HOME / ゼロから学ぶ心理学 / 心理学用語辞典 / 分離脳とは
脳と心分離脳とは
英語: Split-brain ・ 更新日 2026-10-04
分離脳とは、脳梁(左右の大脳半球をつなぐ神経線維の束)が外科的に切断されたり損傷したりすることで、左右の大脳半球の間の情報伝達が制限された状態のことです。
01分離脳をくわしく
分離脳の研究は1960年代、ロジャー・スペリーがカリフォルニア工科大学で始めました。てんかん発作を抑えるために脳梁を外科的に切断した患者を対象に、当時学生だったマイケル・ガザニガが協力し、最初のヒト分離脳実験を行いました。スペリーはこの研究により1981年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
ガザニガが2014年の論文で紹介した代表的な実験では、患者に見せる画像の位置を変えました。言語を担う左半球が処理する右視野に画像を出すと言葉で説明できましたが、右半球が処理する左視野に出すと「何も見えない」と答えつつ、左手では正確に指し示すことができました。言葉にできなくても右半球が情報を認識していたことを示す結果です。
2020年の別の研究では、脳梁を完全に切除した患者を対象に触覚を調べました。どちらの手で触れられても触れた位置を正確に答えられ、触覚の検出や位置の特定では両半球が情報を共有しているように見えました。一方、両腕を同時に触れて場所を比べる課題では正答率が偶然程度にとどまり、両半球をまとめて比較する機能には限界があることもわかりました。
分離脳患者は左右の脳が別々の「人格」を持つわけではなく、日常生活では大きな支障が目立たないことも多いとされます。視覚以外の感覚や姿勢などを通じて両半球が間接的に情報をやり取りできるためです。「右脳型・左脳型」という通俗的な話は、分離脳研究を単純化・誤用したものが多く、実際の脳はそれほど単純に左右で分かれてはいません。
02身近な例
分離脳の患者に、見えない左手だけで触れた物の形を当てさせると正しく答えられても、「それは何でしたか」と言葉で聞かれると答えられない、ということが起こります。
03講座で学ぶ
分離脳は、無料講座「ゼロから学ぶ心理学入門」の次のレッスンで詳しく学べます。
FAQよくある質問
分離脳とは何ですか?
分離脳とは、脳梁という左右の大脳半球をつなぐ神経線維の束が切断・損傷し、左右の脳の間で情報がうまく伝わらなくなった状態のことです。もともとは重いてんかんの治療のために脳梁を切断する手術を受けた患者の研究から生まれた概念です。
分離脳の人は二つの人格を持つのですか?
いいえ、そう単純ではありません。分離脳患者でも視覚以外の感覚や姿勢、表情などを通じて両半球が間接的に情報をやり取りできるため、日常生活では目立った支障が見られないことが多いとされています。
「右脳型」「左脳型」という話は分離脳研究と関係がありますか?
分離脳研究は左右の脳がそれぞれ異なる情報処理をしていることを示しましたが、「右脳型人間」「左脳型人間」のような俗説はこの研究を大きく単純化・誤用したものです。実際の脳の機能分化はもっと複雑です。
RELATED同じ分野の用語
出典
- Gazzaniga, M. S. (2014). The split-brain: rooting consciousness in biology. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111(51), 18093-18094.
- de Haan, E. H. F., Fabri, M., Dijkerman, H. C., Foschi, N., Lattanzi, S., & Pinto, Y. (2020). Unified tactile detection and localisation in split-brain patients. Cortex, 124, 217-223.