HOME / ゼロから学ぶ心理学 / 心理学用語辞典 / グリンパティックシステムとは
脳と心グリンパティックシステムとは
英語: Glymphatic System ・ 更新日 2026-10-04
グリンパティックシステムとは、脳の血管のまわりを流れる脳脊髄液によって、脳の中にたまった老廃物を脳の外へ運び出す仕組みのことです。2012年にイリフとネーダーガードらの研究グループによって報告されました。
01グリンパティックシステムをくわしく
2012年、イリフとネーダーガードらの研究グループは、脳の血管を取り囲む血管周囲腔を脳脊髄液(CSF)が流れ、脳の細胞の間を満たす組織間液と混ざり合うことで、老廃物を脳の外へ運び出す経路があることを報告しました。血管(vascular)とリンパ系(lymphatic)の働きを合わせ持つことから、「グリンパティックシステム」と名づけられました。星状膠細胞(アストロサイト)の血管に接する部分にあるアクアポリン4という水チャネルが、この液の流れに重要な役割を果たすことも示されています。
この仕組みは睡眠と深く関わっています。2013年にシェイ(Xie)らがマウスを使って行った研究では、睡眠中または麻酔で眠っている状態では、脳の細胞の間のすきまの体積が覚醒時より約60%広がり、脳脊髄液が脳の組織に入り込む量は、覚醒時には睡眠時に比べて大幅に少なくなることが示されました。さらに、放射性標識したアミロイドベータを使った実験では、睡眠中のマウスは覚醒中のマウスに比べ、およそ2倍の速さでこのたんぱく質を取り除いていました。
これらの結果から、睡眠には、脳にたまった老廃物を洗い流す働きがあるのではないかと考えられるようになりました。その後の研究では、深い睡眠(徐波睡眠)の乱れが、脳脊髄液中のアミロイドベータの量を増やすことを示す報告も出ています。
ただし、これらの研究の多くは動物実験や限られた人数を対象にしたものであり、「一晩眠れば老廃物が全て除去される」といった単純な話ではありません。働き方には個人差や年齢による違いがあるとされ、研究は現在も続けられています。
02身近な例
徹夜で勉強した翌日に頭がすっきりしないと感じるのは、睡眠不足でグリンパティックシステムの働きが十分に発揮されず、脳に老廃物がたまりやすくなっているためかもしれません。
03講座で学ぶ
グリンパティックシステムは、無料講座「ゼロから学ぶ心理学入門」の次のレッスンで詳しく学べます。
FAQよくある質問
グリンパティックシステムとは何ですか?
グリンパティックシステムとは、脳の血管のまわりを脳脊髄液が流れ、脳にたまった老廃物を脳の外へ運び出す仕組みのことです。2012年にイリフとネーダーガードらが報告しました。
グリンパティックシステムとリンパ系の違いは?
体の各部にあるリンパ系はリンパ管が老廃物を運びますが、脳には同じようなリンパ管がありません。グリンパティックシステムは、血管周囲腔を使って同様の老廃物除去を行う、脳に特有の仕組みです。
寝ないと老廃物が脳にたまるのは本当ですか?
動物実験では、睡眠中に老廃物の除去が進みやすいことが示されています。ただし人での研究はまだ限られており、個人差や条件による違いも指摘されているため、断定的には言えません。
RELATED同じ分野の用語
出典
- Xie L, Kang H, Xu Q, Chen MJ, Liao Y, Thiyagarajan M, O'Donnell J, Christensen DJ, Nicholson C, Iliff JJ, Takano T, Deane R, Nedergaard M (2013). Sleep drives metabolite clearance from the adult brain. Science, 342(6156), 373-377.
- Zhao L, Tannenbaum A, Bakker ENTP, Benveniste H (2022). Physiology of glymphatic solute transport and waste clearance from the brain. Physiology (Bethesda), 37(6), 349-362.