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お金の心理学(行動経済学)

保有効果とは

英語: Endowment Effect ・ 更新日 2026-10-03

保有効果とは、自分が持っているものを、持っていないときより高く評価してしまう心理のことです。Kahneman・Knetsch・Thaler(1990)のマグカップ実験では、売り手の希望額が買い手の希望額の約2倍になりました。

01保有効果をくわしく

保有効果は、行動経済学者セイラー(Richard Thaler)が1980年に提唱し、1990年にカーネマン(Daniel Kahneman)・クネッチ(Jack Knetsch)・セイラーが行ったマグカップを使った実験で広く知られるようになった考え方です。自分が既に持っているものを手放すときに要求する価格(売値)が、同じものを新たに手に入れるために払ってもよいと思う価格(買値)よりも高くなる現象を指します。

2009年にデ・マルティーノ(De Martino)らがThe Journal of Neuroscience誌に発表したfMRI研究では、参加者に2〜36ポンドの期待値を持つくじを使って「売り手」と「買い手」の役を体験してもらいました。その結果、売り手として提示した最低売却価格は、買い手として提示した最高購入価格よりも統計的に有意に高くなりました(p<0.0001)。さらに、腹側線条体という脳の部位の活動が、価格が基準点からどれだけ離れているかを追跡し、保有効果の大きさとも関連していることが分かりました。

同じ2009年にクリザロ(Clithero)とスミス(Smith)がFrontiers in Human Neuroscience誌にまとめたレビューでは、こうした保有効果の背景にある脳の仕組みについて、眼窩前頭皮質が買値と売値それぞれの価値を内側・外側で分けて処理していることや、尾状核が買値・売値の両方を符号化していること、個人差の大きさに腹側線条体の活動が関連していることが紹介されています。

保有効果は、損失を避けたいという「損失回避」の心の働きで説明されることが多いですが、近年の研究では、単に「自分のもの」だと感じること自体が評価を高めている可能性も指摘されており、損失回避だけでは説明しきれない部分もあるとされています。

02身近な例

長年使っている自分のマグカップを、お店で売っている同じ新品のマグカップより高く評価してしまう——これが保有効果です。手放すときだけ、急に惜しくなるのです。

RESEARCH研究の解説記事

なぜサブスクを解約できないのか?保有効果と現状維持バイアスの研究(お金と心理)

FAQよくある質問

保有効果とは何ですか?

保有効果とは、自分が持っているものを、持っていないときより高く評価してしまう心理のことです。Kahneman・Knetsch・Thaler(1990)のマグカップ実験では、売り手の希望額が買い手の希望額の約2倍になりました。

保有効果は損失回避と同じことですか?

深く関連していますが、同じではありません。損失回避(手放す痛みの方が、得る喜びより大きいという考え方)で説明されることが多い一方、近年の研究では「自分のものだと感じること」自体が評価を高めている可能性も指摘されています。

保有効果は誰にでも起こりますか?

多くの実験で確認されていますが、効果の大きさには個人差があり、脳の活動(腹側線条体など)の個人差と関連していることが報告されています。

RELATED同じ分野の用語

アンカリング効果支払いの痛み現状維持バイアスデフォルト効果快楽順応ダチョウ効果

出典

  1. Kahneman, D., Knetsch, J. L., & Thaler, R. H. (1990). Experimental tests of the endowment effect and the Coase theorem. Journal of Political Economy, 98(6), 1325-1348.(背景・古典)
  2. De Martino, B., Kumaran, D., Holt, B., & Dolan, R. J. (2009). The neurobiology of reference-dependent value computation. The Journal of Neuroscience, 29(12), 3833-3842.
  3. Clithero, J. A., & Smith, D. V. (2009). Reference and preference: How does the brain scale subjective value? Frontiers in Human Neuroscience.

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