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第3章 脳と心 ・ レッスン3-6ホルモンは心と行動にどう関わっているのか
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-10
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. 2009年のジャグリングの研究から、どんなことがわかりますか。
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正解: 1. わずか6週間の練習でも、脳の白質・灰白質に変化が見られることがある
6週間のジャグリング練習後、脳の白質・灰白質に訓練に関連した変化が見られました。
Q2. 扁桃体についての説明として、適切なものはどれですか。
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正解: 1. こわい場面などの感情にまつわる記憶の処理で、活動が高まることがある
扁桃体は感情にまつわる記憶の処理に関わりますが、その活動は条件によって変わります。
このレッスンの学習目標
- 内分泌系とホルモンとは何かを、神経系とのちがいをふまえて説明できる
- HPA系がストレスにどう反応するかを、ホルモンの連鎖として説明できる
- オキシトシンが社会的な絆にどう関わるかを、動物実験の例をもとに説明できる
要点
- 内分泌系とは、ホルモンという化学物質を血液中に放出し、全身の器官のはたらきを調整するしくみのことです。
- ストレスを受けると、視床下部・下垂体・副腎という経路(HPA系)が働き、コルチゾールというホルモンが分泌されます。
- オキシトシンというホルモンは、プレーリーハタネズミなどの動物実験で、パートナーへの選好や子への養育行動を強めることが示されています。
01内分泌系とは何か
内分泌系とは、ホルモンという化学物質を血液中に放出し、全身の器官のはたらきを調整するしくみのことです。
これまでの章では、ニューロンが電気信号と神経伝達物質を使って、瞬時に情報を伝えるしくみを見てきました。心と行動を支えているのは神経系だけではありません。内分泌系と呼ばれる器官の集まりも、ホルモンという化学物質を血液中に放出することで、体の各部に情報を伝えています。
神経系の伝達は、特定の細胞から特定の細胞へと、きわめて短い時間で伝わります。これに対してホルモンは血液に乗って全身に広がるため、伝わるまでに数秒から数分かかり、効果も比較的長く続きます。視床下部・下垂体・副腎・甲状腺などの器官が、内分泌系の代表的な器官です。
内分泌系の中でも、視床下部と下垂体は、他の多くの内分泌器官に指令を出す中心的な役割を担っています。次に、ストレスを受けたときに、この内分泌系がどのように働くかを見ていきましょう。
02ストレスを受けると体の中で何が起こるのか
ストレスを受けると、視床下部・下垂体・副腎という経路(HPA系)が働き、コルチゾールが分泌されます。
ストレスを感じる出来事に直面すると、視床下部の神経細胞が副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を放出します。CRHは下垂体に働き、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促します。ACTHは血液に乗って副腎に届き、副腎皮質からコルチゾールという糖質コルチコイドの分泌を引き起こします。この視床下部・下垂体・副腎という経路は、HPA系と呼ばれています。
Smith & Vale(2006)によれば、このストレス反応系が活性化すると、心血管系の緊張や呼吸数、代謝が高まる一方で、消化・成長・生殖・免疫といった、その場で急いで必要のない機能は抑えられます。血液中の糖質コルチコイド(コルチゾール)が増えると、視床下部と下垂体の両方に働いて、それ以上のCRHとACTHの分泌を抑える「負のフィードバック」のしくみも備わっています。
このフィードバックのしくみがあるおかげで、通常はストレス反応が一定の範囲にとどまります。ホルモンは、こうした一時的な体の変化だけでなく、人と人との結びつきにも関わっています。
03ホルモンは人との絆にも関わっているのか
オキシトシンというホルモンは、動物実験で、パートナーへの選好や子への養育行動を強めることが示されています。
オキシトシンは、もともと出産や授乳に関わるホルモンとして知られていましたが、近年の研究では、動物の社会的な絆にも関わることがわかってきました。Lieberwirth & Wang(2014)がまとめたところでは、一夫一妻型の齧歯類であるプレーリーハタネズミのメスの脳内にオキシトシンを投与すると、交尾の有無にかかわらず、特定のオス(パートナー)への選好が形成されました。この効果は、オキシトシン受容体の働きを阻害する薬剤を先に投与すると、見られなくなりました。
同じレビューによれば、マーモセットというサルの仲間でも、オキシトシンの投与によってパートナーへの接近行動や食べ物の分け合いが増えたことが報告されています。また、ラットのメスにオキシトシンを投与すると、子に接してから母親らしい行動が現れるまでの時間が短くなることも示されています。
ヒトを対象にした研究でも、妊娠初期から妊娠後期にかけて血液中のオキシトシンの量が増えるほど、妊娠後期における母親から胎児への絆の強さと関連していたことが報告されています。これは動物実験のように要因を操作した結果ではなく、人を対象にした観察研究から得られた関連です。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。英語名も一緒に覚えると、海外の教科書や論文が読みやすくなります。
ホルモンという化学物質を血液中に放出し、全身の器官のはたらきを調整するしくみ。
内分泌系の器官から血液中に放出され、特定の器官のはたらきを調整する化学物質。
視床下部・下垂体・副腎が連携して働き、ストレスへの反応を担う神経内分泌系。
出産・授乳や、動物の社会的な絆の形成に関わるホルモン。
出典
LESSON 3-6 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. 内分泌系がホルモンを伝える方法として正しいものはどれですか。
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正解: 1. 血液中に放出し、全身の器官に伝える
内分泌系は、ホルモンという化学物質を血液中に放出し、血流によって全身の器官に情報を伝えます。
Q2. HPA系で、ストレスを受けたときに最終的に副腎皮質から分泌されるホルモンはどれですか。
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正解: 1. コルチゾール
視床下部からのCRHが下垂体からのACTHの分泌を促し、ACTHが副腎皮質に働いてコルチゾールが分泌されます。
Q3. プレーリーハタネズミを使った実験で示されたことはどれですか。
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正解: 1. メスへのオキシトシン投与により、特定のパートナーへの選好が形成された
Lieberwirth & Wang(2014)によれば、メスのプレーリーハタネズミにオキシトシンを投与すると、交尾の有無に関わらずパートナーへの選好が形成されました。一方、同じ投与でもオスにはこの効果は見られませんでした。
レッスン3-6はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。