究によって、ニューロンとグリア細胞はほぼ同じ数であることが示されました。長く信じられてきた数字も、新しい方法で測り直すと更新されることがあるという、科学の性質をよく表す例です。

これほど多くの細胞が複雑にやり取りすることで、考える・感じる・覚えるといった心の働きが生まれています。次のレッスンでは、ニューロン1つひとつが、電気信号と化学物質を使ってどうやって情報をやり取りしているのかを見ていきます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。

ニューロンNeuron

情報を電気信号と化学物質でやり取りする、脳と神経系を構成する基本的な細胞。

グリア細胞Glial cell

ニューロンを支え、その働きを助ける、神経系を構成するもう一つの細胞。

中枢神経系Central Nervous System

脳と脊髄をまとめた呼び名。全身から集めた情報を処理し、判断を下す。

末梢神経系Peripheral Nervous System

中枢神経系から全身に伸び、感覚と命令のやり取りを担う神経。

骨相学Phrenology

頭の形から性格や能力がわかるとした19世紀の説。データで確かめられず誤りとして退けられた。

出典

  1. Herculano-Houzel, S. (2009). The Human Brain in Numbers: A Linearly Scaled-up Primate Brain. Frontiers in Human Neuroscience, 3:31.
  2. Brown, R. E. (2019). Why Study the History of Neuroscience? Frontiers in Behavioral Neuroscience, 13:82.

LESSON 3-1 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

学んだ内容を確かめましょう。答えを見る前に、自分で選んでみてください。

Q1. 心理学で脳を学ぶ理由として、最も適切なものはどれですか。
  1. 考える・感じる・覚えるといった心の働きが、脳から生まれるから
  2. 脳を鍛えれば必ず頭がよくなるから
  3. 脳の形だけで性格が決まるから
答えを見る

正解: 1. 考える・感じる・覚えるといった心の働きが、脳から生まれるから
心の働きは脳の仕組みから生まれるため、心理学では脳と神経系を学びます。

Q2. 骨相学が科学として退けられた理由は何ですか。
  1. 頭の形と性格の関係を裏づけるデータが示されなかったから
  2. 使われていた道具が古かったから
  3. 支持する学者が少なかったから
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正解: 1. 頭の形と性格の関係を裏づけるデータが示されなかったから
骨相学は、データで確かめる手続きを欠いていたため、誤った理論として退けられました。

Q3. 2009年の研究で明らかになった、ヒトの脳の細胞数について、正しいものはどれですか。
  1. ニューロンは平均約860億個で、グリア細胞などとほぼ同数だった
  2. ニューロンは1000億個で、グリア細胞はその10倍だった
  3. ニューロンの数は人によって10倍以上違う
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正解: 1. ニューロンは平均約860億個で、グリア細胞などとほぼ同数だった
研究により、ニューロンは約860億個、非神経細胞も同程度の数であることがわかりました。

レッスン3-1はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第3章 脳と心 のレッスン一覧
  1. 3-1なぜ脳を学ぶのか
  2. 3-2ニューロンの情報伝達
  3. 3-3脳の部位のはたらき
  4. 3-4脳を調べる方法
  5. 3-5脳は経験で変わるか

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