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パーソナリティ心理学とは(第11章)

更新日 2026-10-03

パーソナリティ心理学とは、思考・感情・行動のパターンに見られる、時間や状況を超えて比較的安定した個人差(特性)を研究する分野です。代表的な枠組みがビッグファイブ(五因子モデル)です。

01パーソナリティ研究の土台になった「語彙アプローチ」

パーソナリティ心理学の主流の手法は、日常言語の中にある性格を表す言葉を分析して、特性の構造を見つけ出す「語彙アプローチ」です。

Uher(2013)は、この手法の前提になる「語彙仮説」――人は社会生活で重要だと感じる個人差を日常言語の言葉として符号化する、という考え――が、パーソナリティ心理学を長く導いてきたにもかかわらず、実はほとんど検証されていないと指摘している。

同論文は、語彙仮説が本来「言葉とその符号化された表象」と「表象される対象そのもの」という異なる2つの事柄を指しているのに、研究者は前者の分析にほぼ専念し、後者を体系的に検証してこなかったと論じる。さらに、知覚によって直接とらえられる基準を満たすのは「行動」と「外見」だけであり、内面的な心理的現象や生理的現象はこの基準を満たさないにもかかわらず、現代のパーソナリティ理論はそうした心理的な構成概念を特性として扱っている点を問題視している。

02ビッグファイブは文化を超えて再現するか

ビッグファイブの5因子構造は、言語や文化が異なる集団でも、適切な統計手法を使えば高い精度で再現されることが示されている。

Terracciano(2003)は、アメリカで確立されたNEO-PI-R(五因子モデルの代表的な尺度)のイタリア語版を使い、575人(女性359人、男性214人、18〜87歳)のデータで構造の再現性を検証した。通常のバリマックス回転では外向性と協調性の一部の下位尺度が別の対人的な次元に再配置されてしまい、アメリカの構造とずれて見えた。

しかし、アメリカの基準因子をあらかじめ目標にする「ターゲット回転」という統計手法を用いると、5つの領域すべてで一致係数が0.96〜0.98に達し、再現の目安とされる0.90を大きく上回った。30の下位尺度すべても一致係数0.94以上で、ランダムなデータの回転の99%より高い値だった。著者は、見かけ上の文化差は対人的な次元内での回転のずれにすぎず、五因子モデルの構造自体はイタリアでも支持されると結論づけている。

03ビッグファイブで説明できるのは一部にすぎないという批判

ビッグファイブは性格を表す言葉の分散のうち、およそ4分の1しか説明できないとする指摘もある。

Saucier(2022)は、語彙アプローチによる性格語の研究で見つかる分散のうち、ビッグファイブの5因子で説明できるのは「全体のおよそ4分の1にすぎない」と述べ、5因子モデルが主に欧米の、しかもゲルマン語系の言語の研究から生まれたため、他の文化圏では部分的・弱くしか再現しない「自民族中心主義」の問題があると論じている。

同論文は、5因子よりはるかに多い(時に30以上の)次元を持つ構造のほうが再現性が高く、分散の半分前後、研究によっては50〜60%を説明できることを示す研究を紹介し、より細かい次元を使うほうが、文化を超えて共通する部分と文化固有の部分を区別しやすく、予測力も高まると主張している。

04「特性で性格を説明する」こと自体への問い直し

特性という概念そのものにも、行動を説明するはずの特性が、実は行動の記述を言い換えているだけではないかという循環の問題が指摘されている。

Uher(2013)は、特性による説明にひそむ循環性を指摘する。アセスメントのデータは、知覚できる行動パターンについて人々が社会的に共有している構成概念を反映しているにすぎず、行動を引き起こす因果的な実体を直接とらえているわけではない。「特性」を使って行動を説明することは、結局、行動の記述を使って行動を説明しているにすぎず、その循環は統計的な抽象化の層に隠されている、というのが同論文の主張である。

こうした批判は、ビッグファイブという枠組み自体を否定するものではないが、「特性が性格の原因である」と単純に考えることには注意が必要だということを示している。パーソナリティ心理学では、ビッグファイブのような特性論が主流である一方、その測り方や解釈の仕方については、現在も活発な議論が続いている。

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FAQよくある質問

パーソナリティ心理学とは何を研究する分野ですか?

パーソナリティ心理学とは、思考・感情・行動のパターンに見られる、時間や状況を超えて比較的安定した個人差(特性)を研究する心理学の一分野です。代表的な枠組みがビッグファイブ(五因子モデル)です。

ビッグファイブはどの文化でも同じように当てはまりますか?

Terracciano(2003)のイタリア語版NEO-PI-Rを使った研究では、ターゲット回転という統計手法を使うと一致係数が0.96〜0.98に達し、高い再現性が示されました。ただしSaucier(2022)は、5因子モデルが主に欧米の言語研究から生まれたため、他の文化圏では再現が部分的・弱くなる場合があると指摘しています。

ビッグファイブ以外の性格の見方はありますか?

あります。Saucier(2022)は、ビッグファイブの5因子が性格語の分散のおよそ4分の1しか説明できないとし、30以上のより細かい次元を使う構造のほうが分散の半分前後を説明でき、再現性も高いと論じています。また、Uher(2013)は特性という概念自体の説明としての循環性を指摘しており、特性論以外の見方を検討する研究も続いています。

出典

  1. Uher, J. (2013). Personality Psychology: Lexical Approaches, Assessment Methods, and Trait Concepts Reveal Only Half of the Story—Why it is Time for a Paradigm Shift. Integrative Psychological and Behavioral Science, 47(1), 1-55.
  2. Terracciano, A. (2003). The Italian version of the NEO PI-R: Conceptual and empirical support for the use of targeted rotation. Personality and Individual Differences, 35(8), 1859-1872.
  3. Saucier, G. (2022). Intimations of a New Paradigm for Lexical Studies in Psychology. Frontiers in Psychology, 13, 867491.

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