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お金の心理学(行動経済学)現在バイアスとは
英語: Present Bias ・ 更新日 2026-10-03
現在バイアスとは、将来の大きな利益よりも、目の前の小さな利益を優先してしまう傾向のことです。リボ払いや先延ばしの背景として研究されています。
01現在バイアスをくわしく
現在バイアスとは、将来の大きな利益よりも、目の前の小さな利益を優先してしまう傾向のことです。経済学者テッド・オドノヒューとマシュー・ラビンの1999年の論文などで理論化されましたが、この原典自体は経済学誌の論文でPMCには収録されていません。
65〜80歳の糖尿病患者を対象にした研究(Wang & Sloan, 2018)では、米国の大規模な調査データ(3万4,946件の観察データ)を使ってモデルを推定したところ、現在バイアスの強さを示すパラメータはβ=0.38と「かなり強い現在バイアス」が見られ、さらに患者は自分自身の将来のバイアスをほとんど予測できていない(将来の自分は一貫して行動すると信じてしまう)ことが示されました。この現在バイアスと予測の誤りがなければ、服薬の継続率は51.7%から60.2%に上昇し、それによって米国全体で推計14.8億ドルの医療費が節約できたはずだと計算されています。
日本の成人494人(うち喫煙者253人)を対象にした調査(Ida, 2014)では、現在バイアスを示すパラメータが1%強くなるごとに喫煙する確率が0.42%上昇し、通常の時間選好(将来を軽視する度合い全般)が1%強くなるごとには0.68%上昇することが示されました。つまり、現在バイアスは「将来を軽視する傾向全般」とは別に、独立して行動に影響していることがわかります。
これらの研究から、現在バイアスは単なる「意志の弱さ」ではなく、測定可能な心理的傾向として健康行動(服薬、禁煙)に影響しており、しかも本人がその傾向を自覚していないことが多いという点が、対策を考える上で重要だとわかります。
02身近な例
将来のために禁煙や薬の継続が大切だとわかっていても、今の一本のタバコや今日の服薬の手間を優先してしまうのは、現在バイアスの一例です。
RESEARCH研究の解説記事
クレジットカードのリボ払いはなぜやめられないのか?アンカリングの研究(お金と心理)
FAQよくある質問
現在バイアスとは何ですか?
現在バイアスとは、将来の大きな利益よりも、目の前の小さな利益を優先してしまう傾向のことです。糖尿病患者の服薬継続や喫煙行動を調べた研究で、測定可能な影響として確認されています。
現在バイアスと単なる先延ばしの違いは何ですか?
現在バイアスは、将来の自分の選好が今の選好と変わってしまう(時間的に一貫しない)という、より具体的な心理的傾向を指します。研究では、将来を軽視する度合い全般とは別に、独立して行動に影響することが示されています。
現在バイアスは自分で気づけますか?
研究では、現在バイアスの強い人ほど、将来の自分がどう行動するかを正確に予測できていない(自分は一貫して行動すると思い込んでしまう)傾向が示されています。自分では気づきにくい可能性がある点に注意が必要です。
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出典
- O'Donoghue, T., & Rabin, M. (1999). Doing it now or later. American Economic Review, 89(1), 103-124.(背景・原典。PMCには収録されていません)
- Wang, Y., & Sloan, F. A. (2018). Present bias and health. Journal of Risk and Uncertainty, 57(2), 177-198.
- Ida, T. (2014). A quasi-hyperbolic discounting approach to smoking behavior. Health Economics Review, 4, 5.